「わが家は、返さなくていい奨学金や、授業料・入学金の減免を受けられるの?」
大学進学が近づくと、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ここで、クイズです。
次のうち、給付型奨学金や授業料等減免の対象になるかを確認するために必要な条件はどれでしょうか。
- 世帯年収
- 学生本人と生計維持者の対象となる資産
- 学生本人の学力・学修意欲
正解は、すべてです。
この記事では、次の内容を順番に解説します。
- どのくらいの年収なら対象になるのか
- 資産はいくらまでなのか
- どのような学力や手続きが必要なのか
- 対象になるといくら支援されるのか
- 利用するときに何に注意すればよいのか
該当する可能性がある場合は、実際に申請してみましょう。
目次
給付型奨学金と授業料等減免とは
国の「高等教育の修学支援新制度」には、次の2つの支援があります。
| 支援内容 | 支援の方法 |
|---|---|
| 給付型奨学金 | 原則として学生本人の口座へ毎月振り込まれる |
| 授業料・入学金の減免 | 進学先へ支払う授業料や入学金が減額・免除される |

出典:日本学生支援機構「高等教育の修学支援新制度の周知用リーフレット」
給付型奨学金は、原則として返済する必要がない奨学金です。
授業料等減免は、大学や専門学校などへ支払う授業料と入学金を、国が定める上限まで減らす制度です。
給付型奨学金の対象になる条件
給付型奨学金や授業料等減免を受けるためには、主に次の条件を確認します。
| 条件 | 確認する内容 |
|---|---|
| 収入基準 | 本人と生計維持者の住民税情報 |
| 資産基準 | 本人と生計維持者が保有する対象資産 |
| 学力基準 | 高校の成績や学修意欲 |
| 進学先 | 制度の対象校か |
対象になる年収はいくらまで?
給付型奨学金の支援区分は、世帯の所得などによって第Ⅰ区分から第Ⅳ区分までに分かれます。
第Ⅰ区分が最も支援額が大きく、第Ⅱ区分は満額の3分の2、第Ⅲ区分は満額の3分の1です。
第Ⅳ区分は、主に多子世帯の学生や、対象となる私立の理工農系学科等へ進学する学生が対象です。

出典:日本学生支援機構「高等教育の修学支援新制度の周知用リーフレット」
4人世帯の年収目安と支援割合
次の表は、JASSOが示しているモデル世帯の年収目安です。
- 父:給与所得者
- 母:収入なし
- 申込者本人
- 中学生のきょうだい
以上の4人世帯を想定しています。
| 支援区分 | 年収の目安 | 対象となる世帯 | 給付型奨学金 | 授業料・入学金の減免 |
|---|---|---|---|---|
| 第Ⅰ区分 | 約271万円まで | 通常世帯を含む | 満額 | 満額 |
| 第Ⅱ区分 | 約303万円まで | 通常世帯を含む | 満額の3分の2 | 満額の3分の2 |
| 第Ⅲ区分 | 約378万円まで | 通常世帯を含む | 満額の3分の1 | 満額の3分の1 |
| 第Ⅳ区分 | 約635万円まで | 多子世帯 | 満額の4分の1 | 満額 |
| 第Ⅳ区分 | 約635万円まで | 対象となる私立理工農系 | 支給なし | 大学・高専は3分の1、短大・専門学校は4分の1 |
第Ⅳ区分は、年収要件に該当するすべての世帯が対象になるわけではありません。
多子世帯または対象となる私立理工農系の学生が対象です。
どちらにも該当しない世帯は、第Ⅲ区分の収入基準を超えると、原則として支援対象外になります。

年収はあくまで目安です。
夫婦の働き方、扶養している人数、所得控除などによって、実際の判定は変わります。

なお、多子世帯は第Ⅳ区分の年収目安を超えても、授業料・入学金については所得制限なく国の上限まで減免されます。
ただし、給付型奨学金は世帯所得に応じて決まり、第Ⅳ区分を超える場合は支給されません。
多子世帯の詳しい条件は、別の記事で解説します。
年収はあくまで目安
給付型奨学金は、額面年収だけで対象が決まるわけではありません。
給与所得者の場合は、主に次の流れで判定に使う金額が計算されます。
- 給与収入から給与所得控除を差し引き、給与所得を計算する
- 給与所得から扶養控除や医療費控除などの所得控除を差し引き、課税標準額を計算する
- 課税標準額などをもとに、支給額算定基準額を計算する

そのため、同じ年収でも、次のような条件によって支援区分が変わることがあります。
- 夫婦の働き方
- 扶養している人数
- 利用できる所得控除
自分の世帯が対象になりそうかは、JASSOの「進学資金シミュレーター」で大まかに確認できます。
判定に影響するもの・影響しないもの
収入基準の判定では、課税される所得を減らす「所得控除」と、算出された税額を減らす「税額控除」で扱いが異なります。
| 判定に影響する可能性があるもの | 判定に影響しないもの |
|---|---|
| 扶養控除 | ふるさと納税 |
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | 住宅ローン控除 |
| 生命保険料控除 | 定額減税などの臨時的な減税 |
| 医療費控除 | 市町村民税の減免 |
| iDeCo掛金の所得控除 | - |
| 障害者控除・ひとり親控除など | - |
ふるさと納税や住宅ローン控除などによって、実際に納める住民税が少なくなっても、給付型奨学金の判定には影響しません。
市町村民税の減免とは、災害や失業などの事情で住民税の支払いが困難になった場合に、自治体が住民税を減額または免除する制度です。
こうした減免によって住民税が下がっても、給付型奨学金の判定には反映されません。
一方、医療費控除、生命保険料控除、iDeCoの掛金に対する小規模企業共済等掛金控除などは、住民税の課税標準額に影響します。
年末調整や確定申告で、本来受けられる所得控除の申告漏れがないか確認しておきましょう。
どの年の収入で判定される?
給付型奨学金は、申込時点の給与明細だけで判定するわけではありません。
過去の所得をもとに決定された住民税情報を使います。
たとえば、2026年度に大学へ進学した学生の2026年4月から9月までの支援区分は、2024年中の所得と、それに基づく2025年度の住民税情報をもとに判定されています。
2026年10月以降の支援区分は、2025年中の所得と、それに基づく2026年度の住民税情報を使って見直されます。
判定に使う所得の年は、申込時期によって異なるため、申込年度のJASSOの案内を確認しましょう。
資産はいくらまで?
給付型奨学金では、収入だけでなく資産も確認されます。
原則として、申込日時点で、学生本人と生計維持者の対象資産の合計が5,000万円未満であることが条件です。
資産に含まれるもの・含まれないもの
| 資産に含まれるもの | 資産に含まれないもの |
|---|---|
| 現金・普通預金・定期預金 | まだ受け取っていない保険金 |
| 投資用として保有する金・銀など | 土地・建物などの不動産 |
| 投資信託・有価証券(株式、国債、社債、地方債など) | 確定拠出年金(iDeCo・企業型確定拠出年金) |
| 満期や解約によって現金化した保険 | 満期・解約前の貯蓄性保険(学資保険・個人年金保険など) |
現金、預貯金、投資信託、有価証券、投資目的で保有している金や銀などは、資産に含まれます。
株式や投資信託などは、購入時の金額ではなく、申込時点の時価で計算します。
一方、土地や建物などの不動産、満期・解約前の貯蓄性保険などは、資産に含まれません。
確定拠出年金についても、iDeCoや企業型確定拠出年金は、原則として受給年齢まで自由に引き出せない年金資産であるため、対象資産には含めない扱いです。
保険は解約前と現金化した後で扱いが変わる
満期・解約前の学資保険や個人年金保険などは、解約返戻金があっても資産に含まれません。
一方、満期や解約によって保険金を受け取った後は、現金や預貯金として資産に含まれます。
住宅ローンなどの負債は差し引けない
給付型奨学金の資産基準では、住宅ローンや教育ローンなどの負債を資産額から差し引くことはできません。
たとえば、次のような場合を考えてみましょう。
- 預貯金:5,200万円
- 住宅ローン残高:4,000万円
この場合、差し引いた1,200万円ではなく、預貯金5,200万円として判定されます。
一般的な純資産ではなく、対象となる資産の合計額で判断する点に注意しましょう。
学力基準はどのくらい?
給付型奨学金は、成績がトップクラスでなければ利用できない制度ではありません。
高校在学中に申し込む予約採用では、次のいずれかを満たすことが基本です。
- 高校1年生から申込時までの全履修科目の評定平均が、5段階評価で3.5以上
- 大学などで学ぶ意欲が、レポートや面談などによって確認できる
評定平均が3.5未満でも、学修意欲が確認されれば対象になる可能性があります。
なお、大学などへ進学した後に申し込む在学採用では、予約採用とは異なる学力基準が使われます。
進学先が対象校か確認する
給付型奨学金と授業料等減免を利用できるのは、国や自治体から対象校として確認を受けた学校です。
対象となるのは、次の学校です。
- 大学
- 短期大学
- 高等専門学校
- 専門学校
文部科学省によると、対象校の割合は次のとおりです。
| 学校の種類 | 対象校の割合 |
|---|---|
| 大学・短期大学 | 96% |
| 高等専門学校 | 98% |
| 専門学校 | 80% |
大学や短期大学では多くの学校が対象ですが、すべての学校が対象ではありません。
特に専門学校は、対象外の学校もあるため、事前に確認しておきましょう。
志望校が対象かどうかは、文部科学省の「支援対象校一覧」で確認できます。
対象校は追加や変更が行われる場合があるため、申込前に最新の一覧を確認しましょう。
対象になると、いくら支援される?
ここからは、条件を満たした場合に受けられる支援額を確認します。
給付型奨学金はいくらもらえる?
給付型奨学金の支給額は、次の条件によって決まります。
- 支援区分
- 国公立か私立か
- 自宅通学か自宅外通学か
- 学校の種類


授業料・入学金はいくら減免される?
授業料と入学金の減免割合は、支援区分によって異なります。
| 支援区分・対象 | 授業料・入学金の減免割合 |
|---|---|
| 第Ⅰ区分 | 上限額まで満額 |
| 第Ⅱ区分 | 上限額の3分の2 |
| 第Ⅲ区分 | 上限額の3分の1 |
| 多子世帯 | 所得にかかわらず上限額まで満額 |
| 第Ⅳ区分・私立理工農系 | 大学・高専は上限額の3分の1、短大・専門学校は4分の1 |

私立大学・自宅外通学なら4年間でいくら?
第Ⅰ区分に該当し、私立大学へ自宅外から通う場合を考えてみましょう。
1年間の支援額
| 支援内容 | 金額 |
|---|---|
| 給付型奨学金 | 月75,800円・年約91万円 |
| 授業料減免 | 最大70万円 |
| 入学金減免 | 初年度最大26万円 |
入学初年度は、合計で最大約187万円の支援になります。
4年間同じ支援区分が続いた場合の概算
| 支援内容 | 4年間の概算 |
|---|---|
| 給付型奨学金 | 約364万円 |
| 授業料減免 | 最大280万円 |
| 入学金減免 | 最大26万円 |
| 合計 | 最大約670万円 |
給付型奨学金と授業料・入学金の減免を合わせると、非常に大きな支援になります。
申込み方法
いつ申し込む?
給付型奨学金の主な申込み方法は、次の3つです。
| 申込み方法 | 申込み時期 |
|---|---|
| 予約採用 | 高校在学中 |
| 在学採用 | 大学などへ進学した後 |
| 家計急変採用 | 所定の事情で家計が急変したとき |
予約採用
高校在学中に、高校を通じて申し込む方法です。
一般的には高校3年生の春頃から案内されますが、具体的な申込時期は学校によって異なります。

出典:日本学生支援機構「高等教育の修学支援新制度の周知用リーフレット」
在学採用
大学、短期大学、専門学校などへ進学した後に、進学先を通じて申し込む方法です。
高校在学中に申し込まなかった場合や、予約採用で対象外だった場合でも、進学後に改めて申し込めます。

出典:日本学生支援機構「高等教育の修学支援新制度の周知用リーフレット(在学)」
家計急変採用
生計維持者の死亡、非自発的な失業、事故や病気による3か月以上の就労困難、災害など、JASSOが定める事由によって家計が急変した場合は、家計急変採用を申し込める可能性があります。
家計が急変した場合は、通常の住民税情報では現在の状況を反映できないことがあります。
事情が発生したら、早めに学校の奨学金窓口へ相談しましょう。
利用するときの注意点
自宅通学と自宅外通学の違い
給付型奨学金は、自宅通学か自宅外通学かによって支給額が大きく異なります。
ただし、一人暮らしをすれば、必ず自宅外通学として認められるわけではありません。
主に、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 実家から学校まで片道60km以上
- 通学時間が片道120分以上
- 通学費が月1万円以上
- 通学時間が片道90分以上で、通学時間帯の交通機関が1時間に1本以下
- その他、やむを得ない事情がある
生計維持者と別居し、本人または生計維持者が本人の居住にかかる家賃を支払っていることを証明する書類を提出して、審査を受ける必要があります。
岡山大学の近くで下宿する例
たとえば、実家から岡山大学まで次の条件で通える家庭を想定します。
- 距離:約30km
- 公共交通機関で片道約1時間
- 通学費:月1万円未満
- 通学できない特別な事情はない
本人が岡山大学の近くに住みたいという希望で部屋を借りたとしても、それだけで自宅外通学として認められるわけではありません。
この例では、距離、通学時間、通学費の基準を満たしておらず、特別な事情もありません。
そのため、実際に下宿をしていても、自宅通学の支給額になる可能性があります。
判断されるのは、本人が一人暮らしを希望しているかではなく、実家から通学することが困難かどうかです。
進学前には振り込まれない
給付型奨学金は、大学などへ進学した後に振り込みが始まります。
| 申込み方法 | 初回振込の目安 | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 予約採用 | 4月~6月頃 | 大学などへ進学後、「進学届」を提出 |
| 春の在学採用 | 6月~7月頃 | 進学先を通じて申込み |
そのため、次のような進学前や入学直後の費用は、別に準備しておく必要があります。
- 受験料
- 受験のための交通費や宿泊費
- 併願校の入学金
- 引っ越し費用
- 家具・家電
- 入学直後に必要な学費
授業料等減免の対象になる予定でも、いったん入学金などを全額支払い、後から返金される学校もあります。
納付方法や返金時期は、進学先へ確認しましょう。
入学前の資金の準備には、下記制度が選択肢としてあります。

一度採用されても、支援が続くとは限らない
給付型奨学金は、一度採用されれば、卒業まで必ず支援が続く制度ではありません。
進学後も、次の項目が確認されます。
- 世帯の所得
- 資産
- 扶養状況
- 学業成績
- 出席状況
家計基準は毎年審査され、その結果は原則として毎年10月分からの支援区分に反映されます。
親の収入が増えたり、扶養状況が変わったりすると、支援額が減ったり、対象外になったりする可能性があります。
また、単位を大幅に落としたり、出席率が著しく低かったりする場合は、警告、支給停止、廃止などになることがあります。
貸与型奨学金と併用できる?
給付型奨学金は、第一種奨学金や第二種奨学金などの貸与型奨学金と併用できます。
| 組み合わせ | 貸与額への影響 |
|---|---|
| 給付型奨学金+第二種奨学金 | 給付型奨学金を理由とした減額はない |
| 給付型奨学金+第一種奨学金 | 第一種奨学金が減額または0円になる場合がある |
有利子の第二種奨学金は、給付型奨学金を受けていることを理由に貸与額が減らされることはありません。
一方、無利子の第一種奨学金は、給付型奨学金の支援区分、学校の種類、自宅通学・自宅外通学などによって、貸与月額が減額され、0円になる場合があります。
まとめ
給付型奨学金や授業料等減免の対象になるかを確認するには、次の条件を確認する必要があります。
- 世帯の収入
- 学生本人と生計維持者の対象資産
- 学生本人の学力・学修意欲
- 進学先が対象校か
また、対象になるかは毎年見直されるため、一度採用されても卒業まで同じ支援が続くとは限りません。
該当する可能性がある場合は、高校や進学先の案内を確認し、実際に申請してみましょう。

1級FP 磯山裕樹