「子どもが3人いると、大学の授業料が無料になる」
このような話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
では、ここでクイズです。
次の家庭は、多子世帯の支援対象になるでしょうか。
- 長男:大学を卒業して就職し、親の扶養を外れている
- 長女:大学生
- 次男:大学生
子どもは全部で3人います。
この場合、大学生の長女と次男は、多子世帯として授業料等減免を受けられるでしょうか。
答えは、対象になりません。
子どもが3人いるのに、なぜ多子世帯に該当しないのでしょうか。
この記事では、次の内容について分かりやすく解説します。
- 多子世帯の支援内容
- 通常の世帯との違い
- 多子世帯に該当する条件
- 扶養する子どもの数え方
- 子どものアルバイト収入の注意点
- 授業料と入学金はいくら減免されるのか
目次
多子世帯も支援の仕組みは基本的に同じ
国の「高等教育の修学支援新制度」には、次の2つの支援があります。
| 支援の種類 | 支援内容 |
|---|---|
| 給付型奨学金 | 返済不要の奨学金が学生本人に支給される |
| 授業料等減免 | 大学などへ支払う授業料と入学金が減額・免除される |
この2つの支援があることは、多子世帯でも、それ以外の世帯でも同じです。

出典:日本学生支援機構「高等教育の修学支援新制度の周知用リーフレット」
支援を受けるためには、主に次の条件が確認されます。
| 確認する条件 | 主な内容 |
|---|---|
| 収入基準 | 本人と生計維持者の住民税情報 |
| 資産基準 | 本人と生計維持者が保有する対象資産 |
| 学力基準 | 成績、修得単位数、学修意欲など |
| 進学先 | 制度の対象となる学校か |
収入基準、学力基準、対象校、給付型奨学金の支給額などについては、別の記事で詳しく解説しています。
多子世帯で異なるポイントは2つ
多子世帯が通常の世帯と異なるのは、次の2点です。
- 授業料と入学金の減免に所得制限がない
- 授業料等減免の資産基準が3億円未満まで緩和される
1.授業料・入学金の減免に所得制限がない
通常の世帯では、世帯所得に応じて、給付型奨学金と授業料等減免の支援割合が決まります。
一方、多子世帯では、世帯所得にかかわらず、授業料と入学金が国の上限額まで減免されます。
ただし、給付型奨学金の支給額は、通常どおり世帯所得によって変わります。
| 所得の判定 | 給付型奨学金 | 多子世帯の授業料・入学金 |
|---|---|---|
| 第1区分 | 満額 | 国の上限額まで減免 |
| 第2区分 | 満額の3分の2 | 国の上限額まで減免 |
| 第3区分 | 満額の3分の1 | 国の上限額まで減免 |
| 第4区分 | 満額の4分の1 | 国の上限額まで減免 |
| 第4区分の収入基準を超える | 支給なし | 国の上限額まで減免 |
多子世帯だから、全員が第4区分になるわけではありません。
所得が第1~第3区分に該当する場合は、それぞれの区分に応じた給付型奨学金が支給されます。
第4区分に該当する多子世帯では、次の支援を受けられます。
- 給付型奨学金:満額の4分の1
- 授業料・入学金:国の上限額まで減免
さらに、第4区分の収入基準を超えても、多子世帯に該当し、資産や学業などの条件を満たしていれば、授業料等減免を受けられます。
2.授業料等減免の資産基準が3億円未満まで緩和される
給付型奨学金の資産基準は、本人と生計維持者が保有する対象資産の合計が5,000万円未満です。
一方、多子世帯の授業料等減免では、資産基準が3億円未満まで緩和されます。
| 本人と生計維持者の対象資産 | 給付型奨学金 | 多子世帯の授業料・入学金 |
|---|---|---|
| 5,000万円未満 | 所得区分に応じて支給 | 国の上限額まで減免 |
| 5,000万円以上3億円未満 | 対象外 | 国の上限額まで減免 |
| 3億円以上 | 対象外 | 対象外 |
資産が5,000万円以上3億円未満の場合は、次の支援内容になります。
- 給付型奨学金:0円
- 授業料・入学金:国の上限額まで減免
つまり、多子世帯では、次のような家庭でも授業料等減免を受けられる可能性があります。
- 世帯所得が第4区分の収入基準を超えている
- 資産が5,000万円以上ある
ただし、本人と生計維持者の対象資産が3億円未満であることが必要です。
多子世帯に該当する条件
多子世帯の支援を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 申込者である学生本人が、生計維持者に扶養されている
- 生計維持者が扶養する子どもが3人以上いる
ここでいう生計維持者は、原則として父母です。
一般に「扶養」には、主に次の2種類があります。
| 扶養の種類 | 関係する制度 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 健康保険上の扶養 | 健康保険 | 家族が被扶養者として健康保険に入れるか |
| 税金上の扶養 | 所得税・住民税 | 親の扶養親族として税金の計算に含まれるか |
多子世帯の判定では、基本的に住民税情報における税金上の扶養状況が確認されます。
そのため、子どもが親の健康保険に入っているからといって、必ず多子世帯の人数に含まれるわけではありません。
実際の判定では、申告した子どもの人数と、住民税情報に記録された扶養親族数などをもとに確認されます。
ただし、19歳から22歳の学生年代については例外があります。一定の条件を満たせば、税金上の扶養親族から外れていても、多子世帯の「子ども」として数えられます。申込者本人がこの条件に該当する場合も、多子世帯の「子ども」として数えられます。
扶養する子どもの人数を具体例で確認
例えば、次のような4人兄弟姉妹の家庭を考えてみましょう。
| 子ども | 状況 | 多子世帯の「子ども」に含まれるか |
|---|---|---|
| 長男 | 社会人・就職して親の扶養を外れている | 含まれない |
| 長女 | 大学生・親の扶養に入っている | 含まれる |
| 次男 | 高校生・親の扶養に入っている | 含まれる |
| 三男 | 小学生・親の扶養に入っている | 含まれる |
この家庭には、子どもが4人います。
長男は就職して親の扶養から外れているため、多子世帯の人数には含まれません。
一方、長女、次男、三男の3人は、親の税金上の扶養に入っています。
したがって、親が扶養する子どもは3人です。
大学生の長女は、資産や学業など、ほかの条件も満たせば、多子世帯の授業料等減免を受けられます。

出典:日本学生支援機構「扶養親族および『子ども』の範囲について」
なお、住民税上の扶養親族には、祖父母などが含まれることがあります。
しかし、多子世帯の判定で数えるのは、制度上の「子ども」に該当する人です。
配偶者や祖父母を扶養していても、多子世帯の子どもの人数には含まれません。
長女が卒業して就職したらどうなる?
その後、長女が大学を卒業して就職し、親の税金上の扶養から外れた場合はどうなるでしょうか。
親が扶養する子どもは、次の2人になります。
- 次男
- 三男
扶養する子どもが3人から2人になるため、多子世帯の対象外になります。
例えば、長女の就職後に次男が大学へ進学しても、その時点で税金上扶養されている子どもが次男と三男の2人であれば、次男は多子世帯の授業料等減免を受けられません。
つまり、多子世帯の判定で重要なのは、次の点です。
子どもが全部で何人いるかではなく、大学等の在学中に、多子世帯の「子ども」として数えられる人が何人いるか。
子どものアルバイト収入にも注意
多子世帯に該当するためには、多子世帯の「子ども」として数えられる人が、申込者本人を含めて3人以上必要です。
そのため、子どものアルバイト収入が多い家庭は注意が必要です。
アルバイトによる給与収入が一定額を超えると、多子世帯の判定で「子ども」として数えられなくなります。
給与収入だけの場合、基本となる金額は年123万円以下です。
ただし、19歳から22歳の学生年代については、年収123万円を超えても、年160万円以下であれば、多子世帯の「子ども」として数えられます。
| 子どもの年代 | 多子世帯の「子ども」に含まれる給与収入の範囲 |
|---|---|
| 19歳以上23歳未満の学生年代 (一定の18歳早生まれを含む) |
年160万円以下 |
| 上記以外の年代 | 年123万円以下 |
※年齢は原則として、その年の12月31日時点で判定されます。
※年収123万円超160万円以下の兄弟姉妹を人数に加える場合は、別途申告が必要になることがあります。
4人きょうだいの例で確認
先ほどの家庭では、長女、次男、三男の3人が、多子世帯の「子ども」として数えられます。
そのため、大学生の長女は、資産や学業、対象校などの条件も満たせば、多子世帯の授業料等減免を受けられます。
しかし、次のような場合は多子世帯の条件を満たせなくなります。
大学生の長女が年160万円を超えた場合
19歳から22歳の長女が、アルバイトで年160万円を超える給与収入を得ると、長女は多子世帯の「子ども」として数えられません。
数えられる子どもは、次男と三男の2人になります。
そのため、長女は多子世帯の授業料等減免の対象外になります。
高校生の次男が年123万円を超えた場合
高校生の次男がアルバイトで年123万円を超えた場合も注意が必要です。
高校生など19歳から22歳の学生年代に該当しない子どもは、給与収入が年123万円を超えると、多子世帯の「子ども」として数えられません。
この場合、数えられる子どもは、長女と三男の2人になります。
そのため、大学生の長女は、多子世帯の授業料等減免の対象外になります。
つまり、子どものアルバイト収入は、アルバイトをしている本人だけでなく、ほかのきょうだいが多子世帯支援を受けられるかどうかにも影響します。
授業料・入学金はいくら減免される?
多子世帯に該当すると、所得にかかわらず、国が定める金額を上限として、授業料と入学金が減免されます。

減免される金額は、学校へ支払う費用の総額ではなく、国が定める減免の上限額です。
学校の種類や、国公立・私立の違いによって上限額が異なります。
まとめ|多子世帯の支援で大切なこと
多子世帯の支援でいう「子どもが3人以上」とは、単に子どもが3人いるという意味ではありません。
生計維持者が扶養する子どもとして、多子世帯の判定で数えられる子どもが、学生本人を含めて3人以上いることが必要です。
通常の給付型奨学金や授業料等減免との主な違いは、次の2点です。
- 授業料と入学金は、世帯所得にかかわらず、国の上限額まで減免される
- 授業料等減免の資産基準は、通常の5,000万円未満ではなく、3億円未満まで緩和される
ただし、上の子の就職や子どものアルバイト収入によって、多子世帯の「子ども」として数えられる人数が3人未満になると、多子世帯の対象外になります。
そのため、子どもの総人数ではなく、大学等の在学中の判定時点で、多子世帯の「子ども」として数えられる人が何人いるかを確認することが大切です。

1級FP 磯山裕樹