皆さんに質問です。
600万円ほどするアルファードに乗っている家族がいたら、その家庭は裕福だと思いますか?
- 裕福だと思う
- 必ずしも裕福とは限らない
実際には、乗っている車だけで、その家庭の経済状況を判断することはできません。
私のところへ相談に来られた方の中にも、アルファードに乗っている家庭がありました。
一見すると、余裕のある家庭に見えます。
しかし、家計の中身を確認すると、次のような状態になっていました。
- 住宅は住宅ローンで購入
- アルファードも自動車ローンで購入
- 高額な腕時計も分割払い
- 毎月の返済で生活費が不足
- 最終的にはカードローンも利用
欲しいものを、その都度ローンで購入した結果、毎月の返済額が増え、家計は非常に厳しい状況になっていたのです。
このように、外から見える生活の豊かさと、実際の家計の余裕は、必ずしも一致しません。
私は、借金については、
基本的には利用しない
というスタンスがよいと考えています。
借金を利用することに慣れると、今はお金がなくても、欲しいものを次々に購入できてしまうからです。
ただし、借金は絶対にしてはいけないわけではありません。
この記事では、次の内容について解説します。
- 借金とは何か
- なぜ借金によって金利が違うのか
- 借金を基本的に利用しないほうがよい理由
- 例外として利用してよい借金の条件
- すでに借金がある場合の返済方法
目次
借金とは、将来のお金を先に使うこと
借金とは、将来返すことを約束して、先にお金を使わせてもらうことです。
たとえば、3,000万円の住宅を現金で購入するためには、3,000万円を貯める必要があります。
しかし、住宅ローンを利用すれば、今から住宅に住み、借りたお金を将来の収入から少しずつ返済できます。
つまり、借金には、
将来のお金を先に使える
という特徴があります。
その代わり、借りた元本に加えて、利息や手数料を支払う必要があります。
なぜ借金によって金利が違うのか
金利を決める主な要素は、次の3つです。
| 金利を決める要素 | 金融機関が確認すること |
|---|---|
| 返済できる可能性 | 収入や勤務状況などから、最後まで返済できそうか |
| 担保があるか | 返済できない場合に、売却して回収できる資産があるか |
| お金の使い道 | 借りたお金を何に使うのかが明確か |
返済できる可能性
金融機関は、次のような情報を確認します。
- 年収
- 勤務先
- 勤続年数
- 年齢
- 他の借入状況
- 過去の返済状況
安定した収入があり、他の借金が少なく、最後まで返済できる可能性が高い人ほど、低い金利で借りやすくなります。
反対に、返済が難しいと判断された場合は、金利が高くなるだけでなく、そもそも借りられないこともあります。
担保があるか
住宅ローンでは、購入する土地や建物に抵当権を設定します。
住宅ローンを返済できなくなった場合、金融機関は担保となっている住宅を売却し、貸したお金の回収に充てることができます。
そのため、担保がないローンよりも、金融機関が貸したお金を回収しやすくなります。
住宅ローンが比較的低金利なのは、住宅を担保にできることが大きな理由の一つです。
お金の使い道が明確か
一般的に、お金の使い道が明確なローンほど、金利は低くなりやすい傾向があります。
たとえば住宅ローンは、住宅の購入や建築など、決められた目的にしか使えません。
金融機関も、売買契約書などを確認し、住宅購入に必要な金額を貸します。
もし、住宅を購入すると言って低金利で借りたお金を、実際には投資やギャンブル、生活費などに使われてしまったら、金融機関が想定していた返済計画と異なるものになります。
一方、カードローンやフリーローンは、使い道が自由です。
生活費や他の借金の返済に使われる可能性もあるため、返済されないリスクが高くなり、金利も高くなりやすいのです。
借金の種類と金利の違い
代表的な借金を、3つの要素と金利で整理すると、次のようになります。
| 借金の種類 | 申込時の審査 | 担保 | 使い道 | 金利の傾向 | 2026年7月時点の代表的な金利 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅ローン | ◎ | 〇 | 住宅購入に限定 | 低い | 三菱UFJ銀行・変動:年0.945% フラット35:年3.14% |
| 第二種奨学金 | ※1 | × | 自由 | 比較的低い | 固定方式:年2.922% 見直し方式:年1.900% |
| 自動車ローン | 〇 | 銀行系は原則無担保 ディーラー系は所有権留保の場合あり |
車の購入に限定 | 中程度 | 三菱UFJ銀行・据置型:年4.725% |
| 教育ローン | 〇 | × | 教育関係に限定 | 中程度 | 国の教育ローン:固定年4.05% |
| フリーローン | 〇 | × | 自由 | 高め | 商品により年5~15%程度 |
| カードローン | 〇 | × | 自由 | 高い | 三菱UFJ銀行:年1.4~14.6%※2 |
| リボ払い | △ | × | 自由 | 高い | 実質年率15~18%程度 |
※1 第二種奨学金は、住宅ローンのように卒業後の返済能力を詳しく審査するのではなく、主に学力基準や家計基準などによって選考されます。
実際の金利は、利用する金融機関、契約時期、借入金額、審査結果などによって異なります。
第二種奨学金が低金利なのはなぜか
第二種奨学金には、次のような特徴があります。
- 担保がない
- 一般のローンのような卒業後の返済能力審査ではない
それでも比較的低金利なのは、一般の金融商品とは異なる公的な修学支援制度であり、利率の決め方や上限が法令などで定められているためです。
借金を基本的に利用しないほうがよい2つの理由
私は、借金を基本的には利用しないほうがよいと考えています。
理由は、大きく2つあります。
理由1|欲しいものをローンで買う習慣がつくから
借金を利用すれば、今は手元にお金がなくても、欲しいものを購入できます。
最初は、
「今回だけ」
「月々1万円なら払える」
と考えてローンを利用するかもしれません。
しかし、一度ローンを利用することに慣れると、次のように、さまざまなものを借金で購入する習慣がつくことがあります。
- 車もローン
- スマートフォンも分割払い
- 時計もショッピングローン
- 家具や家電も分割払い
それぞれの支払いは月数千円や1万円程度でも、複数のローンが重なると、毎月の返済額は少しずつ増えていきます。
本人は管理できているつもりでも、次のようなことを把握できなくなる場合があります。
- 借金が全部でいくら残っているのか
- 毎月いくら返済しているのか
- いつ返済が終わるのか
そして、毎月の返済で家計に余裕がなくなり、急な支出に対応できなくなると、カードローンやリボ払いに手を出す原因にもなります。
借金が膨らんでから家計を整理しようとしても、すぐに返済をなくすことはできません。
そのため、
借金を管理できなくなってから対処するのではなく、最初から借金を増やさない
という考え方が大切です。
理由2|本当に借りたいときに借りられなくなる可能性があるから
借金をすると、その契約内容や返済状況が信用情報機関に登録されることがあります。
その代表例が、スマートフォン本体の分割払いです。
毎月の通信料金と一緒に支払っているため、借金という認識がない方もいると思います。
しかし、スマートフォンの本体代金を分割で購入する契約も、借金の一つです。
支払いが遅れたり、長期間延滞したりすると、その情報が信用情報に登録される可能性があります。
信用情報に延滞情報が登録されると、将来、次のような審査に影響することがあります。
- クレジットカード
- 自動車ローン
- 教育ローン
- 住宅ローン
一度支払いが遅れただけで、必ず住宅ローンが借りられなくなるわけではありません。
ただし、数千円のスマートフォン代金を延滞したことが原因で、本当に家を購入したいときに住宅ローンを借りられなくなる可能性があるとすれば、本末転倒です。
金利0%の分割払いであっても、返済義務があることに変わりはありません。
金利の計算だけで考えれば、0%の分割払いは経済的に損ではありません。
しかし、次の理由から、私は原則として一括払いをおすすめしています。
- 借金を増やす習慣をつけない
- 支払い忘れや延滞のリスクを減らす
- 家計をシンプルに管理する
無駄な借金をしなければ、無駄な延滞リスクを負う必要もありません。
例外として利用してよい借金の3条件
借金は基本的に利用しない。
これが原則です。
ただし、借金を避けることだけを優先すると、住宅購入や進学など、時間に限りがある機会を逃すこともあります。
そのため、借金を一律に否定するのではなく、次の3つの条件を満たすかを確認することが重要です。
| 条件 | 確認すること |
|---|---|
| 金利が低い | 利息負担が大きすぎないか |
| 利息以上の価値が見込める | 将来の生活や収入につながるか |
| 無理なく返済できる | 返済を続けても生活や貯蓄に無理がないか |
条件1|金利が低い
金利が高いほど、借りた金額に対して支払う利息が大きくなります。
そのため、借金を利用する場合は、金利が低いことが一つ目の条件です。
住宅ローンや奨学金は、カードローンやリボ払いなどと比べると、低金利で利用できる可能性があります。
ただし、金利が低いだけでは、借りてもよいとはいえません。
残りの2つの条件も確認する必要があります。
条件2|支払う利息以上の価値が見込める
借金をすることで、支払う利息以上の価値を得られる可能性があるかを考えます。
代表的な例が、住宅ローンと奨学金です。
住宅ローンの場合
住宅ローンを利用すれば、購入資金をすべて貯めるまで待たずに、今から家族に合った住宅に住むことができます。
また、住宅ローンを完済すれば、老後に家賃やローン返済を続ける必要がなくなるため、将来の住居費を抑えられる可能性があります。
ただし、持ち家であっても、次のような費用は必要です。
- 固定資産税
- 火災保険料
- 修繕費
- マンションの管理費
- マンションの修繕積立金
そのため、持ち家が必ず賃貸よりも有利になるとは限りません。
それでも、家族に合った住環境を早い段階から確保でき、老後まで住める住宅を残せることは、住宅ローンを利用する価値の一つです。
ただし、借入額が大きすぎて、返済途中で家計が苦しくなれば意味がありません。
住宅ローンであっても、借りられる上限ではなく、最後まで無理なく返済できる金額に抑えることが必要です。
奨学金の場合
奨学金を利用することで、大学へ進学し、将来の仕事や収入の選択肢を広げられる可能性があります。
現在の日本では、次のような傾向があります。
- 大卒でなければ応募できない仕事がある
- 高卒と大卒で採用区分が異なることがある
- 配属される職種や昇進コースが異なることがある
- 大卒者のほうが平均的な生涯賃金が高い
労働政策研究・研修機構の推計では、退職金と定年後の就労を含めた生涯賃金は、次のようになっています。
| 学歴 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 高校卒 | 約2億7,530万円 | 約2億円 |
| 大学卒 | 約3億3,950万円 | 約2億6,720万円 |
| 差額 | 約6,420万円 | 約6,720万円 |
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2025」
この統計は、学校卒業後に就職し、フルタイムで働き、退職金と定年後の就労まで含めて生涯賃金を推計したものです。
たとえば、大学進学のために400万円の奨学金を利用しても、大学卒業によって将来の仕事や収入の選択肢が大きく広がるのであれば、借入額以上の価値を得られる可能性があります。
ただし、大学へ進学すれば、誰でも必ず6,000万円多く稼げるわけではありません。
なお、この差額は「大学へ進学したことだけによって増えた収入」を示すものではありません。
就職先の企業規模や業種、働き方、もともとの能力や家庭環境などの違いも含まれています。
また、大学の学費や、大学在学中に得られなかった収入も考慮する必要があります。
条件3|無理なく返済できる
3つ目は、無理なく返済できることです。
金利が低く、支払う利息以上の価値が期待できても、返済できなければ、よい借金とはいえません。
たとえば、住宅ローンを返済できなくなれば、担保となっている住宅を売却しなければならないことがあります。
また、低金利の住宅ローンや奨学金の返済で家計に余裕がなくなり、生活費を補うためにカードローンを利用することになれば、本末転倒です。
無理なく返済できるとは、返済を続けても生活や貯蓄に無理がない状態です。
金融機関から借りられる金額と、自分が無理なく返せる金額は違います。
借りられる上限ではなく、家計全体を見て返済額を決める必要があります。
すでに借金がある場合、急いで返したほうがよいのか
すでに借金がある場合は、次の2つに分けて考えます。
- 急いで返したほうがよい借金
- 必ずしも急いで返さなくてもよい借金
借金の金利と、手元資金や資産運用とのバランスを見ながら判断します。
視点1|借金の金利と手元資金のバランス
まず確認したいのが、借金の金利です。
高金利の借金は早めに返済する
たとえば、次のような高金利の借金は、できるだけ早く返済することを優先します。
- リボ払い
- カードローン
- 高金利のフリーローン
もちろん、手元の預金を完全にゼロにすると、急な支出に対応できません。
ただし、年15%前後の金利を支払いながら、多額の預金を残しておくのは合理的ではありません。
そのため、
最低限の生活予備資金を残し、それを超える預金は高金利の借金返済に回す
という考え方が基本になります。
低金利の借金は手元資金とのバランスを考える
一方、住宅ローンなどの低金利の借金は、急いで返すことが必ずしも正解とは限りません。
たとえば、次の2人を比べてみます。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 完済 | 残っている |
| 預金 | ほとんどない | 十分にある |
| 急な教育費 | 教育ローンを借りる | 預金から支払う |
Aさんは住宅ローンがなく、一見すると安心です。
しかし、住宅ローンを急いで返した結果、預金がほとんどありません。
その後、教育費が必要となり、住宅ローンより高い金利の教育ローンを借りることになれば、本末転倒です。
一方、Bさんは住宅ローンが残っていますが、必要な預金も確保しています。
そのため、新しい借金をせずに教育費を支払えます。
低金利の借金については、
借金をなくすことだけでなく、必要な手元資金を残すことも大切です。
視点2|借金の金利と資産運用の期待利回り
低金利の借金については、繰り上げ返済をせずに、手元のお金を資産運用に回す考え方もあります。
たとえば、
- 住宅ローン金利:年2%
- 資産運用の期待利回り:年5%
であれば、計算上は、住宅ローンを繰り上げ返済するよりも、資産運用を続けたほうが資産は増えやすくなります。
ただし、資産運用の期待利回りが年5%といっても、毎年必ず5%増えるわけではありません。
実際には、次のような値動きがあります。
- 10%上がる年
- 10%下がる年
- 数年間、利益が出ない期間
それらを長期間平均すると、年5%程度になることを期待するという意味です。
一方、金利年5%の自動車ローンを返済すれば、今後支払う年5%相当の利息負担を確実に減らせます。
そのため、借金の金利と資産運用の期待利回りが同じ程度であれば、基本的には借金の返済を優先します。
| 借金の例 | 金利の例 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 年2% | 手元資金や資産運用とのバランスを考える |
| 自動車ローン | 年5% | 基本的には返済を優先する |
| リボ払い | 年15% | できるだけ早く返済する |
住宅ローン金利が年2%、資産運用の期待利回りが年5%など、一定の差がある場合には、返済と資産運用のバランスを考える余地があります。
一方、自動車ローン金利と運用の期待利回りが同じ年5%であれば、不確実な運用益を狙うより、ローンを返済して確実に5%の利息負担を減らすほうが合理的です。
リボ払いが年15%であれば、資産運用で毎年安定して15%を上回ることは現実的ではありません。
そのため、資産運用よりも返済を優先します。
まとめ|借金は原則しない。例外は3条件を満たす場合
高級車に乗っているからといって、その家庭に経済的な余裕があるとは限りません。
車、時計、スマートフォン、家具や家電などをローンで購入すれば、一見豊かな生活を送ることはできます。
しかし、その裏側で毎月の返済が積み重なり、家計が厳しくなっていることもあります。
借金を利用することに慣れると、今はお金がないにもかかわらず、欲しいものを次々に購入する習慣がつく可能性があります。
そのため、基本的なスタンスは、
できるだけローンを利用せず、借金を増やさないことです。
ただし、次の3つの条件をすべて満たす場合には、例外として利用を検討してもよいと考えています。
- 金利が低い
- 支払う利息以上の価値が見込める
- 無理なく返済できる
住宅ローンや奨学金は、この条件を満たす可能性があります。
ただし、住宅ローンや奨学金であっても、借入額が大きすぎ、無理なく返済できないのであれば、よい借金とはいえません。
一方、すでに借金がある場合は、すべてを同じように返済するのではなく、金利によって考え方を分けます。
高金利の借金は、最低限の生活予備資金を残しながら、できるだけ早く返済します。
低金利の住宅ローンなどは、手元資金や資産運用とのバランスを考えながら返済します。
借金は、お金がないから利用するものではありません。
必要な目的のために、条件を確認したうえで例外的に利用するものと考えることが大切です。

1級FP 磯山裕樹