「無利子の第一種奨学金を利用できるの?」
「第一種が難しくても、利息の付く第二種奨学金なら利用できる?」
「成績や世帯年収が、どのくらいなら対象になるの?」
大学進学を控え、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、大きく分けて次の2種類があります。
- 返す必要のない給付型奨学金
- 卒業後に返還する貸与型奨学金
貸与型奨学金には、次の2つがあります。
- 無利子の第一種奨学金
- 有利子の第二種奨学金
第一種・第二種奨学金を利用するためには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 学力の基準
- 世帯収入による家計基準
- 申込資格や必要な手続き
この記事では、高校在学中に申し込む「予約採用」を中心に、第一種・第二種奨学金を利用するための条件や借りられる金額、返還方法などを分かりやすく解説します。
目次
第一種奨学金と第二種奨学金の違い
主な違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 第一種奨学金 | 第二種奨学金 |
|---|---|---|
| 金利 | 無利子 | 貸与終了時に決定。基本月額は年3%が上限 |
| 学力基準 | 原則として評定平均3.5以上 | 学習成績が平均水準以上、または学修意欲や卒業の見込みがあることなど |
| 家計基準 | 第二種より厳しい | 第一種より緩やか |
| 大学の貸与月額 | 進学先・通学方法によって異なる | 月2万円~12万円 |
| 返還方法 | 所得連動返還方式または定額返還方式 | 定額返還方式 |
違い1|第一種は無利子、第二種は有利子
第一種奨学金は無利子
第一種奨学金には利息が付きません。
借りた金額だけを返還します。
例えば、4年間で240万円を借りた場合、返還する金額も240万円です。
第二種奨学金は有利子
第二種奨学金には利息が付きます。
最初に押さえておきたいポイントは、次の2つです。
- 金利は貸与終了時に決まる
- 基本月額の金利は年3%を超えない
第二種奨学金は、貸与期間中には利息が付きません。
大学卒業と同時に貸与が終了する場合は、原則として卒業月の金利が適用されます。
そのため、大学へ入学する時点では、卒業時に何%の金利が適用されるかは分かりません。
また、利率固定方式・利率見直し方式のいずれを選んだ場合も、第二種奨学金の基本月額にかかる金利は年3%が上限です。
第二種奨学金には2つの金利方式がある
第二種奨学金には、次の2つの金利方式があります。
| 金利方式 | 内容 |
|---|---|
| 利率固定方式 | 貸与終了時に決まった金利が、返還完了まで変わらない |
| 利率見直し方式 | 貸与終了時に決まった金利を、おおむね5年ごとに見直す |
過去の金利は、次のとおりです。
| 貸与終了月 | 利率固定方式 | 利率見直し方式 |
|---|---|---|
| 2022年3月 | 年0.369% | 年0.040% |
| 2023年3月 | 年0.905% | 年0.300% |
| 2024年3月 | 年0.940% | 年0.400% |
| 2025年3月 | 年1.641% | 年1.100% |
| 2026年3月 | 年2.423% | 年1.600% |
| 2026年6月 | 年2.922% | 年1.900% |
世の中の金利が上昇する局面では、第二種奨学金の金利も上昇しやすくなります。
違い2|学力基準
第一種と第二種では、求められる学力基準が異なります。
第一種奨学金の学力基準
高校在学中に予約採用へ申し込む場合、第一種奨学金は原則として、高校入学後から申込時までの全履修科目の評定平均が3.5以上であることが必要です。
したがって、高校3年生になってから急に頑張るだけでは間に合わない可能性があります。高校1年生から意識することが大切です。
高校の評定は、単純にクラス内の順位で決まる相対評価ではなく、各教科・科目の目標に対して、どの程度到達できたかを5段階で評価するものです。
文部科学省では、それぞれの評定を次のように示しています。
| 評定 | 文部科学省の正式な表現 |
|---|---|
| 5 | 「十分満足できるもののうち、特に程度が高い」状況 |
| 4 | 「十分満足できる」状況 |
| 3 | 「おおむね満足できる」状況 |
| 2 | 「努力を要する」状況 |
| 1 | 「努力を要すると判断されるもののうち、特に程度が低い」状況 |
ただし、評定平均が3.5未満でも、次のいずれかに該当し、学校が学修意欲を確認した場合は、学力基準を満たすことがあります。
- 生計維持者の貸与額算定基準額が0円となる世帯
- 生活保護を受給している世帯
- 社会的養護を必要とする人
社会的養護を必要とする人には、児童養護施設などに入所している人や、里親による養育を受けている人などが該当します。
第二種奨学金の学力基準
第二種奨学金には、第一種のような「評定平均3.5以上」という全国共通の数値基準はありません。
JASSOでは、次のいずれかに該当することを学力基準としています。
- 高校での学習成績が平均水準以上である
- 特定の分野で特に優れた能力がある
- 進学後に学ぶ意欲があり、卒業できる見込みがある
「平均水準以上」が評定平均何点以上なのかという、全国共通の具体的な数字は公表されていません。
JASSOが定める基準に基づき、成績や学修意欲、進学後に卒業できる見込みなどが確認されます。その後、家計基準や申込資格などを含めて審査されます。
違い3|世帯収入による家計基準
第一種・第二種奨学金には、どちらにも世帯収入による家計基準があります。
正式には、住民税情報などから計算する「貸与額算定基準額」によって判定されます。
ただし、この基準額は分かりにくいため、まずはJASSOが公表している世帯の給与収入の目安を確認しましょう。
世帯全体の給与収入の上限目安
| 世帯の例 | 第一種 | 第二種 | 第一種・第二種の併用 |
|---|---|---|---|
| 学生・給与収入のある親1人 | 約761万円 | 約1,166万円 | 約706万円 |
| 学生・給与収入のある親1人・無収入の親1人 | 約716万円 | 約1,113万円 | 約661万円 |
| 学生・父母・中学生の4人世帯 | 約803万円 | 約1,250万円 | 約743万円 |
| 学生・父母・中学生・小学生の5人世帯 | 約905万円 | 約1,334万円 | 約841万円 |
表の金額は、父母など生計維持者の給与収入を合計した世帯年収の目安です。
例えば、父母、大学進学予定の子ども、中学生の4人世帯では、次のようになります。
- 第一種:約803万円
- 第二種:約1,250万円
- 第一種・第二種の併用:約743万円
ただし、表の金額以下なら必ず利用できるという意味ではありません。
実際には、住民税情報などから貸与額算定基準額を計算し、家計基準を満たすか判定されます。
家計基準に影響するもの
実際の判定には、主に次の内容が影響します。
- 父母など生計維持者の収入
- 世帯人数
- 所得控除
所得控除が住民税の課税対象となる所得に反映されるため、同じ世帯年収でも、家族構成や所得控除によって判定結果が異なる場合があります。
一方、次のような税額控除は、原則として家計基準を有利にするものではありません。
- 住宅ローン控除
- ふるさと納税による寄附金税額控除
- 定額減税などの臨時的な税額控除
これらの税額控除によって実際の住民税額が少なくなっていても、原則として貸与額算定基準額には影響しません。
進学資金シミュレーターで確認する
自分の世帯が対象になりそうかを確認する場合は、JASSOの「進学資金シミュレーター」を利用しましょう。
世帯収入や家族構成などを入力することで、第一種・第二種奨学金を利用できる可能性を大まかに確認できます。
ただし、シミュレーターはあくまで試算です。実際の判定結果と異なる場合があります。
違い4|借りられる月額
第一種と第二種では、借りられる月額が異なります。
第一種奨学金の貸与月額
第一種奨学金は、次の条件によって、最高月額と選べる月額が異なります。
- 国公立か私立か
- 自宅通学か自宅外通学か
大学の場合は、次のとおりです。
| 進学先・通学方法 | 最高月額 | 最高月額以外に選べる月額 |
|---|---|---|
| 国公立・自宅通学 | 4万5,000円 | 3万円・2万円 |
| 国公立・自宅外通学 | 5万1,000円 | 4万円・3万円・2万円 |
| 私立・自宅通学 | 5万4,000円 | 4万円・3万円・2万円 |
| 私立・自宅外通学 | 6万4,000円 | 5万円・4万円・3万円・2万円 |
第一種の最高月額には別の家計基準がある
第一種の家計基準を満たしていても、必ず最高月額を選べるわけではありません。
第一種の最高月額を選ぶ場合は、第一種・第二種を併用する場合と同じ家計基準を満たす必要があります。
| 満たしている家計基準 | 利用できる内容 |
|---|---|
| 第一種・第二種の併用基準 | 第一種の最高月額を選べる。第一種・第二種の併用も可能 |
| 第一種の基準 | 第一種を利用できる。ただし、最高月額は選択できない |
| 第二種の基準 | 第二種を利用できる。第一種は利用できない |
| 第二種の基準も超える | 第一種・第二種とも利用できない |
第一種の通常の基準は満たしていても、併用基準を満たしていない場合は、最高月額以外の金額から選びます。
第二種奨学金の貸与月額
第二種奨学金は、大学の場合、月2万円から12万円まで、1万円単位で選べます。
代表的な例は、次のとおりです。
| 月額 | 4年間の貸与総額 |
|---|---|
| 2万円 | 96万円 |
| 7万円 | 336万円 |
| 12万円 | 576万円 |
第一種と第二種は併用できる
第一種だけでは必要な金額に足りない場合は、第一種と第二種を併用できます。
ただし、併用する場合は、第一種・第二種の併用貸与に設けられた家計基準を満たす必要があります。
例えば、私立大学へ自宅外から通う場合、制度上は、次の金額を組み合わせることも可能です。
- 第一種:月6万4,000円
- 第二種:月12万円
この場合、毎月の貸与額は合計18万4,000円、4年間の貸与総額は883万2,000円になります。
違い5|返還方法
第一種・第二種奨学金では、選べる返還方法が異なります。
| 返還方法 | 第一種 | 第二種 |
|---|---|---|
| 所得連動返還方式 | 選択できる | 選択できない |
| 定額返還方式 | 選択できる | 選択できる |
所得連動返還方式
所得連動返還方式は、卒業後の所得などに応じて、毎月の返還額が変わる方法です。
選択できるのは、第一種奨学金のみです。
所得が少ない時期は毎月の返還額が少なくなり、所得が増えると返還額も増えます。
毎月の返還額が変わるため、返還が何年間続くかは、あらかじめ決まりません。
定額返還方式
定額返還方式は、借りた総額に応じて、毎月の返還額と返還期間が決まる方法です。
第一種・第二種のどちらでも選択できます。
返還期間を「10年」「15年」などから自由に選ぶ仕組みではありません。
第一種奨学金の定額返還例
| 貸与月額 | 4年間の貸与総額 | 返還期間 | 毎月の返還額 |
|---|---|---|---|
| 3万円 | 144万円 | 13年 | 約9,230円 |
| 5万円 | 240万円 | 15年 | 約1万3,333円 |
| 6万4,000円 | 307万2,000円 | 18年 | 約1万4,222円 |
第二種奨学金の定額返還例
以下は、第二種奨学金の基本月額に年3.0%の金利が適用された場合の返還例です。
| 貸与月額 | 4年間の貸与総額 | 返還総額 | 返還期間 | 毎月の返還額 |
|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 144万円 | 約176万円 | 13年 | 約1万1,293円 |
| 5万円 | 240万円 | 約302万円 | 15年 | 約1万6,769円 |
| 12万円 | 576万円 | 約775万円 | 20年 | 約3万2,297円 |
実際の金利は貸与終了時に決まるため、必ずこの返還額になるわけではありません。
第一種・第二種奨学金の注意点
注意点1|給付型奨学金を受けると第一種が減額される場合がある
給付型奨学金と第一種奨学金を併用する場合は、給付型奨学金の支援区分や進学先、通学方法などに応じて、第一種の貸与月額が調整されます。
第一種の月額が減額されるだけでなく、0円になる場合もあります。
なお、第二種奨学金は、この調整の対象ではありません。
注意点2|採用後も毎年、継続の確認がある
第一種・第二種奨学金は、一度採用されれば、卒業まで自動的に借り続けられるわけではありません。
原則として毎年、必要な手続きを行い、主に次の2つの面から継続できるか確認されます。
学業面の確認
学業成績や修得単位、卒業できる見込みなどが確認されます。
次のような場合は、奨学金が停止または廃止されることがあります。
- 成績が著しく悪い
- 修得単位が極端に少ない
- 卒業延期が決まった、またはその可能性が非常に高い
経済状況の確認
次のような収入と支出を確認し、今後も奨学金が必要か判断されます。
- 家庭からの援助
- アルバイトなどの収入
- 学費
- 生活費などの支出
給付型とは異なり、親の年収が一定額を超えたことだけで、自動的に貸与が終了する仕組みではありません。
注意点3|採用後も月額を変更できる
家庭の状況や必要な金額が変わった場合は、所定の手続きによって月額を増額・減額できます。
例えば、月5万円を借りていた人が、次のような変更を申請できます。
- 家計に余裕ができたため月3万円に減額する
- 自宅外通学になり支出が増えたため増額する
まとめ|第一種奨学金を利用するためにできること
無利子の第一種奨学金を利用するために、今からできることは、大きく分けて次の2つです。
1.高校入学後から評定平均3.5以上を意識する
第一種奨学金の予約採用では、原則として、高校入学後から申込時までの全履修科目の評定平均が3.5以上であることが求められます。
高校3年生になってから急に成績を上げようとしても、それまでの評定も平均に含まれるため、高校1年生の段階から意識しておくことが大切です。
2.家計基準に関係する所得控除を確認する
第一種奨学金には、学力基準だけでなく家計基準もあります。
ただし、第一種奨学金を利用するためだけに仕事を減らし、世帯収入を下げることはおすすめできません。
第一種奨学金を利用できれば第二種奨学金の利息を負担せずに済みますが、収入を減らすことによる家計への影響が、それを上回る可能性があるためです。
一方、利用できる所得控除が住民税に正しく反映されているかは確認しておきましょう。
例えば、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、生命保険料控除、配偶者控除や扶養控除など、対象となる所得控除の申告が漏れていると、住民税の課税標準額が本来より高くなり、家計基準の判定で不利になる可能性があります。
ただし、奨学金の基準を満たすために、不要な保険へ加入したり、無理に支出を増やしたりする必要はありません。あくまで、本来受けられる控除が正しく申告されているかを確認することが大切です。
なお、ふるさと納税や住宅ローン控除などの税額控除は、原則として第一種奨学金の家計基準を有利にするものではありません。
所得控除を正しく反映させても第一種奨学金の家計基準を満たさない場合は、無理に収入を減らすのではなく、第二種奨学金を検討しましょう。

1級FP 磯山裕樹