大学進学に必要なお金が不足する場合、次の順番で利用できる制度を確認しましょう。
- 給付型奨学金・授業料等減免
- 第一種奨学金
- 第二種奨学金または教育ローン
最初に確認したいのは、返済不要の給付型奨学金や授業料・入学金の減免制度です。
次に確認したいのが、無利子で借りられる第一種奨学金です。
給付型奨学金や第一種奨学金を利用できない場合や、それだけでは資金が不足する場合、主な選択肢として、次の2つがあります。
- 学生本人が有利子の奨学金を借りる
- 親が教育ローンを借りる
どちらも教育費を借りる方法ですが、同じものではありません。
奨学金と教育ローンでは、次の点が異なります。
- 誰が借りるのか
- いつ申し込むのか
- いつお金を受け取るのか
- いつから返すのか
- どのような費用に向いているのか
結論として、金利や返還開始時期を重視する場合は、教育ローンよりも第二種奨学金を優先して検討した方がよいと考えます。
その理由について、教育ローンと奨学金を比較しながら解説していきます。
第一種奨学金と第二種奨学金の違い、学力・家計基準、借りられる月額などについては、別の記事で詳しく解説しています。
目次
奨学金と教育ローンの違い
第二種奨学金と教育ローンの主な違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 第二種奨学金 | 教育ローン |
|---|---|---|
| 借りる人・返す人 | 学生本人 | 親 |
| 主な審査 | 学力・家計基準 | 親の収入・借入状況・信用情報など |
| 受け取り方 | 進学後に毎月振り込まれる | 必要額をまとめて受け取るのが基本 |
| 金利 | 有利子。基本月額は年3%が上限 | 国は固定金利、民間は固定または変動金利 |
| 返還・返済の開始 | 貸与終了後に返還 | 原則として借入後に返済 |
ここから、それぞれの違いを詳しく見ていきます。
違い1|誰が借りて、誰が返すのか
奨学金は学生本人が借りる
第二種奨学金を借りるのは、学生本人です。
卒業後は、子ども本人が返還します。
教育ローンは親が借りる
国の教育ローンや一般的な民間教育ローンは、親が借り、親が返済します。
親が返したい場合でも教育ローンとは限らない
「親が返済を負担したいから、教育ローンを借りる」と考える方もいるかもしれません。
しかし、誰が実際に返還資金を負担するかと、誰の名義で借りるかは、分けて考える必要があります。
第二種奨学金は学生本人名義ですが、卒業後の返還を親が援助することもできます。
ただし、親による援助は、税務上、子どもへの贈与として扱われる可能性があります。
子どもがその年に受けたほかの贈与も含め、1年間の贈与額の合計が110万円以下であれば、暦年課税では原則として贈与税はかからず、申告も必要ありません。
違い2|審査の基準
第二種奨学金には学力基準と家計基準がある
第二種奨学金は、申し込めば誰でも利用できるわけではありません。
主に、次の基準によって選考されます。
- 学力基準
- 家計基準
学力基準には、第一種奨学金のような「評定平均3.5以上」という一律の数値基準はありません。
ただし、学修意欲や卒業できる見込みが確認できない場合は、学力基準を満たさないことがあります。
また、家計基準もあり、世帯収入が一定の基準を超えると利用できない場合があります。
【JASSOが公表している世帯の給与収入の目安】
表の金額は、父母など生計維持者の給与収入を合計した世帯年収の目安です。
| 世帯の例 | 第一種 | 第二種 | 第一種・第二種の併用 |
|---|---|---|---|
| 学生・給与収入のある親1人 | 約761万円 | 約1,166万円 | 約706万円 |
| 学生・給与収入のある親1人・無収入の親1人 | 約716万円 | 約1,113万円 | 約661万円 |
| 学生・父母・中学生の4人世帯 | 約803万円 | 約1,250万円 | 約743万円 |
| 学生・父母・中学生・小学生の5人世帯 | 約905万円 | 約1,334万円 | 約841万円 |
国の教育ローンにも世帯年収の上限がある
国の教育ローンにも、扶養する子どもの人数に応じた世帯年収の上限があります。
給与収入の場合の目安は、次のとおりです。
| 扶養する子どもの人数 | 世帯年収の上限 |
|---|---|
| 1人 | 790万円 |
| 2人 | 890万円 |
| 3人 | 990万円 |
| 4人 | 1,090万円 |
| 5人 | 1,190万円 |
※扶養する子どもが1人または2人の場合でも、自宅外通学、勤続年数、借入金の返済負担など一定の要件を満たすと、世帯年収の上限が990万円まで緩和される場合があります。
民間教育ローンは金融機関によって異なる
民間教育ローンの利用条件は、金融機関や商品によって異なります。
一般的には、次の内容が確認されます。
- 収入
- 勤続年数
- 現在の借入状況
- クレジットカードやローンの返済状況
- 信用情報
違い3|いつ申し込めるのか
奨学金は募集時期が決まっている
JASSOの奨学金は、学校を通じて申し込みます。
高校在学中に申し込む予約採用や、大学進学後に申し込む在学採用がありますが、それぞれ募集時期が決まっています。
必要になったときに、いつでも自由に申し込めるわけではありません。
申込期限を過ぎると、希望する時期から利用できない可能性があるため、高校や大学からの案内を早めに確認することが大切です。
教育ローンは必要な時期に申し込める
教育ローンは、原則として必要な時期に申し込めます。
国の教育ローンは、志望校が決まった段階から申し込むことができ、合格前の受験費用にも利用できます。
日本政策金融公庫は、資金が必要になる2~3か月前の申し込みを勧めています。
ただし、申し込み後には審査があるため、入学金の支払期限直前に申し込んでも間に合わない可能性があります。
違い4|いつお金を受け取るのか
奨学金は進学後に毎月振り込まれる
第二種奨学金は、進学後、選択した月額が学生本人の口座へ毎月振り込まれます。
一方、進学前には振り込まれません。
入学金や前期授業料など、入学前に支払期限が来る費用には間に合わないことがあります。
教育ローンは必要額をまとめて受け取る
国の教育ローンや一般的な証書貸付型の民間教育ローンは、必要な金額をまとめて受け取ります。
そのため、次のような、入学前や入学時にまとまって必要になる費用にも対応しやすい制度です。
- 受験料
- 受験のための交通費や宿泊費
- 入学金
- 前期授業料
- 下宿の敷金や礼金
- 引っ越し費用
- パソコンや教材費
違い5|借りられる金額
第二種奨学金は毎月一定額を借りる
第二種奨学金は、大学の場合、月2万円から12万円まで、1万円単位で選択できます。
4年間借りた場合の元金は、次のとおりです。
| 月額 | 4年間の借入元金 |
|---|---|
| 5万円 | 240万円 |
| 8万円 | 384万円 |
| 10万円 | 480万円 |
| 12万円 | 576万円 |
第二種奨学金は、4年間分を一括して受け取る制度ではなく、選んだ月額が毎月振り込まれます。
国の教育ローンは原則350万円まで
国の教育ローンは、子ども1人につき原則350万円が上限です。
自宅外通学や一定期間以上の海外留学など、一定の要件を満たす場合は450万円まで利用できます。
ただし、350万円または450万円を毎年借りられるわけではありません。
現在の借入残高と新たに借りる金額を合計した金額が、融資限度額の範囲内である必要があります。
融資限度額の範囲内で複数回利用することはできますが、追加で借りる場合は、その都度申し込みと審査が必要です。
また、融資対象は、原則として今後1年間に必要となる費用です。
民間教育ローンは商品による
民間教育ローンの借入限度額は、金融機関や商品によって異なります。
国の教育ローンより高い限度額が設定されている商品もあります。
ただし、商品上の限度額まで必ず借りられるわけではありません。
実際の借入可能額は、親の収入やほかの借入状況などによって決まります。
違い6|金利
第二種奨学金は貸与終了時に金利が決まる
第二種奨学金は、借り始める時点では実際の金利が確定しません。
原則として、卒業などにより貸与が終了した時点の金利が適用されます。
ただし、基本月額については、年3%が金利の上限です。
第二種奨学金には、次の2つの方式があります。
| 金利方式 | 内容 | 2026年6月貸与終了者の金利 |
|---|---|---|
| 利率固定方式 | 貸与終了時に決まった金利が、返還完了まで変わらない | 年2.922% |
| 利率見直し方式 | 貸与終了時に決まった金利を、おおむね5年ごとに見直す | 年1.900% |
※第二種奨学金の金利は、2026年6月に貸与が終了した人に適用された金利です。現在借り始める学生の金利ではなく、実際には卒業などにより貸与が終了した時点で決まります。
教育ローンは借入時に金利が決まる
教育ローンは、実際に借り入れる時点で適用金利が決まります。
- 国の教育ローンは固定金利
- 民間教育ローンには固定金利と変動金利がある
国の教育ローンの金利は、2026年7月現在、固定年4.05%です。
一定の要件を満たす家庭には、年0.4%の金利引下げがあります。
民間教育ローンでは、取引条件やキャンペーンによって、低い金利が適用される場合があります。
例えば、中国銀行の公式サイトでは、2026年3月2日現在、最優遇金利は変動年2.350%、通常金利は変動年4.125%とされています。
ただし、低い金利には、次のような条件が付くことがあります。
- 営業地域
- 給与振込などの取引状況
| 借入方法 | 2026年7月時点の金利例 |
|---|---|
| 第二種奨学金・利率固定方式 | 年2.922%(2026年6月貸与終了者) |
| 第二種奨学金・利率見直し方式 | 年1.900%(2026年6月貸与終了者) |
| 国の教育ローン | 固定年4.05% |
| 中国銀行・教育ローン最優遇 | 変動年2.350% |
※実際の負担を比較する際は、金利だけでなく、保証料や返済期間も確認しましょう。
違い7|いつから返すのか
| 大学在学中 | 卒業後 | |
|---|---|---|
| 第二種奨学金 | 返還なし | 子ども本人が返還 |
| 国の教育ローン | 親が返済。または在学中は利息のみ支払う | 親が返済 |
| 民間教育ローン | 親が返済。または在学中は利息のみ支払える商品もある | 親が返済 |
奨学金は貸与終了後に返還が始まる
第二種奨学金は、大学在学中には返還が始まりません。
貸与終了月の翌月から数えて7か月目に返還が始まります。
一般的に、大学卒業と同時に3月で貸与が終了した場合は、同年10月から返還が始まります。
教育ローンは原則として借入後から返済が始まる
教育ローンは、原則として借入後から親の返済が始まります。
返済期間は最長20年です。
民間教育ローンにも、在学中は元金を据え置ける商品があります。
ただし、元金を据え置いている間も、利息の支払いは必要です。
据置期間中は元金が減らないため、借入後から元金を返済する場合より、最終的な利息負担は大きくなります。
第二種奨学金と教育ローン、どちらを優先する?
給付型奨学金や第一種奨学金を利用できない場合、または利用しても資金が不足する場合は、第二種奨学金と教育ローンを検討します。
金利や返還開始時期を重視する場合は、基本的に第二種奨学金を優先して検討するのが合理的です。
理由は、次のとおりです。
- 大学在学中は利息なし、返還も始まらない
- 基本月額の金利は年3%が上限
- 教育ローンより低金利になる可能性がある
ただし、第二種奨学金は学生本人の借金で、教育ローンは原則として親の借金です。
誰が返還・返済を負担するのかを、家族で話し合って決めることが大切です。
親が卒業後の返還を援助する予定であっても、必ず教育ローンを選ぶ必要はありません。第二種奨学金の方が低金利で、返還開始も遅いのであれば、学生本人が第二種奨学金を借り、卒業後の返還を親が支援する方法も考えられます。
一方、教育ローンを検討するのは、主に次のような場合です。
- 入学前に必要な資金が不足し、奨学金の振込みを待てない
- 第二種奨学金の基準を満たさない
- 第二種奨学金の貸与額だけでは不足する
- 第二種奨学金より明確に低い金利で借りられる
本来、入学金や前期授業料など、入学前に必要になるお金は、できるだけ進学前までに準備しておくことが基本です。
教育ローンは、事前に準備した資金では足りない場合や、奨学金を利用できない場合の補完手段として考えましょう。

1級FP 磯山裕樹