※この記事は2026年度制度に基づいています(2026年5月時点)
「私立高校は学費が高い。」
「私立高校は公立高校のすべり止め。」
そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、2026年度から国の就学支援金制度が拡充され、私立高校の授業料に対する支援が大きく変わりました。
その結果、私立高校は現実的な選択肢となり、学校選びの考え方も変わりつつあります。
今回は、
・国の「高等学校等就学支援金」はどう変わったのか
・授業料以外を支援する「高校生等奨学給付金」とはどのような制度か
・自治体や学校独自の支援制度にはどのようなものがあるのか
を整理し、「わが家では実際にどのくらいの教育費を準備しておけばよいのか」を考えるためのポイントをお伝えします。
目次
「高等学校等就学支援金」とは?
高校授業料の支援の中心となるのが、「高等学校等就学支援金制度」です。
ポイント
・日本全国の高校生向け制度
・授業料の一部または全部を支援
・学校へ支給され、授業料に充てられる
・返済不要
2025年度までの制度(改正前)
国公私立共通
・年間118,800円(所得制限なし)
私立高校等への加算
・私立高校:最大年間396,000円
※加算部分には所得制限があり、年収590万円程度未満(目安)の世帯が対象でした。
(両親の一方が働き、高校生1人・中学生1人の4人世帯モデル)

出典:文部科学省「高等学校等就学支援金・高校生等臨時支援金リーフレット」
2026年度から制度が拡充
2026年度から、私立高校向け就学支援金制度が大きく変わりました。
主な変更点
・私立高校向け支援の所得制限を撤廃
・支給上限を全国平均授業料相当まで引き上げ
支給上限
・私立全日制:年額457,200円
・私立通信制:年額337,200円(定額制の場合)

出典:高等学校等就学支援金 申請手続きリーフレット(新入生の例)
支給上限を超えると?
難関大学の附属校や設備の充実した私立高校では、授業料が年間70万〜80万円を超える学校もあります。授業料が高い学校では、支援上限を超える部分は自己負担になります。
(例)年間授業料70万円の学校の場合
70万円 − 45万7,200円
= 約24万円(自己負担)
対象となる人
・日本国内に住所を有していること
・高等学校等に在学していること
対象には、
・全日制
・定時制
・通信制
・中等教育学校後期課程
などが含まれます。
手続き
就学支援金は「自動適用」ではありません。
入学時の4月頃に学校から案内があり、申請が必要になります。
申請しないと支援を受けられないため、学校からの案内は必ず確認しましょう。

出典:高等学校等就学支援金 申請手続きリーフレット(新入生の例)
注意したい4つのポイント
注意したいポイントは次の4点です。
①自治体や学校独自の制度
②授業料以外のお金
③学校や家庭によって教育費は大きく変わる
④授業料以外を支援する「高校生等奨学給付金」
①自治体や学校独自の制度
高校授業料の支援制度は、国の制度のほかにも
・お住まいの自治体の支援制度
・希望する学校の奨学金や特待制度
があります。
自治体独自の上乗せ支援
自治体の制度は、「学校所在地」ではなく、保護者の住んでいる自治体を基準としているケースが多くあります。
(東京都の制度例)
・東京都在住で、都外私立高校に通う → 対象
・東京都外在住で、東京都内私立高校に通う → 対象外
同じ学校に通っていても、
「どこに住んでいるか」で負担額が変わることがあります。
また、
・所得制限
・支給額
・対象校
・申請方法
は自治体ごとに異なります。
居住地の自治体ホームページを確認しておきましょう。
【東京都】
国の就学支援金と東京都の授業料軽減助成金を合わせて、年額最大50万1,000円まで助成

出典:東京都「令和8年度私立高等学校等授業料軽減助成金」リーフレット
【大阪府】
国の就学支援金に府独自の補助を上乗せし、授業料を完全無償化
条件
・府内在住
・「就学支援推進校」に指定された対象校限定(2026年時点では、大阪府内私立高校の9割超)
【岡山県】
経済的理由により修学が困難な生徒向けの「私立高等学校納付金減免補助金」

出典:岡山県「私立高校生等への就学支援制度について」
学校独自の制度
私立高校では、学校独自の授業料減免や奨学金制度を設けているケースもあります。
たとえば、
・成績優秀者向け特待制度
・スポーツ推薦による減免
・兄弟姉妹在籍時の減額
などです。
【例】就実高校

気になる学校がある場合は、学校ホームページで「特待生制度」「奨学金制度」なども確認しておきましょう。
②授業料以外のお金
支援対象は「授業料」です。
以下のような費用は自己負担となります。
・入学金
・教材費
・制服代
・通学費(定期代など)
・修学旅行費
・学校行事費
・部活動費

出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」
仮に授業料が完全に無償化されたとしても、令和5年度の文部科学省調査によると、公立高校で約30万円、私立高校で約55万円の学校教育費が残ります。
【公立高校】
・学校教育費合計:351,523円
・うち授業料:45,272円
【私立高校】
・学校教育費合計:832,650円
・うち授業料:279,170円
授業料が完全に0円になったと仮定すると、
・公立高校:年間約30.6万円が残る
・私立高校:年間約55.3万円が残る
無償化はあくまで「授業料支援」であり、教育費全体がゼロになるわけではない点に注意が必要です。
③学校や家庭によって教育費は大きく変わる
さらに、必要な費用は、学校ごと・家庭ごとに大きく異なります。
学校によって大きく変わる費用
・授業料(自己負担分)
・入学金
・制服代
・教材費
・修学旅行費
これらは学校ごとの方針によって大きく異なります。
そのため、平均的な教育費を参考にしつつも、
最終的には「実際に検討している学校」の募集要項や納付金一覧を確認することが大切です。
(例)就実高校
【毎月かかる主な費用】
・授業料の自己負担:900円(月)※39,000円ー国の補助38,100円
・その他費用など:14,400円(月)
合計:15,300円(月)
【入学時にまとめてかかる費用】
・入学金など:約17万円
・制服、体操服、指定カバン、教材費、タブレット代など:別途必要
家庭によって大きく変わる費用
・通学費
・部活動費
・塾代
・任意参加の研修・留学費用
学校による差もありますが、通学方法や部活動、塾や留学への参加状況によって、家庭ごとの差が大きくなることもあります。
たとえば、
・自宅から学校までの通学定期券が年8万円
・部活動の遠征費、用具代などで年50万円
・週3日塾に通い、月7万円の月謝
・任意の海外研修の参加費用として50万円
・必須の研修旅行、追加の教材で年20万円
学校説明会で質問したり、実際に通っているご家庭の話を聞いたりすると、より具体的な費用感を把握しやすくなります。
④授業料以外を支援する「高校生等奨学給付金」
高等学校等就学支援金が「授業料」を支援する制度であるのに対し、
高校生等奨学給付金は、教科書代・教材費・学用品費など、授業料以外の教育費を支援する返還不要の給付金制度です。
| 項目 | 高等学校等就学支援金 | 高校生等奨学給付金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 授業料の負担を軽減 | 授業料以外の教育費を支援 |
| 支援対象 | 授業料 | 教科書代、教材費、学用品費、制服代など |
| 支給方法 | 学校へ直接支給 | 保護者等へ支給 |
| 返済 | 不要 | 不要 |
| 所得要件 | なし | あり |
対象となる人
・生活保護受給世帯
・住民税非課税世帯
・住民税所得割額の合算額が182,500円未満の世帯(目安:年収490万円未満の世帯)
年収490万円程度という表現が使われていますが、これはあくまでモデル世帯による目安です。
・両親のうち一方が働く
・高校生1人
・中学生1人
といった4人世帯を想定した場合の年収の目安です。
家族構成や扶養人数によって、同じ年収でも対象になる場合とならない場合があります。
支給額のイメージ
支給額は、
・公立か私立か
・世帯の所得状況
によって異なります。
私立高校の場合のイメージは次の通りです。

出典:高校生等奨学給付金リーフレット
申請方法
高校生等奨学給付金も、自動で支給されるわけではありません。
保護者が、
・お住まいの都道府県
・または学校
を通じて申請します。
子育て世帯のお金の使い方・進学の考え方はどう変わる?
2026年度からの制度拡充により、私立高校の授業料負担は大きく軽減されます。
これによってどう変わるのでしょうか?
「学費ありき」から「子どもに合う学校選び」へ
これまでは、学費の負担を理由に、公立高校を優先して考える家庭も多くありました。
制度拡充により、
「滑り止めとしての私立」から
「積極的に選ぶ私立」
へと考え方が変わる家庭も増えるかもしれません。
学校選びでは、
・教育方針
・通学環境
・部活動
・進学実績
・子どもの個性との相性
などを重視しやすくなります。
制度拡充によって選択肢が増えるからこそ、
「親が良いと思う学校」と「子ども自身が行きたい学校」のすり合わせ
がより重要になります。
実際に、志望校の説明会にできる限り参加し、親子で比較しながら進路を決めたご家庭もあります。子どもだけでは選択肢に気づくことが難しいため、親子で一緒に考えることはとても大切です。
まとめ
高校無償化によって、私立高校はこれまで以上に現実的な選択肢となりました。
ただし、無償化されるのは主に授業料であり、入学金や制服代、教材費、通学費などは引き続き必要です。
大切なのは、「無償化」という言葉だけにとらわれず、子どもにとって最適な環境かどうか、そして家計全体で無理なく続けられるかをバランスよく考えることです。
制度を正しく理解し、家族にとって納得のいく進路選択につなげていきましょう。





1級FP 磯山裕樹