「生命保険に入ると節税になると聞いて、たくさん保険に入っています。本では、控除を目的に保険に入ってはいけないと書かれていましたが、なぜでしょうか?」

書籍「夫婦貯金年150万円の法則」の読者から、P144~150の『おさえておくべき「控除」5選』の部分について、質問いただきましたので解説していきます。

生命保険料を支払っている人の税金がお得になる「生命保険料控除」という制度があります。
節税になるという表面的な情報をもとに、生命保険を契約し、損をしている人をこれまで見てきました。生命保険料控除があるから保険に入るは、間違いです。
今回は、生命保険料控除の概要や活用法をお伝えします。
YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約9分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。
生命保険料控除はなぜ節税になるのか?
税金は所得に税率をかけて計算します。「所得=収入-控除」なので、控除を増やすことができれば支払う税金が少なくなるということです。

控除の1つが「生命保険料控除」です。
「所得税って何?控除って何?」という人は、税金の基礎について理解した上で、続きを読んだほうが理解しやすいと思います↓↓↓
生命保険料控除とは
生命保険料控除とは、生命保険料を支払っている人の税金を優遇するよという制度です。
生命保険を契約した年月で控除の金額が異なり、2012年1月1日以後に結んだ契約を対象とする制度(新制度)と、2011年12月31日以前に結んだ契約を対象とする制度(旧制度)があります。

控除は3つに分かれており、それぞれ所得税と住民税の上限が決まっています。
一般生命保険料控除
一般生命保険料控除の対象は、死亡に基因して保険金が支払われる死亡保険などです。保険金受取人が契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である保険が対象です。

介護医療保険料控除
介護医療保険料控除の対象は、介護保険や医療保険、就業不能保険などです。保険金受取人が契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である保険が対象です。

個人年金保険料控除
個人年金保険料控除の対象は、主に老後の貯蓄のために利用される個人年金保険です。

次のすべての条件を満たす必要があります。
●「個人年金保険料税制適格特約」を付加されている
●年金受取人が契約者(保険料負担者)またはその配偶者のいずれか
●年金受取人は被保険者と同一人
●保険料払込期間が10年以上
●年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上
ただし、変額個人年金保険(保険料の運用実績に応じて将来受け取る年金額や死亡保険金などが変動するタイプの保険)は、一般生命保険料控除になります。
控除の額
その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ保険料がその年の控除の対象です。
新契約に基づく生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめると計算できます。
| 所得税 | 住民税 | ||
|---|---|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 20,000円以下 | 払込保険料全額 | 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 20,001円~ 40,000円 |
(払込保険料×1/2) +10,000円 |
12,000円超 32,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +6,000円 |
| 40,001円~ 80,000円 |
(払込保険料×1/4) +20,000円 |
32,000円超 56,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +14,000円 |
| 80,001円~ | 一律40,000円 | 56,000円超 | 一律28,000円 |
旧契約に基づく生命保険料と個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめてると計算できます。
| 所得税 | 住民税 | ||
|---|---|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 25,000円以下 | 払込保険料全額 | 15,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 25,001円~ 50,000円 |
(払込保険料×1/2) +12,500円 |
15,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +7,500円 |
| 50,001円~ 100,000円 |
(払込保険料×1/4) +25,000円 |
40,000円超 70,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +17,500円 |
| 100,001円~ | 一律50,000円 | 70,000円超 | 一律35,000円 |
生命保険料控除はいくらお得?
次の例の場合で、計算してみましょう。
課税所得:300万円(所得税率10%)
死亡保険:年間9万円(新制度)
医療保険:年間2万円(新制度)
個人年金保険:年間12万円(新制度)
所得税
まず、所得税についてみてみましょう。
死亡保険:年間9万円→一般生命保険料控除4万円
医療保険:年間2万円→介護医療保険料控除2万円
個人年金保険:年間12万円→個人年金保険料控除4万円
生命保険料控除の合計は10万円になります。
ただし、10万円が戻ってくるわけではなく、10万円控除されるので、お得になる所得税は「10万円×10%=1万円」となります。
住民税
同様に住民税も計算してみましょう。
死亡保険:年間9万円→一般生命保険料控除2.8万円
医療保険:年間2万円→介護医療保険料控除1.6万円
個人年金保険:年間12万円→個人年金保険料控除2.8万円
生命保険料控除の合計は7.2万円になります。しかし、住民税の生命保険料控除の限度額は7万円なので、お得になる住民税は「7万円×10%=7千円」となります。

お得になる税金
お得になる税金は、所得税・住民税合わせて1万7千円です。保険料を年間23万円支払って17,000円の節税効果しかありません。全額所得控除になるiDeCoや小規模企業共済と比べると節税メリットは少ないです。
たとえば、iDeCoに年間12万円拠出すると、今回の例と同じ所得税率10%の場合、12万円×20%(所得税10%+住民税10%)で2.4万円の節税効果です。個人年金保険に年間12万円支払っても、6.8万円×10%で6,800円の節税にしかなりません。

生命保険の節税効果は少ないです。生命保険控除を目的に生命保険に加入するのは、やめましょう。
まとめ
今回は、生命保険料控除の概要や活用法をお伝えしました。
生命保険の節税効果は少ないです。生命保険控除を目的に生命保険に加入してはいけません。
死亡保険や医療保険、介護保険、就業不能保険などの保険が必要であれば、保険料を支払い、生命保険料控除を活用しましょう。個人年金保険は、加入してしばらくの間元本割れになり、節税メリットが少ないので、老後のお金の準備をするためであれば、まずは、iDeCoや小規模企業共済などを検討しましょう。


















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