今日は「教育資金はどのように貯めたら良いですか?」という質問をいただきましたので、この前編では「教育資金を貯める3ステップ」について解説していきます。
教育費はかけようと思えばいくらでもかけれます。
教育資金を貯める上大切なことは、いくらかけるかを夫婦でしっかり話をしておくことです。
話し合うことは簡単なようですが、いざ生活が回らなくなりピンチになってから話し合う夫婦もみます。
自分がどんな教育を受けてきたなどにより夫婦でも価値観が違うこともよくあるので、夫婦で3ステップに沿って話をして実践していきましょう。
目次
教育資金を貯める3ステップ
教育資金を貯めるためには考える順番が大切です。
誰でもできる3ステップをお伝えしていきます。
ステップ1:いくら貯めるかを設定する
まず、教育費がいくらかかるのか把握しましょう。
教育費の総額には、学校教育費、学校給食費、学校外活動費が含まれます。
学校教育費は、授業料、修学旅行・遠足・児童会・生徒会費、PTA会費、その他の学校納付金(入学金を除く)、寄附金、教科書費・教科書以外の図書費学用品・実験実習材料費、教科外活動費、通学費、制服通学用品費などが含まれています。
学校外活動費は、塾やスポーツクラブの習い事にかかる月謝や物品購入費用などが含まれています。
幼稚園・保育園
公立の平均は、年間約17万円、3年間で約50万円です。
私立の平均は、年間約31万円、3年間で約100万円です。
現在、「幼児教育・保育の無償化」により、3~5歳児の子どもは原則無料となっています。
0~2歳児の保育園の利用料は前年の世帯所得、子供の人数、保育時間、自治体によって変わります。
僕が住んでいる岡山市の場合、世帯収入などにより0円~55,700円に区分されています。世帯収入が多い夫婦の場合、2歳までに保育園を利用する場合は意外とお金がかかります。
自治体ごとで異なりますので、自治体のHPをチェックしてみましょう。
認可外保育園の場合は、事業者が自由に決めることができるので、料金は保育園ごとに変わります。
小学校
公立の平均は、年間約35万円、6年間で約210万円です。
私立の平均は、年間約167万円、6年間で約1000万円です。
小学校は、公立か私立かでかなり費用が変わりますね。
学校教育費はもちろん、学校外活動費も差があります。私立に通うことができるご家庭は、学校外の活動費にかけるお金も多くなっています。
中学校
公立の平均は、年間約54万円、3年間で約160万円です。
私立の平均は、年間約144万円、3年間で約430万円です。
部活に入ると道具や服、部費も発生します。また、高校受験に向けて習い事も増える時期ですね。
「学校給食費は私立の方が安いの?」と思った方もいると思いますが、私立は給食がなく、昼食は食堂か持参弁当の場合があることが理由です。公立だと1食150円程度ですが、弁当や食堂を利用する場合は、それ以上にかかると思うので私立の方が費用はかかりますね。
高校
公立の平均は、年間約51万円、3年間で約150万円です。
私立の平均は、年間約105万円、3年間で約320万円です。
高校の授業料は、家族構成によって異なる所得基準の条件を満たすと無償化されているので、条件にあてはまるかどうかで変わってきます。無償化の対象は授業料のみなので、その他の費用はかかります。
大学
国立は、4年間で約250万円です。
私立だと、学部により異なります。
私立文系の平均は、4年間で約400万円です。
私立理系の平均は、4年間で約550万円です。
私立医歯系の平均は、6年間で約2400万円です。
大学になると、入学金や授業料の他に、下宿代などの仕送りを考える必要があります。
『日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」』によると、自宅外通学者への仕送り額の平均は、年間平均95.8万円(月額7.9万円)となっています。
約10%が仕送りなし、約15%が150万円以上になっているように、各家庭により差がありますね。
国立大学は250万円、私立文系だと400万円になり、その差は4年間で150万円です。国立大学は各県1つか2つです。県外の国立大学に行く場合、家賃や食費などの仕送り、国立大学に入るまでの塾代などお金がかかります。月8万円仕送りをすると年間約100万円となり、4年間で約400万円になります。実家から近い、私立大学に行く方や費用面では安くなりますね。
出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」より
大学に行くことで生涯年収が7000万円変わる!?
ユースフル労働統計2021によると、高卒の男性の生涯賃金の平均が2億6000万、大学、大学院卒は3億3000万となっています。大学に行くことで7000万収入増やせるということです。あくまで平均なので必ずではないですが、まだまだ日本では学歴で賃金が決まっている面もあると思います。
子供が大きくなってからお金を残したり贈与したりするより、小さい頃に教育費をかけてお金を稼げる可能性を上げる方が有効かも知れません。
教育資金を考える上でのポイント
ここまでで教育資金がどのくらいかかるかざっくりとしたイメージをつかめたと思います。
次に、教育資金にいくらかけるかを考える上でのポイントをお伝えします。
ポイント①平均データはあくまで参考として活用
あくまで平均なので、行きたい学校が決まっていれば、いくらかかるか調べてみましょう。また、学校外活動費について、習い事が多い家庭はもっとお金がかかるので注意してくださいね。
平均はあくまで目安としてご自身の家庭はどれくらい準備するか考えてみましょう。
ポイント②どこまで出してあげるか決める
親は公立に進んでもらいたいと思っていても、受験で公立に落ちてしまい私立に行くことになった時や子供が何か理由があり私立に進みたいと言われた時に、そのお金を出してあげるかどうかを考えておくことです。
どこまで出してあげるかを考え、一番お金がかかる進路を想定して目標額を決めていくと良いと思います。
ポイント③奨学金を利用するかどうか
奨学金の利用の有無によっても準備しておく金額が変わります。
老後にお金を借りる場合、有利な借金はないです。老後資金が足りなくなるのであれば、奨学金を借りて子供に返済してもらうことも選択肢の一つです。
公立に進学する費用は親が準備し、それ以上は奨学金を活用するという考え方もあると思います。私立に行くなら、成績優秀の学費免除があればという条件にしている家庭もあります。
奨学金には、様々な種類があり、大学独自や民間、自治体の奨学金もあります。
中には、返済が不要な奨学金もあります。
僕のご相談者の中には、高校生のお子様が自分で奨学金を調べ、「この奨学金に応募したい」と言ってきたそうです。応募したところ、返済不要の奨学金を活用できたので、大学費用がほとんどかからなかったという方もいます。
知らないだけで活用できる奨学金があるかもしれないので、気になる方は調べてみましょう。
お金を借りる方法も、子供が社会人になって自分で返済していく奨学金と親が返済する教育ローンがあります。教育ローンは、金利が高く、大学卒業後は老後資金を貯める期間なので、できれば避けたい方法ですね。
ポイント④子供は望んでいるか?親のエゴか?
家計が苦しくてご相談に来られる方でよくあるのが、子供の教育費にかなりお金をかけていることです。聞いてみると、小さい頃からいろいろ体験した方が将来のためになると親は言っていますが、お子様本人に聞くとイヤイヤ行かされていることもあります。
磯山家もありました。次男に体操を習わせていたのですが、毎回その時間になると「行きたくない」というのですが、頑張ったらお菓子などのご褒美をちらつかせて継続していました。逆上がりもできるようになり、子供の成長が嬉しくて、親が習ってほしい気持ちを優先して、子供の気持ちを考えていませんでした。子供と話をすると、公園で遊んだり、旅行に行ったりしたいとのことでした。
子供の将来のことを考えての行動でも、子供が望んでいないこともあるので、限られたお金をどのように使うか子供とも話をしましょう!
教育費に総額いくら準備する?
平均で考えるとオール公立で約800万円、オール私立で約2200万円~4000万円かかります。
あなたの家庭ではいくら教育資金を準備するか考えましょう!
ステップ2:いつまでに貯めるか決める
教育資金の王道の貯め方は、児童手当と積立貯蓄を活用することです。
児童手当の総額約200万円と0歳~8歳(小学生2年生)まで月1万円を積立して96万円、合計約300万円の資金になります。国立大学分は準備できる金額です。
児童手当の総額約200万円と0歳~18歳(高校3年生)まで月1万円を積立して216万円、合計約420万円の資金になります。私立文系分は準備できる金額です。
毎月1万円ならなんかいけそうな気がしませんか?
児童手当は総額約200万
子どもが生まれた時から、中学校を卒業するまでにもらえる児童手当をすべて貯蓄にまわすと約200万円になります。シンプルな方法なので、実践しやすいと思います。また、2024年10月から児童手当が変更になり拡充する予定です。
児童手当以外は先取り貯蓄
おすすめは、必要な時に合わせてコツコツ貯めるのではなく、前倒しで貯めるやり方です。
前倒しで貯める理由は次の2点です。
前倒しで貯める理由①目標とした期間までに貯められなくても余裕がある
理想は小学校2年生までに貯めるのがベストだと思います。
小学3年生くらいから塾やスポーツなど習い事のお金がかさんでくると言われているので、お金がかかりづらい小学校2年生までに貯めておくことがおすすめです。
仮に小学校2年生までの目標に間に合わなくても、まだ時間がありますので、再度計画を立て直すこともできます。
前倒しで貯める理由②教育費のことを考えなくていいので、気持ちが落ち着いて生活ができる
子供から「○○できるようになりたい!そのために、○○学校に行きたい!○○を習いたい!」と言われた時、お金がないからダメと言えるでしょうか?
自分のことを我慢してでも子供のためにお金を出してしまいますよね。
お金を出すと言ったはいいが、日々、「お金が足りない・・」という思いが頭の片隅にあると、何をするにもお金のことを考えてしまい疲れてしまいます。子供の教育費を前倒しで準備できたら、お金の心配をせず、子供との時間を楽しむことができます。
高校まで公立、大学は私立理系を想定した場合
高校まで公立を想定した場合は、高校まではそこまで大きな出費にならないので日々の生活費で支出し、大学はまとまったお金が必要なのでそこは別で準備する方法がよいと思います。
高校までで私立を選択する場合は、候補となる私立学校の費用をまずは調べて、その額を計画的に準備しましょう。
例えば、7歳と4歳の2人の子供がいて、末子が12歳(小学6年生)までに私立理系550万円の2人分1100万円を準備する計画をたてるとします。現在教育資金のために準備できているお金は300万円、児童手当の見込みが400万円とすると、残りは400万円になります。
400万円を8年で準備するためには毎月42,000円の先取り貯蓄が必要になります。
いつまでにいくら貯めるかを夫婦で話し合って決めましょう。
先取り貯蓄できる額が足りない場合は?
希望の進学イメージに対して、月々準備するお金が足りない場合は、お金をどこかからか持ってくる必要があります。
自分が我慢する、もっと節約するなどの方法に偏る傾向がありますが、家族での話し合いや使える制度を上手に活用してみましょう。
収入を増やす
専業主婦(夫)の方が、パートや正社員で働くことも選択肢です。
子供との時間も大切にしたいという方は、自宅でできる仕事をするという選択肢もあります。
僕の母は、専業主婦だったのですが、空いている時間で内職や新聞配りをしてくれていたことを覚えています。
子供との過ごす時間も大切にしながら、お金も準備してくれた母に感謝しています。
習い事や勉強方法を見直す
子供自身に進路にかかるお金を意識してもらい、必要な習い事と見直せる習い事を一緒に話し合いをしましょう。
例えば、塾から通信講座に変更するなどです。僕自身も高校3年生の時に塾に通わせてもらっていました。母が頑張って家で働いているのを見ており、そんなにお金をかける訳にはいかないので、不得意な国語だけにしぼりました。また、塾に通いたい最大の理由は、家で勉強がはかどらなかったことでした。なので、自習室が無料で使える塾を選択しました。何にどれだけお金をかけるか、親子で話をしてみましょう。
進学先を検討する
小学受験を中学受験に変更するなど入学時期を遅らせたり、国立大学付属の小中高、公立の中高一貫校など志望校を変更も選択肢です。
なぜ今の進路を希望しているのか、その希望はその学校でしか叶えることができないのか、もう一度考えてみましょう。
祖父母に教育資金贈与をお願いする
お金を贈与する場合は、一般的には一定のラインを超えると贈与税が発生します。
しかし、祖父母が孫の入学金や授業料をその都度出してあげるなど、教育費をその都度贈与する場合は非課税です。
また、教育資金を1500万円までの贈与であれば、非課税になる制度もありますので、祖父母にお願いできる場合は活用しましょう。
教育費の支援制度を活用
ひとり親世帯などで教育費の準備が困難な場合は様々な教育費の支援制度が準備されています。
それぞれ使える条件は違いますが、条件に当てはまる場合は活用していきましょう。
代表的なものは下記のような支援制度があります。
●小・中学校「就学援助制度」
●高校「高等学校等就学支援金制度」
●大学以降「奨学金制度」
志望校の特待生制度や民間の奨学金制度もあるので調べてみましょう。
ステップ3:どうやって貯めるかを決める
教育資金の貯め方は大きく3つあります。
預金、保険、投資です。
貯める上でのポイントは安全性、物価上昇の対応、仕組化です。
それぞれにメリット、デメリットがあるので、自分自身に合った方法で実践していきましょう。
ポイント①安全性|子供が大学入学時に必ず必要なお金
ドルの貯蓄保険、変額保険やNISAで教育資金を積立している方は意外と多いです。
その理由を聞いてみると、「銀行に預けるより増えそうだから」「インスタなどSNSで皆やっているから」「友人や金融機関の方にすすめられたから」という方が多いです。
このやり方は、資産運用の基礎知識と自分が加入している投資商品をきちんと理解している方がとれる方法です。
例えば、ドルの貯蓄保険で今の為替のままだと、10年間で300万積立したお金が1.2倍の360万円になりますよと言われたとします。
皆さん60万円増えるのでいいなと思い加入していませんか?
そう単純な話ではないです。2023年6月現在1ドル=約140円ですが、過去1ドル=約75円になったこともあります。
300万円積立したお金が1.2倍の360万円になりますが、為替の影響で約360万円の半分の約180万円になる可能性もあります。
将来のことは分からないので、為替はどうなるかは分かりません。これから為替が自分が有利な方に進んでいくと想定されているなら良いと思いますが、そうでない方は資産運用の基礎知識と自分が加入している投資商品をきちんと理解してから加入しましょう。
株式やドルの資産など変動するお金で教育資金を貯める場合は、大学入学時にしっかりお金を準備できるようにしておく必要があります。
大学入学時に株式の暴落、ドル資産で貯めていて円高で目減りして、お金が準備できなかったということはないようにそこまで考えて準備しましょう。金融商品を勧めてくれた金融機関や友人は、そうなったしても助けてはくれません。
教育資金は学資保険がおすすめ?
財形や預金ではお金をよけるだけで、金利もほとんどつかないという理由で、安全性も重視して学資保険の活用している方は多いと思います。
学資保険を利用する際に2つの注意点があります。
1つ目は、学資保険はドアノック商品と言われていて、販売してもあまり利益が出ない商品なので、お客様との接点を生むツールとして活用されています。学資保険をフックに無駄な保険を売られるリスクがあるので、無駄な保険に入らないようにすることが大切です。
2つ目は、保険会社が破綻した場合、解約して戻ってくるお金の最大9割しか返ってこないということです。最大9割なので、過去保険会社がつぶれて貯蓄保険の解約して戻ってくるお金が半分くらいになった事例もあります。大企業もいつ破綻するか分からない変化の激しい時代になっていますので注意しておきましょう。
ポイント②物価上昇の対応を考える
教育費はインフレが進行しやすい分野です。
例えば、国立大学の年間の授業料の推移も見てみましょう!
1975年の年間授業料は36,000円です。
2017年の年間授業料は535,800円です。
約15倍です!
1975年では、20万円あれば、4年間の授業料を払うことができますが、
2017年では、20万円あっても、1年の授業料も足りないですね。
お金をそのままにしておくと買えたものが買えなくなるということです。
お金は枚数で管理するのではなく、価値で管理することが大切です。
1枚2枚と管理するのではなく、何と交換できるかが重要ですね!
物価上昇(インフレ)からお金の価値を守るためには、預金ではなく保険や株式など資産運用が選択肢になります。
預金や安全性が高い方法ですが、物価上昇には対応できないのがデメリットです。
また、18年後の大学費用は上昇している可能性もあるので、ぎりぎりではなく、余裕を持って準備しましょう。
ポイント③仕組化+○○が大切
今月は余裕があるから5万円、今月は余裕がないから1万円というように気持ちにまかせていると貯まりません。気持ちが入らないように自動的に仕組化をする先取り貯蓄がおすすめです。
預金の場合、銀行の自動積立預金や会社の一般財形貯蓄を活用できます。
保険の場合、保険料の支払いは自動引き落としです。
投資の場合、自動積立設定ができます。
どの方法でも仕組化はできますが、よくあるお悩みは、先取り貯蓄をしても、結局使ってしまってと貯まらないということです。
子供の大学費用のために先取り貯蓄をしていたが、日々の生活が苦しくなって途中で引き出してしまった、車を購入するために使ったなど、お金使うことが悪いことではないですが、仕組化をしてもそもそものお金がなければ続かないということです。
家計改善をして、貯蓄できるお金を増やすことが大切です。
仮に、家計改善が約30万円できると、30万円×18年=540万円になります。
実はこれだけで私立理系大学に行けるくらいのお金を準備することができます。
まとめ
「教育資金を貯める3ステップ」について解説しました。
教育資金を貯める方法は様々な選択肢があります。
正解もありません。ご自身に合った方法で実践していきましょう。
後編は、「具体的にどう実践するの?」ということで、僕自身の実践方法についてお伝えしていきます。
コメント
COMMENT