「会社で企業型DCに入っています。追加で積み立てるなら、マッチング拠出とiDeCoのどちらがいいですか?」
面談でよくいただく質問です。
以前は、「iDeCoの方がたくさん積み立てられるからiDeCo」
という考え方が一般的でした。
しかし、2026年の制度改正によって、状況は大きく変わります。
結論から言うと、基本はマッチング拠出でよいと思います。ただし、すべての人にマッチング拠出が有利というわけではありません。
企業型DCで選べる商品や、すでにiDeCo口座を持っているかどうかによって、iDeCoを検討した方がよいケースもあります。
では、なぜ基本はマッチング拠出でよいと考えるのか。
この記事では、2026年の制度改正を踏まえて、マッチング拠出とiDeCoのどちらを選べばよいのかをわかりやすく整理します。
目次
2026年の制度改正で何が変わった?
これまではマッチング拠出に
「会社掛金以下しか拠出できない」
という制限がありました。

例えば会社が毎月5千円拠出している場合、自分も5千円までしか追加できませんでした。
そのため、「もっと積み立てたい」
という人はiDeCoを利用するケースが多くありました。
しかし2026年4月以降は、この制限が撤廃されました。
さらに2026年12月からは、
iDeCoとマッチング拠出のどちらを利用する場合も、企業年金全体の上限62,000円の範囲内で積み立てる仕組みに変わります。
そのため以前のように、
「もっと積み立てたいからiDeCoを選ぶ」
というケースは、基本的に考えなくてよくなりました。
なお、
・掛金は全額所得控除
・運用益は非課税
・受取時も税制優遇あり
という税制メリットはどちらも同じです。

同じ金額を積み立てる前提で考えると、掛金が所得控除になる点や運用益が非課税になる点は、マッチング拠出もiDeCoも変わりません。
そのため、今後は「手数料」と「商品ラインナップ」を比較することが重要になります。
手数料の違い
マッチング拠出は企業型DCの仕組みを利用するため、追加の口座管理手数料はかかりません。
一方、iDeCoでは掛金を拠出している間、口座管理手数料が発生します。
ここで重要なのは、
すでにiDeCo口座を持っているかどうかです。
iDeCo口座を持っていない人
新たにiDeCoを始める場合、
国民年金基金連合会と信託銀行への手数料として年間約2,000円かかります。
さらに、
・申込書の取り寄せ
・勤務先への証明書依頼
・口座開設手続き
などの手間も発生します。
すでにiDeCo口座を持っている人
マッチング拠出を選んだとしても、iDeCo口座は原則として残ります。
そのため、運用指図者(拠出はしないが運用だけ継続する)として年間約800円の管理手数料がかかり続けます。
商品の違い
定期預金や元本確保型商品で運用する場合は、信託報酬がかかりません。
そのため、
定期預金を選ぶならマッチング拠出がおすすめです。
比較が必要になるのは投資信託で運用する場合です。
例えば企業型DCで採用されている商品の一例として、
「DCダイワ外国株式インデックス」があります。
信託報酬は約0.275%です。
信託報酬とは、投資信託を持っている間にかかるコストのことです。
一方、iDeCoには同じ先進国株式に投資する低コスト商品があります。
例えば、「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の信託報酬は約0.099%です。
差は約0.18%あります。
一見すると小さな差ですが、20年、30年と積み立てると無視できない差になることがあります。
オルカンが選べない企業型DCでも問題ない?
企業型DCでは、
・オルカン(全世界株式)
・S&P500
などの人気商品がなく、
外国株式インデックスしか選べないケースも少なくありません。
しかし、外国株式インデックスは先進国株式に投資する商品です。
オルカンとの違いは、主に新興国株を含むかどうかです。
もちろん、全世界に幅広く分散したい方にとってはオルカンを選びたい場面もあります。
ただ、企業型DCで低コストの外国株式インデックスを選べるなら、老後資金づくりの選択肢としては十分検討できます。
そのため、「どうしてもオルカンで運用したい」という方以外は、過度に気にしすぎなくてもよいと思います。
実際にはどのくらい差が出る?
ここでは、2つのケースで比較してみます。
1つ目は、iDeCoの方が有利になりやすいケースです。
2つ目は、マッチング拠出の方が有利になりやすいケースです。
ケース1:iDeCoが有利になりやすいケース
Aさん、40歳のケースです。
・企業型DCの会社掛金:10,000円
・企業年金全体の上限:62,000円
・追加で積み立てられる金額:52,000円
・毎月52,000円を追加で積立
・企業型DCで「DCダイワ外国株式インデックス」を選択予定
・運用期間:20年
・年率5%で運用
比較する商品は、以下のとおりです。
| マッチング拠出 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 商品 | DCダイワ外国株式インデックス | たわらノーロード先進国株式 |
| 信託報酬 | 年0.275% | 年0.09889% |
このケースでは、iDeCoで選ぶ商品の方が、信託報酬が低くなっています。
すでにiDeCo口座を持っている人の場合、マッチング拠出を選んでもiDeCo口座は残ります。そのため、口座を持っているだけでかかる月66円の手数料は、どちらを選んでもかかる共通コストとして考えます。
一方で、iDeCoで掛金を出す場合は、追加で手数料がかかります。
ここでは、2026年12月以降の手数料である月120円を反映します。
| 状況 | 比較で見る手数料 |
|---|---|
| すでにiDeCo口座がある人 | 追加で増える月120円を考える |
| iDeCo口座を持っていない人 | 月186円 |
この条件で試算すると、20年後の資産額は次のようになります。
| マッチング拠出 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 毎月の掛金 | 52,000円 | 52,000円 |
| iDeCoで増える手数料 | なし | 月120円 |
| 実際に運用に回る金額 | 52,000円 | 51,880円 |
| コストを差し引いた後の利回り | 年4.725% | 年4.90111% |
| 20年後の資産額 | 約2,071万円 | 約2,108万円 |
このケースでは、iDeCoの方が約37万円多くなる試算です。
毎月の積立額が大きいと、商品のコスト差も結果に出やすくなります。
そのため、iDeCoの月120円の手数料を差し引いても、低コスト商品のメリットが上回ります。
ケース2:マッチング拠出が有利になりやすいケース
Bさん、40歳のケースです。
・iDeCo口座は持っていない
・企業型DCの会社掛金:10,000円
・企業年金全体の上限:62,000円
・追加で積み立てられる金額:52,000円
・毎月52,000円を追加で積立
・企業型DCで「野村外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI」を選択予定
・運用期間:20年
・年率5%で運用
比較する商品は、以下のとおりです。
| マッチング拠出 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 商品 | 野村外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI | たわらノーロード先進国株式 |
| 信託報酬 | 年0.09889% | 年0.09889% |
このケースでは、企業型DCで選ぶ商品とiDeCoで選ぶ商品のコストがほぼ同じです。
つまり、iDeCoを使っても、商品コストの面では大きな差が出ません。
一方で、iDeCoを新たに使う場合は、手数料がかかります。
2026年12月以降の手数料で見ると、
・掛金を出すときの手数料:月120円
・口座を管理するための手数料:月66円
合計で、月186円です。
この条件で試算すると、20年後の資産額は次のようになります。
| マッチング拠出 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 毎月の掛金 | 52,000円 | 52,000円 |
| iDeCoの手数料 | なし | 月186円 |
| 実際に運用に回る金額 | 52,000円 | 51,814円 |
| コストを差し引いた後の利回り | 年4.90111% | 年4.90111% |
| 20年後の資産額 | 約2,114万円 | 約2,106万円 |
このケースでは、マッチング拠出の方が約8万円多くなる試算です。
企業型DCでも低コストの商品を選べる場合、iDeCoを使っても商品コストの差はほとんどありません。
そのため、iDeCoの手数料分だけ、マッチング拠出の方が有利になりやすくなります。
さらに、iDeCoを新たに始める場合は、最初に加入時手数料もかかります。
そのため、実際にはマッチング拠出との差はもう少し広がります。
私ならこう考える
私なら、まず企業型DCで選ぶ予定の商品を確認します。
マッチング拠出とiDeCoは、税制メリットに大きな差はありません。
また、iDeCoには手数料がかかりますが、差が出やすいのはむしろ商品のコストです。
そのため、まずは企業型DCで選ぶ商品の信託報酬を調べます。
そして、iDeCoで買える類似商品と比べます。
商品のコスト差が小さいなら、手続きが簡単なマッチング拠出でよいでしょう。
一方で、企業型DCの商品コストが高く、iDeCoで低コストの商品を選べる場合は、iDeCoも検討します。
iDeCoの開設や手続きは少し面倒ですが、長く運用する場合は、商品のコスト差が手数料負担を上回ることもあります。
なお、企業型DCの商品ラインナップは、将来ずっと同じとは限りません。
今はiDeCoの方が低コストに見えても、その差が今後も続くかどうかは分かりません。
iDeCoを新たに始める場合は、加入時手数料や口座開設の手間に加えて、将来マッチング拠出に切り替えた場合でも、iDeCo口座を残すなら管理手数料がかかる点も考えておきましょう。
迷ったら、企業型DCで選ぶ予定の商品名を入れて、ChatGPTでシミュレーションしてみるのも一つの方法です。
迷ったらChatGPTでシミュレーションしてみる
マッチング拠出とiDeCoのどちらが有利かは、勤務先の企業型DCで選べる商品、iDeCoで選べる商品、口座管理手数料、積立額、運用期間によって変わります。
自分で細かく計算するのが難しい場合は、ChatGPTなどを使って、条件を入れて試算してみるのも一つの方法です。
例えば、次のように質問すると比較しやすくなります。
iDeCo口座をすでに持っている場合
企業型DCでは「〇〇」という商品に投資しています。
現在、○○証券でiDeCo口座を持っています。
追加で積み立てる場合、マッチング拠出とiDeCoのどちらが有利かを比較してください。
iDeCoで購入できる類似商品との信託報酬の差、口座管理手数料の差も考慮してください。
比較にあたっては、以下を考慮してください。
•企業型DC商品の信託報酬
•○○証券iDeCoで購入できる類似商品の信託報酬
•○○証券iDeCoの口座管理手数料
•すでにiDeCo口座を持っており、今後も口座を残す前提のため、拠出しなくても発生する運用指図者手数料は共通コストとして除外
•iDeCoに追加拠出することで増える手数料のみを差額計算に反映
•マッチング拠出とiDeCoの所得控除メリットは同じ前提とし、今回は運用コストと手数料の差に絞って比較
試算条件は以下です。
•毎月○○円
•〇歳から〇歳まで
•年率〇%で運用
•信託報酬控除後の利回りで比較
•終了年齢時点の概算額と差額を教えてください
なお、マッチング拠出で毎月○○円を全額拠出できるかは、勤務先の会社掛金や制度上限によって変わるため、必要であればその点も注意点として補足してください。
最後に、
•コスト面ではどちらが有利か
•差額が実務上どの程度重要か
•どのような場合にiDeCoを選ぶ余地があるか
をわかりやすく結論としてまとめてください。
iDeCo口座を持っていない場合
企業型DCでは「〇〇」という商品に投資しています。
現在、iDeCo口座は持っていません。
追加で積み立てる場合、マッチング拠出とiDeCoのどちらが有利かを比較してください。
iDeCoで購入できる類似商品との信託報酬の差、口座管理手数料の差も考慮してください。
比較にあたっては、以下を考慮してください。
•企業型DC商品の信託報酬
•iDeCoで購入できる類似商品の信託報酬
•iDeCoの加入時手数料
•iDeCoの口座管理手数料
•マッチング拠出とiDeCoの所得控除メリットは同じ前提とし、今回は運用コストと手数料の差に絞って比較
試算条件は以下です。
•毎月○○円
•〇歳から〇歳まで
•年率〇%で運用
•信託報酬控除後の利回りで比較
•終了年齢時点の概算額と差額を教えてください
なお、iDeCoを新たに始める場合は、金融機関によって選べる商品や手数料が変わります。比較する際は、候補となる金融機関名も入れてください。
また、マッチング拠出で毎月○○円を全額拠出できるかは、勤務先の会社掛金や制度上限によって変わるため、必要であればその点も注意点として補足してください。
最後に、
•コスト面ではどちらが有利か
•差額が実務上どの程度重要か
•iDeCoを新たに始めてもよいケースはどのような場合か
をわかりやすく結論としてまとめてください。
このように質問すれば、自分が加入している企業型DCの商品や、積み立てる金額に合わせて、マッチング拠出とiDeCoを比較しやすくなります。
ただし、ChatGPTの回答はあくまで試算です。実際には、勤務先の企業型DCの制度内容、会社掛金、iDeCoの拠出限度額、金融機関の手数料などを確認したうえで判断しましょう。
まとめ
2026年の制度改正後は、マッチング拠出とiDeCoを比べるポイントが変わります。
以前は、
・マッチング拠出は会社掛金以下まで
・もっと積み立てたい人はiDeCo
という考え方がありました。
しかし、2026年改正後は、マッチング拠出の「会社掛金以下」という制限がなくなりました。
そのため、これからは積立額だけでなく、次の3つを比べることが大切です。
・企業型DCで選べる商品のコスト
・iDeCoで選べる商品のコスト
・iDeCoにかかる手数料
企業型DCで低コストの商品を選べるなら、基本はマッチング拠出。
企業型DCの商品コストが高いなら、iDeCoも比較。
この順番で考えると、自分に合った選び方がしやすくなります。

1級FP 磯山裕樹