4〜6月、残業は抑えるべき?1年が決まる社会保険料の判断軸を1級FPが整理

4〜6月の働き方で、その後1年間の社会保険料が変わります。

「残業はしないほうがいい」
そんな話を聞いたことがあるかもしれません。

でも本当に大切なのは、
損か得かではなく、

・手取りを優先するのか
・将来の給付や年金を整えるのか

という“判断”です。

増やすより、整える。
安心して暮らせる家計設計を一緒に考える、1級FPの磯山です。

今回は、
・なぜ4〜6月が基準になるのか
・どんな人が気にすべきか
・家計としてどう判断するか

一緒に整理していきましょう。

YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約10分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。

4・5・6月は残業しないほうがいい?

答え:人による

正確には、

・社会保険料を抑えたい人→ 4〜6月の残業は気にしたほうがいい場合あり
・出産手当金・傷病手当金を重視する人→ むしろ残業が有利になる場合もある

なぜこんなことが起きるのでしょうか?

なぜ4・5・6月が特別なの?

理由は「定時決定」というルールです。

会社員の社会保険料は、毎年1回、4月・5月・6月の給与の平均で決まります。そして、9月〜翌年8月まで1年間固定されます。

出典:公立学校共済組合「定時決定案内」

つまり、「4〜6月に残業が多い→給与平均が上がる→標準報酬月額が上がる→1年間、社会保険料が高くなる可能性がある」という構造です。ただし、残業が多いからといって、必ず社会保険料が上がるわけではありません。

どうしてこうなるのか、標準報酬月額の仕組みが関係してきますが、詳しく話をするとややこしくなるので、今回はざっくりお伝えしていきます。

どれくらい変わる?

標準報酬月額は、毎月の給料をいくつかの金額帯(等級)に当てはめて決める仕組みです。

標準報酬月額は、以下の4つのケースで決定されます。

・定時決定
・随時改定
・育児休業等を終了した際の改定
・資格取得時の決定

今回は、最も一般的な決め方「定時決定」をざっくりお伝えします。

定時決定の仕組み

1.4月・5月・6月の3か月の給与を集めて平均する
2.その平均をもとに、標準報酬月額を決定する
3.決まった標準報酬月額は その年の9月〜翌年8月 のすべての月に適用される

こちらが岡山県の標準報酬月額の表です。たとえば、報酬月額(実際の給与)が195,000円以上~210,000円未満の人は、17等級(月額20万円)として社会保険料の支払いをします。

出典:全国健康保険協会HP

たとえば、4〜6月の平均給与が20万円 → 21万円に上がった場合、等級が1段階上がるので、
・健康保険料 10,170円→11,187円 (+1,017円)
・厚生年金保険料 18,300円→20,130円 (+1,830円)
となり、年間34,164円の差になります。

でも「上がる=損」とは限らない

ここが重要です。

標準報酬月額は、社会保険料の基準になるだけでなく、
・出産手当金
・傷病手当金
の計算基準にもなります。

つまり、「標準報酬月額が高い=給付金も高くなる」という側面があります。

先ほどの例で、4〜6月の平均給与が20万円 → 21万円に上がった場合、等級が1段階上がるので、年間34,164円の社会保険料の負担が増えました。出産手当金はどう変わるのでしょうか?

出典:全国健康保険協会HP

出産手当金の支給額は「標準報酬月額× 2/3」で計算されるので、

・4~6月の平均給与20万円の場合:標準報酬月額20万円×2/3=約13.3万円
・4~6月の平均給与21万円の場合:標準報酬月額22万円×2/3=約14.6万円

1カ月で約1.3万円変わります。産前産後休業の約3カ月で約4万円もらえるお金が増えます。1等級以上の変化があればその差はもっと大きくなります。

また、標準報酬月額は、将来の厚生年金の額にも影響します。たとえば、1等級上がった状態が1年間続いた場合、将来の年金は生涯で数万円程度増える可能性があります。

家計設計としての判断軸

あなたはどのタイプでしょうか?

① 手取りを最優先したい
② 保障を充実させたい

① 手取りを最優先したい

→ 保険料を抑えることを意識するのも一つの考え方です。
目先の手取りを安定させ、その分を貯蓄や資産形成に回す、という選択もあります。

ただし、社会保険料だけを基準に働き方を決めるのは、少しもったいないかもしれません。

仕事のやりがい、将来のキャリア、
ご自身の体力やご家庭の状況も含めて総合的に判断することが大切です。

② 保障を充実させたい

→ これから産休に入る予定がある。
→ 体調に不安があり、療養の可能性がある。

このような場合は、標準報酬が高いほうが有利になる可能性があります。

また、将来の厚生年金にも影響します。
標準報酬が高い期間が長く続けば、
将来受け取る年金も増える可能性があります。
ただし、1年だけであれば差は大きくありません。

正解は一つではありません。

よくある質問

最後によくある質問についてお伝えします。

Q. 残業した月はすぐ保険料が上がる?

A. 原則は年1回の定時決定。すぐには変わりません。

Q. 4〜6月だけ気をつければOK?

A. 基本はそうですが、昇給などがあれば随時改定の可能性があります。

Q.育休後、時短勤務で給与が下がると将来もらえる年金が減る?

A. 子どもが3歳になるまでは「養育期間標準報酬月額の特例」という制度があります。

給与が下がっても、下がる前の標準報酬で厚生年金を計算してくれるため、
将来の年金は原則減りません。

「標準報酬月額」についてより詳しくはこちらから

【保存版】標準報酬月額とは?決まり方・随時改定・育休改定まで完全解説

まとめ

4〜6月は特別な3か月です。

でも、残業=悪とは限りません。

・保険料は増える
・でも給付も増える
・年金にも影響する

何を優先する時期なのか。

それを整理できれば、働き方は自分で決められます。

増やすより、整える。
整えることの積み重ねが、きっとこれからの安心につながります。
また次回、一緒に整理していきましょう。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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