「共働きの会社員として働いており、このたび育休をとるのですが、育休中の収入がガクッと下がって不安です。「扶養」を使えば税金や保険料で得する場合があると聞きました。ネットで調べてみたのですがよくわからず、解説をお願いできませんか?」

書籍「夫婦貯金年150万円の法則」の読者から、P187~189の『収入の壁を超えると「働き損」になる?』の部分について、質問いただきましたので解説していきます。

育児休業給付金や出産手当金などは、収入と見なされません。そのため、一定の条件に当てはまれば、配偶者の扶養に入ることができます。今回は、「社会保険の扶養」と「税制上の扶養」の2つについて、妻が育休をとるという例で、分かりやすく解説していきます。この情報は2025年時点の制度による内容になります。
目次
年収・所得・控除とは?
まず、これからよく出てくる「年収」「所得」「控除」について、言葉の整理をしておきましょう。
「年収」とは1年間の収入総額です。その年間の収入から「控除」を差し引いた金額が「所得」となります。「所得」に、税率をかけて、税金を計算します。「控除」には基礎控除、給与所得控除、配偶者控除などがあります。

「所得って何?控除って何?」という人は、税金の基礎について理解した上で、続きを読んだほうが理解しやすいと思います↓↓↓
社会保険上の扶養とは?
社会保険には健康保険(介護保険を含む)と厚生年金があります。会社員の方であれば、毎月給与から天引きされて保険料を支払っています。社会保険上の扶養に該当すると、自分で保険料を負担しなくてもよくなります。

妻が勤め先の企業で社会保険に加入している場合
会社員やパートの妻が勤め先の企業で社会保険に加入している場合、在職している間は、たとえ育児休業中でも「会社員(被保険者)」の資格を維持しています。つまり、育児休業中でも自分自身で社会保険に加入しており、社会保険料の支払いが免除され、健康保険・厚生年金の被保険者資格が継続しています。そのため、妻が勤め先の企業で社会保険に加入している場合は、夫の社会保険の扶養に入ることを考える必要はありません。

妻が個人事業主の場合
妻が個人事業主で年間収入が130万円以上の場合(後ほど詳しく解説します)は、国民健康保険や国民年金の保険料は全額自己負担しています。
●国民年金保険料(全国一律の定額):月額 17,510円(2025年度)
●国民健康保険料(収入や年齢によって変動し、保険料率は自治体ごとで異なる):月額27,615円(東京都新宿区、2025年度、40歳未満で所得300万円の場合)
夫の勤務先の健康保険の「扶養」に入れれば、妻の保険料負担がゼロになります。そのため、妻が個人事業主で、育休や出産などにより一時的に収入が減る/仕事を休む場合は、一定期間だけでも、夫の社会保険の扶養に入るメリットがあります。

社会保険の扶養に入るための要件は、加入している協会けんぽや健康保険組合によって異なります。以下では、協会けんぽを例としてお伝えしますが、個人事業主の年収の取り扱いなどについて会社ごとに異なることがあるため、詳細は会社に確認するようにしましょう。
被扶養者(今回のケースの場合妻)の範囲
被扶養者になろうとする人(今回のケースの場合妻)が以下のいずれかに該当しなければなりません。
【1】配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹などの直系尊属で、主として被保険者に生計を維持されている人(被保険者と同居している必要はない)
【2】主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人(被保険者と同居していることが必要)
① 被保険者の三親等以内の親族(【1】に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

出典:協会けんぽHPより
収入の基準
扶養に入れる人の収入の基準は、被保険者(今回のケースの場合夫)と同居しているか否かで、以下の要件をすべて満たすこと必要です。
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金受給者と同等の状態にある場合180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の場合は150万円未満)
【被保険者と同居している場合】
収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(ただし、2分の1以上でも年間収入が130万円未満で、被保険者の収入を上回らない場合には扶養に入れる場合がある)
【被保険者と別居している場合】
収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
税法上の扶養は所得金額で判定されますが、社会保険の扶養は年間収入で判定されます。年間収入は過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点、および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。

個人事業主の場合の年間の収入は、売上から必要経費を引いた金額で考えるのが一般的ですが、協会けんぽにおける個人事業主の年間収入の考え方は、「年間総収入から直接的経費を差し引いた額」となります。直接的経費とは、その経費がなければ事業が成り立たない経費(例:製造業における原材料費、小売業における仕入れ費)であり、それ以外の費用(例:減価償却、広告宣伝費)は差し引くことはできません。
年金事務所に確認したところ、個人事業主でこれまで収入があって、休業して業務が停止するなど明確な書類があればよいが、業務は続けていき収入が少なくなる場合は収入が減る理由を示した資料を添付し、審査を受けての判断になるとのことでした。勤務先の健康保険組合や協会けんぽで判断が異なる場合もあるので、夫の勤務先へ相談し、「妻を健康保険の扶養に入れたい」と伝え、条件や必要書類を確認しましょう。

税法上の扶養とは?
「税法上の扶養」とは、配偶者控除・配偶者特別控除 の対象になることを指します。社会保険の扶養とは違い、税法上の扶養に入ることで 納税者本人(今回のケースの場合夫)の所得税・住民税が軽減されます。

税法上の扶養に入れる主な条件
配偶者(今回のケースでは妻)が税法上の扶養に入るには、次の条件を満たす必要があります。
【令和7年分(2025年分)の目安】
●民法上の配偶者であること(内縁関係は該当しない)
●納税者と生計を一にしていること
●配偶者の年間の合計所得金額が133万円以下(給与収入のみの場合201.6万円未満)
●納税者本人の年間の合計所得金額が1000万円以下(給与収入のみの場合1195万円以下)

「年収」とは勤務先から支払われた1年間の給与収入総額です。その年間の給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額が「所得」となります。給与所得控除の額は、収入により異なります。

出典:国税庁HPより
配偶者の給与収入が201.6万円の場合、給与所得控除額は68.48万円(201.6万円×30%+8万円)なので、所得は133.12万円(201.6万円-68.48万円)となります。そのため、配偶者の年間の合計所得金額が133万円以下は、給与収入のみの場合201.6万円未満ということになります。
納税者本人の給与収入が1195万円の場合、給与所得控除額は195万円なので、所得は1000万円(1195万円-195万円)となります。そのため、納税者本人の年間の合計所得金額が1000万円以下は、給与収入のみの場合1195万円以下ということになります。
また、「年間」とは税金を計算する上での期間(1月1日から12月31日)であり、育休を取得した期間のことではないので注意しましょう。

たとえば、月収20万円の妻が1月~5月の5か月だけ働いて6月から育休に入った場合、その年の給与収入は100万円(20万円×5か月)です。このように年収が一定以下に下がると、夫の「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の対象となり、夫の所得税・住民税が少なくなります。
控除の額
ではどのくらいの額がお得になるのでしょうか? 以下は、納税者本人と配偶者の年間の合計所得金額に応じた控除額を一覧表にまとめたものです。
所得税
| 配偶者の合計所得金額(給与のみの場合の収入金額) | 納税者本人の所得900万円以下(給与のみの場合1095万円以下) | 納税者本人の所得900万超〜950万円以下(給与のみの場合1095万円超1145万円以下) | 納税者本人の所得950万超〜1000万円以下(給与のみの場合1145万円超1195万円以下) | |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳未満 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳以上 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | |
| 配偶者特別控除 | 58万円超〜95万円以下(収入123万超〜160万以下) | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超〜100万円以下(収入160万超〜165万以下) | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
| 100万円超〜105万円以下(収入165万超〜170万以下) | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
| 105万円超〜110万円以下(収入170万超〜175万以下) | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
| 110万円超〜115万円以下(収入175万超〜180万以下) | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
| 115万円超〜120万円以下(収入180万超〜185万以下) | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
| 120万円超〜125万円以下(収入185万超〜190万以下) | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
| 125万円超〜130万円以下(収入190万3,999円超~197万1,999円以下) | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
| 130万円超〜133万円以下(収入197万1,999円超~201万5,999円以下) | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
| 133万円超(収入201万5,999円超) | 0円 | 0円 | 0円 |
出典:国税庁HPより
住民税
| 配偶者の合計所得金額(給与のみの場合の収入金額) | 納税者本人の所得900万円以下(給与のみの場合1095万円以下) | 納税者本人の所得900万超〜950万円以下(給与のみの場合1095万円超1145万円以下) | 納税者本人の所得950万超〜1000万円以下(給与のみの場合1145万円超1195万円以下) | |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳未満 | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
| 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳以上 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | |
| 配偶者特別控除 | 58万円超〜100万円以下(収入123万超〜165万以下) | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
| 100万円超〜105万円以下(収入165万超〜170万以下) | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
| 105万円超〜110万円以下(収入170万超〜175万以下) | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
| 110万円超〜115万円以下(収入175万超〜180万以下) | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
| 115万円超〜120万円以下(収入180万超〜185万以下) | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
| 120万円超〜125万円以下(収入185万超〜190万以下) | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
| 125万円超〜130万円以下(収入190万3,999円超~197万1,999円以下) | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
| 130万円超〜133万円以下(収入197万1,999円超~201万5,999円以下) | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
| 133万円超(収入201万5,999円超) | 0円 | 0円 | 0円 |
節税メリット例
例)・妻の年収(給与収入のみ):150万円
・夫の年収(給与収入のみ):600万円(所得税率 10%)
妻は 配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税3.8万円(38万円×10%)、住民税3.3万円(33万円×10%)軽減され、合計約7万円の節税になります。

税法上の扶養に入るための手続き
配偶者控除・配偶者特別控除を受けたい場合、年末調整または確定申告で申告が必要です。単に育休中だから自動的に適用されるわけではないので注意しましょう。
<自営業者(個人事業主)の場合>確定申告で「配偶者(特別)控除」を申告
<給与所得者(会社員)の場合>年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出

年末調整での手続きが間に合わなかった場合でも、確定申告をすることで配偶者控除・配偶者特別控除の手続きはできます。また、5年以内であれば遡って請求することもできるので、もし「配偶者の控除が使えるなんて知らなかった」と言う人は、遡って確定申告をして税金の還付を受けましょう。
まとめ
今回は、「社会保険の扶養」と「税制上の扶養」について、妻が育休をとる例で解説しました。
「扶養」に該当する場合は、申請するだけでお得になるので、是非実践してみてください。


















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