【1級FPが解説】会社員の夫、個人事業主の妻です。夫の扶養に入れるの? 個人事業主の「社会保険の扶養」と「税金の扶養」

「夫は会社員、私は個人事業主です。個人事業主でも夫の扶養に入ることができますか?」

書籍「夫婦貯金年150万円の法則」の読者から、P187~189の『収入の壁を超えると「働き損」になる?』の部分について、質問いただきましたので解説していきます。

配偶者の扶養に入ることができれば、税金や社会保険の支払いが少なくなります。今回は、「社会保険の扶養」と「税制上の扶養」の2つについて、会社員の夫、個人事業主の妻という例で解説していきます。会社員の妻、個人事業主の夫の場合は、妻と夫を逆にしてください。(以下、2025年時点の情報です)

YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約13分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。

税法上の扶養とは?

税法上の扶養とは、一定の収入以下の妻がいれば、夫の税金が安くなる制度です。妻の所得が133万円以下になると活用できます。

出典:「配偶者手当」を支給している事業主の皆さまへ「厚生労働省」資料より

「税金の基礎」年収・所得・控除とは?

まず、これからよく出てくる「年収」「所得」「控除」という言葉や所得税や住民税がどのように決まるのか「税金の仕組み」を知らないと頭がごちゃごちゃになってしまいます。税金の基礎についてあまりよくわからない人は、下記をまず見て続きを見たほうが理解しやすいと思います↓↓↓

【1級FPが解説】税金むずかしい…を一気に解決!超わかりやすい「税金の仕組み」と「節税方法」

税法上の扶養に入れる主な条件

妻が税法上の扶養に入るには、次の条件を満たす必要があります。

【令和7年分(2025年分)の目安】
●民法上の配偶者であること(内縁関係は該当しない)
●納税者と生計を一にしていること
●配偶者の年間の合計所得金額が133万円以下(給与収入のみの場合201.6万円未満)
●納税者本人の年間の合計所得金額が1000万円以下(給与収入のみの場合1195万円以下)

合計所得金額とは?

合計所得金額は、各種所得(事業所得、給与所得、不動産所得、雑所得など)の金額を合計したもので次のようになります。

【給与収入のみ】合計所得金額 = 給与収入ー給与所得控除
【事業所得のみ】合計所得金額 = 年間の事業収入(売上)-必要経費

たとえば、給与収入が1195万円の場合、給与所得控除が195万円となり、合計所得金額は1000万円となります。そのため、「夫の年間の合計所得金額が1000万円以下」=「給与収入のみの場合1195万円以下」となります。

出典:国税庁HPより

また、「年間」とは税金を計算する上での期間(1月1日から12月31日)です。たとえば、妻が1月~5月の5か月で事業所得100万円働いて、6月から売上0だった場合、その年の事業所得は100万円です。このように所得が一定以下に下がると、夫の「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の対象となり、夫の所得税・住民税が少なくなります。

控除の額

ではどのくらいの額がお得になるのでしょうか? 妻の合計所得金額が133万円以下であれば控除を活用でき、少なくなるほど控除の額が増えていきます。

出典:「配偶者手当」を支給している事業主の皆さまへ「厚生労働省」資料より

以下は、納税者本人(夫)と配偶者(妻)の年間の合計所得金額に応じた控除額を一覧表にまとめたものです。

所得税

配偶者の合計所得金額 納税者本人の所得900万以下(給与のみの場合1095万以下) 納税者本人の所得900万超〜950万以下(給与のみの場合1095万超1145万以下) 納税者本人の所得950万超〜1000万以下(給与のみの場合1145万超1195万以下)
配偶者控除 58万円以下※配偶者が70歳未満 38万円 26万円 13万円
58万円以下※配偶者が70歳以上 48万円 32万円 16万円
配偶者特別控除 58万円超〜95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超〜100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超〜105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超〜110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超〜115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超〜120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超〜125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超〜130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超〜133万円以下 3万円 2万円 1万円
133万円超 0円 0円 0円

出典:国税庁HPより

住民税

配偶者の合計所得金額 納税者本人の所得900万円以下(給与のみの場合1095万円以下) 納税者本人の所得900万超〜950万円以下(給与のみの場合1095万円超1145万円以下) 納税者本人の所得950万超〜1000万円以下(給与のみの場合1145万円超1195万円以下)
配偶者控除 58万円以下※配偶者が70歳未満 33万円 22万円 11万円
58万円以下※配偶者が70歳以上 38万円 26万円 13万円
配偶者特別控除 58万円超〜100万円以下 33万円 22万円 11万円
100万円超〜105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超〜110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超〜115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超〜120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超〜125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超〜130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超〜133万円以下 3万円 2万円 1万円
133万円超 0円 0円 0円

出典:岡山市公式ページ「所得控除(所得割額の計算)」より

節税メリット例

いくつか例をみてみましょう。

例1)「妻の合計所得金額:85万円」「夫の年収(給与収入のみ):600万円(所得税率10%)」

妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税3.8万円(38万円×10%)、住民税3.3万円(33万円×10%)軽減され、合計約7万円の節税になります。

例2)「妻の合計所得金額:85万円」「夫の年収(給与収入のみ):1000万円(所得税率23%)」

妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税8.74万円(38万円×23%)、住民税3.3万円(33万円×10%)軽減され、合計約12万円の節税になります。

例3)「妻の合計所得金額:133万円」「夫の年収(給与収入のみ):1000万円(所得税率23%)」

妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税0.69万円(3万円×23%)、住民税0.3万円(3万円×10%)軽減され、合計約1万円の節税になります。

どのぐらい世帯主(夫)の税金が減るかは、夫と妻の収入によって変わります。

出典:「配偶者手当」を支給している事業主の皆さまへ「厚生労働省」資料より

税法上の扶養に入るための手続き

配偶者控除・配偶者特別控除を受けたい場合、夫側で年末調整または確定申告で申告が必要です。単に所得が低いから自動的に適用されるわけではないので注意しましょう。

●確定申告で「配偶者(特別)控除」を申告
●年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出


年末調整での手続きが間に合わなかった場合でも、確定申告をすることで配偶者控除・配偶者特別控除の手続きはできます。また、5年以内であれば遡って請求することもできるので、もし「配偶者の控除が使えるなんて知らなかった」と言う人は、遡って確定申告をして税金の還付を受けましょう。

社会保険上の扶養とは?

妻が個人事業主で年間収入が130万円以上の場合(後ほど詳しく解説します)は、国民健康保険や国民年金の保険料を全額自己負担しています。

●国民年金保険料(全国一律の定額):月額 17,510円(2025年度)
●国民健康保険料(収入や年齢によって変動し、保険料率は自治体ごとで異なる):月額27,615円(東京都新宿区、2025年度、40歳未満で所得300万円の場合)

夫の勤務先の健康保険の「扶養」に入れれば、妻の保険料負担がゼロになります。

社会保険の扶養に入るための要件は、加入している協会けんぽや健康保険組合によって異なります。以下では、協会けんぽを例としてお伝えしますが、個人事業主の年収の取り扱いなどについて会社ごとに異なることがあるため、詳細は会社に確認するようにしましょう。

被扶養者(今回のケースの場合妻)の範囲

被扶養者になろうとする人(今回のケースの場合妻)が以下のいずれかに該当しなければなりません。

【1】配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹などの直系尊属で、主として被保険者に生計を維持されている人(被保険者と同居している必要はない)
【2】主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人(被保険者と同居していることが必要)
① 被保険者の三親等以内の親族(【1】に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子


出典:協会けんぽHPより

収入の基準

扶養に入れる人(今回のケースの場合妻)の収入の基準は、被保険者(今回のケースの場合夫)と同居しているか否かで、以下の要件をすべて満たすこと必要です。

年間収入が130万円未満
※60歳以上または障害厚生年金受給者と同等の状態にある場合180万円未満
※19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の場合は150万円未満)

【被保険者と同居している場合】
収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(ただし、2分の1以上でも年間収入が130万円未満で、被保険者の収入を上回らない場合には扶養に入れる場合がある)

【被保険者と別居している場合】
収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

税法上の扶養は所得で判定されますが、社会保険の扶養は年間収入で判定されます。年間収入は過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点、および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。

個人事業主の場合の年間の収入は、売上から必要経費を引いた金額で考えるのが一般的ですが、協会けんぽにおける個人事業主の年間収入の考え方は、「年間総収入から直接的経費を差し引いた額」となります。直接的経費とは、その経費がなければ事業が成り立たない経費(例:製造業における原材料費、小売業における仕入れ費)であり、それ以外の費用(例:減価償却、広告宣伝費)は差し引くことはできません。


出典:協会けんぽ「被扶養者資格の再確認とご提出のお願い」より

年金事務所に確認したところ、個人事業主でこれまで収入があって、休業して業務が停止するなど明確な書類があればよいが、業務は続けていき収入が少なくなる場合は収入が減る理由を示した資料を添付し、審査を受けての判断になるとのことでした。勤務先の健康保険組合や協会けんぽで判断が異なる場合もあるので、夫の勤務先へ相談し、「妻を健康保険の扶養に入れたい」と伝え、条件や必要書類を確認しましょう。

まとめ

今回は、「社会保険の扶養」と「税制上の扶養」について、妻が育休をとる例で解説しました。
「扶養」に該当する場合は、申請するだけでお得になるので、是非実践してみてください。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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