「本を読んで、家族としてどうお金を稼いでいくか考えるきっかけになりました。ありがとうございます。私はパートをしており、夫は会社員です。今後の教育費や老後のお金も考えて、私の収入を上げていきたいと考えています。働き損にはなりたくないので、106万・110万・130万・160万などの年収の壁どの壁に気をつけたらいいか教えていただけたら嬉しいです。」

書籍「夫婦貯金年150万円の法則」の読者から、P187~189の『収入の壁を超えると「働き損」になる?』の部分について、質問いただきましたので解説していきます。

「106万円、110万円、130万円、160万円の壁・・・」複雑でよくわからないですよね。年収の壁は4種類あります。ポイントは、税金か社会保険か、誰の収入に影響するかです。
①【妻の税金の壁】110万円と160万円の壁
②【夫の税金の壁】160万円の壁
③【妻の社会保険の壁】106万円と130万円の壁
④【夫の家族手当の壁】

結論、この中で気にすべき壁は「③【妻の社会保険の壁】130万円の壁」と「④夫の家族手当の壁」、この2つだけで、そのほかは気にする必要はありません。
以前、私が年収の壁について調べているとき、扶養者、被扶養者、配偶者などさまざまな言葉が出てこんがらがってしまったので、今回は、会社員の夫(世帯主)、パートの妻を例として、解説していきます。会社員の妻(世帯主)、パートの夫の場合は、妻と夫を逆にしてみてみてください。(以下、2025年時点の情報です)
目次
「税金の基礎」年収・所得・控除とは?
まず、これからよく出てくる「年収」「所得」「控除」という言葉や所得税や住民税がどのように決まるのか「税金の仕組み」を知らないと頭がごちゃごちゃになってしまいます。税金の基礎についてあまり理解していない人は、下記をまず見て続きを見たほうが理解しやすいと思います↓↓↓
「所得控除」は医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがありますが、今回の説明においては、収入が給与収入のみの場合で、誰もが使える「基礎控除」、給与収入の人が使える「給与所得控除」この2つの控除のみ利用する前提で話をしていきます。
①【妻の税金の壁】110万円と160万円の壁
110万円と160万円の壁は、パートの妻に税金(所得税・住民税)がかかる壁です。

【妻の住民税】110万円の壁
110万円の壁は住民税の壁です。住民税は、誰でも同じ金額を支払う「均等割」と、収入に応じて所得の10%を支払う「所得割」の2種類があります。
均等割:5000円程度(年収103万円~110万円の間から発生し、自治体によって異なる)
所得割:年収108万円を超える部分に10%

所得割がなぜ108万円になるのかは、2つの控除が使えるからです。
①基礎控除:43万円(年収200万円超の場合は控除額が変わります)
②給与所得控除:65万円(年収190万円超の場合は控除額が変わります)

出典:国税庁HPより
住民税がかかるのは壁を超えた分だけなので、10万円超えても均等割5,000円、所得割10,000円(10万円×10%)で、年間15,000円程度です。税金は増えるが、それ以上に手取りが増えるのでこの壁は気にする必要はありません。

【妻の所得税】160万円の壁
160万円の壁は所得税の壁です。年収が160万円を超えると、超えた分に所得税がかかり、手取りが減ります。

なぜ160万円になるのかは、2つの控除が使えるからです。
①基礎控除:95万円(年収200万円超の場合は控除額が変わります)
②給与所得控除:65万円(年収190万円超の場合は控除額が変わります)
所得税がかかるのは超えた分だけなので、たとえば、年収160万円を超えて170万円になり、10万円超えても所得税は5000円(10万円×5%)程度です。住民税と同じで、税金は増えるが、それ以上に手取りが増えるのでこの壁は気にする必要はありません。
【所得税率表】

②【夫の税金の壁】160万円の壁
160万円の壁は、「妻の税金の壁」のほかに、「夫の税金の壁」もあります。これは、妻の手取りではなく、「夫の手取りが変わる壁」=「税法上の扶養の壁」です。税法上の扶養とは、一定の収入以下の妻がいれば、夫の税金が安くなる制度です。妻の年収が160万円までであれば、控除額が満額(38万円)適用され、201.6万円以上になると控除額が0円になります。

出典:「配偶者手当」を支給している事業主の皆さまへ「厚生労働省」資料より
税法上の扶養に入れる主な条件
妻が税法上の扶養に入るには、次の条件を満たす必要があります。
【令和7年分(2025年分)の目安】
●民法上の配偶者であること(内縁関係は該当しない)
●納税者と生計を一にしていること
●配偶者の年間の合計所得金額が133万円以下(給与収入のみの場合201.6万円未満)
●納税者本人の年間の合計所得金額が1000万円以下(給与収入のみの場合1195万円以下)

合計所得金額とは?
合計所得金額は、各種所得(事業所得、給与所得、不動産所得、雑所得など)の金額を合計したもので、課税所得とは違います。給与収入のみの方は、ほかの所得がないので給与所得のみのことを指し、次のようになります。
合計所得金額 = 給与収入ー給与所得控除
合計所得金額ー控除(基礎控除など)=課税所得
たとえば、給与収入が1195万円の場合、給与所得控除が195万円となり、合計所得金額は1000万円となります。そのため、「夫の年間の合計所得金額が1000万円以下」=「給与収入のみの場合1195万円以下」となります。

出典:国税庁HPより
控除の額
ではどのくらいの額がお得になるのでしょうか? 以下は、納税者本人(夫)と配偶者(妻)の年間の合計所得金額に応じた控除額を一覧表にまとめたものです。
所得税
| 配偶者の合計所得金額(給与のみの場合の収入金額) | 納税者本人の所得900万円以下(給与のみの場合1095万円以下) | 納税者本人の所得900万超〜950万円以下(給与のみの場合1095万円超1145万円以下) | 納税者本人の所得950万超〜1000万円以下(給与のみの場合1145万円超1195万円以下) | |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳未満 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳以上 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | |
| 配偶者特別控除 | 58万円超〜95万円以下(収入123万超〜160万以下) | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超〜100万円以下(収入160万超〜165万以下) | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
| 100万円超〜105万円以下(収入165万超〜170万以下) | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
| 105万円超〜110万円以下(収入170万超〜175万以下) | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
| 110万円超〜115万円以下(収入175万超〜180万以下) | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
| 115万円超〜120万円以下(収入180万超〜185万以下) | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
| 120万円超〜125万円以下(収入185万超〜190万以下) | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
| 125万円超〜130万円以下(収入190万3,999円超~197万1,999円以下) | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
| 130万円超〜133万円以下(収入197万1,999円超~201万5,999円以下) | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
| 133万円超(収入201万5,999円超) | 0円 | 0円 | 0円 |
出典:国税庁HPより
住民税
| 配偶者の合計所得金額(給与のみの場合の収入金額) | 納税者本人の所得900万円以下(給与のみの場合1095万円以下) | 納税者本人の所得900万超〜950万円以下(給与のみの場合1095万円超1145万円以下) | 納税者本人の所得950万超〜1000万円以下(給与のみの場合1145万円超1195万円以下) | |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳未満 | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
| 58万円以下(収入123万円以下)※配偶者が70歳以上 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | |
| 配偶者特別控除 | 58万円超〜100万円以下(収入123万超〜165万以下) | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
| 100万円超〜105万円以下(収入165万超〜170万以下) | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
| 105万円超〜110万円以下(収入170万超〜175万以下) | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
| 110万円超〜115万円以下(収入175万超〜180万以下) | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
| 115万円超〜120万円以下(収入180万超〜185万以下) | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
| 120万円超〜125万円以下(収入185万超〜190万以下) | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
| 125万円超〜130万円以下(収入190万3,999円超~197万1,999円以下) | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
| 130万円超〜133万円以下(収入197万1,999円超~201万5,999円以下) | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
| 133万円超(収入201万5,999円超) | 0円 | 0円 | 0円 |
節税メリット例
いくつか例をみてみましょう。
例1)「妻の年収(給与収入のみ):150万円」「夫の年収(給与収入のみ):600万円(所得税率10%)」
妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税3.8万円(38万円×10%)、住民税3.3万円(33万円×10%)軽減され、合計約7万円の節税になります。
例2)「妻の年収(給与収入のみ):150万円」「夫の年収(給与収入のみ):1000万円(所得税率23%)」
妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税8.74万円(38万円×23%)、住民税3.3万円(33万円×10%)軽減され、合計約12万円の節税になります。
例3)「妻の年収(給与収入のみ):200万円」「夫の年収(給与収入のみ):1000万円(所得税率23%)」
妻は配偶者特別控除の対象になります。控除額は夫側で所得税0.69万円(3万円×23%)、住民税0.3万円(3万円×10%)軽減され、合計約1万円の節税になります。

160万円の壁を超えるとどのぐらい世帯主(夫)の税金が増えるかは、収入が高ければ税率も高いため、世帯主(夫)の収入によって変わります。ただし、年収が160万円を超えると一気に税負担が増えるわけではなく徐々に増えていき、また妻の収入も増えていくので、そこまで気にする必要はないと考えます。

③【妻の社会保険の壁】106万円と130万円の壁
こちらは、「妻の社会保険料が発生する壁」=「社会保険の扶養の壁」です。この壁を超えると、これまで夫の会社の社会保険の扶養に入れていて保険料がゼロだったのが、ご自身で保険料を支払う必要がでてきます。妻が勤める会社の従業員が50人以下の場合は130万円の壁、51人以上の場合は106万円の壁になります。

税法上の扶養は所得で判定されますが、社会保険の扶養は年間収入で判定されます。年間収入は過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点、および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
106万円の壁【妻が勤める会社の従業員が51人以上の場合】
下記の条件をすべて満たす場合は、夫の扶養で社会保険に入れなくなり、妻の勤務先の社会保険に強制加入になります。これが106万円の壁です。
●従業員数51人以上(今後:2027年10月36人→2029年10月21人→2032年10月11人→2035年10月なし)
●月収88,000円以上(通勤手当、賞与などは含まない) ※今後撤廃予定
●雇用見込みが2か月以上
●労働時間が週20時間以上
●学生でない
88,000円×12か月=約106万円なので、106万円の壁と言われています。年収106万円には、通勤手当・賞与、不動産や副業などは含まれず、基本給と諸手当のみになります。

出典:厚生労働省資料より
106万円を超えた場合、妻の社会保険料は今まで無料でしたが、給与の約15%の支払いが必要になります。たとえば、給与が110万円の場合は年間約16万円の社会保険料の支払いが必要になります。
給与105万円→手取り105万円(社会保険料0円)
給与106万円→手取り90万円(社会保険料約16万円)
給与125万円→手取り106万円(社会保険料約19万円)
105万円と106万円、給与が1万円変わるだけで手取りが約16万円変わります。手取り105万円に戻すためには給与125万円を稼がないといけません。社会保険料は先ほどの所得税、住民税のように超えた分ではなく、給与全体にかかるので、これがかかるかかからないかは大きいです。
社会保険料を支払うメリット
社会保険料を払うと手取り減ってしまいますが、社会保険料を支払うメリットもあります。夫の扶養で入っていた社会保険(無料の健康保険と国民年金)と妻自身で支払って社会保険(健康保険と厚生年金)に入る場合に違いがあるからです。
【国民年金→厚生年金に変わるメリット】
●老齢年金(老後の年金)が増える
●遺族年金(亡くなったときの遺族のためのお金)が増える
●障害年金(一定の障害状態になったときのお金)が増える
老後の年金が増えるだけでなく、遺族年金や障害年金も増えるので民間保険の削減につながります。では、いくら厚生年金保険料を支払い、どのくらい年金が増えるのでしょうか?

出典:日本年金機構リーフレット「社会保険適用拡大ガイドブック」
たとえば、年収120万円の部分を見てみると、厚生年金保険料は月9,000円です。10年支払うと108万円、それに対して老後の年金は月4900円増えるので、220カ月(約18年)以上受け取ると払った金額より多くなります。ただ、これは厚生年金保険料のみの話なので、健康保険料も含めると、年間約18万円(年収120万円×約15%)保険料がかかり、10年で180万円なので、367カ月(約30年)以上受け取ると払った金額より多くなります。
【健康保険を自分で支払うメリット】
●傷病手当金(働けなくても最長1年半今の給与の2/3が支給)がもらえる
●出産手当金(出産前後に支給)がもらえる
●付加給付(各健康保険組合の保障の上乗せ制度)があれば、さらに手厚い保障が受けられる
このように、社会保険を自分で支払うメリットも大きいので、会社で社会保険に入れる場合は、106万円の壁は気にせず、どんどん超えていっていいと思います。
130万円の壁【妻が勤める会社の従業員が50人以下の場合】
従業員が50人以下の会社で働く妻が年収が130万円以上になると、妻は夫の扶養から強制脱退となり、自分で国民健康保険と国民年金に加入する義務が発生します。

年収130万円には、106万円の壁とは違い、通勤手当・賞与、不動産や副業などの収入も含まれます。

出典:厚生労働省資料より
収入が130万円の場合、自分で国民健康保険(年約10万円)と国民年金(年約21万円)に加入すると年間約31万円の支払いが必要です。同じくらいの手取りを得ようと思うと、約160~170万円程度稼がないといけないので130万円の壁を超えるか超えないかはかなり大きいです。

しかも、妻自身で国民年金と国民健康保険を支払う場合は、106万円の壁でお伝えした会社で入る社会保険のメリットはなく、夫の扶養に入っていたときと内容が変わりません。年金も増えず、保障も変わりません。なのに、年間約31万円以上保険料を支払わないといけません。130万円の壁は必ず意識しないといけない壁です。
130万円の壁の対策
【対策① 勤務先で社会保険に加入できるぐらい働く】
勤務先で週30時間以上(正社員の3/4以上)勤務するなどの加入要件を満たしていれば、妻の勤務先で健康保険と厚生年金に加入できます。勤務先で社会保険に加入できれば、130万円の給与収入でも年間約19万円の支払い(給与の約15%)です。勤務先の社会保険に入るほうが金額は少ないのは、会社が同じ額負担してくれているからです。妻の勤務先で社会保険に加入できるぐらい働けるか勤務先に相談してみましょう。

【対策② 106万円の壁が適用される従業員51人以上の会社に転職する】
106万円の壁が適用される従業員51人以上の会社に転職すれば、年収130万円を超えても、社会保険料は少なく、また内容も充実しています。
④会社の家族手当の壁
家族手当がある企業では、支給対象の条件が会社ごとで変わります。支給額は月1万円~2万円程度の会社が多く、家計に対するインパクトは大きいので、家族手当がある企業に勤めている場合は、条件を確認しておきましょう。

注意すべき壁
4つの種類の壁を見てきました。ポイントは、税金か社会保険か、誰の収入に影響するかです。
①【妻の税金の壁】110万円と160万円の壁
②【夫の税金の壁】160万円の壁
③【妻の社会保険の壁】106万円と130万円の壁
④【夫の家族手当の壁】
結論、この中で気にすべき壁は「③【妻の社会保険の壁】130万円の壁」と「④夫の家族手当の壁」、この2つだけです。
夫婦の収入や状況により異なりますが、税金よりも「社会保険料の負担」と「家族手当の削減」による影響が大きくなる傾向があります。税金の壁は壁を越えた部分にだけ所得税や住民税が課税されるので、一気に負担が増えるのではなく、徐々に増えていきます。一方、社会保険の壁は、壁を超えると給与全体に一気に負担が増えます。

106万円の壁については、社会保険料を払うと手取り減ってしまいますが、社会保険料を支払うメリットもあります。老後の年金が増えるだけでなく、遺族年金や障害年金も増えるので民間保険の削減につながります。106万円の人は125万円以上稼ぐと社会保険料を支払っても手取りは増えていきます。
目先の手取りを増やすことばかりではなく、家計全体を長期的に見て、どのくらいの収入を稼ぐか決断していきましょう。





















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