火災保険は火事だけじゃない!どこまで補償される?必要な補償の選び方を解説

「火災保険」という名前から、
「火事になったときのための保険」
と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、火災保険で補償されるのは、火事だけではありません。

では、ここで質問です。

東京海上日動の火災保険で、「火災・落雷・破裂・爆発」による事故件数の割合は、次のうちどれでしょうか。

  1. 約5%
  2. 約25%
  3. 約50%

正解は、1の約5%です。

東京海上日動の2019~2023年度の「住まいの保険(充実タイプ)」の事故件数割合は、次のようになっています。

事故の種類 事故件数の割合
火災・落雷・破裂・爆発 5%
風災・雹災・雪災・水災 45%
盗難・水濡れ等 27%
破損等 23%

つまり、火災保険で対応する事故の多くは、火事以外の事故です。

火災保険は、火事だけでなく、台風、水災、盗難、水濡れ、日常生活中の偶然な破損など、建物や家財に関する幅広い損害に備える保険です。

この記事では、

  • 火災保険の補償を選ぶときの考え方
  • 火災保険で補償されない代表例
  • 基本的に押さえておきたい補償
  • 住まいや家計の状況によって検討する補償

について解説します。

火災保険は「確率が低くても損害が大きい事故」に備える

保険は本来、
起こる可能性は低くても、発生したときの家計への負担が大きいリスク
に備えるものです。

たとえば、火災で建物が全焼した場合や、台風で屋根や外壁が大きく壊れた場合には、修理や建て替えに数百万円から数千万円かかる可能性があります。

このような損害を貯蓄だけで負担するのは簡単ではありません。

一方で、数万円程度の修理費であれば、保険を使わず貯蓄で対応できる家庭もあるでしょう。

そのため、火災保険の補償は、

  • 発生したときの損害額が大きいか
  • 貯蓄だけで負担できるか
  • 補償を付けた場合の保険料はいくらか

という視点で考えることが大切です。

火災保険の補償を決める3つのステップ

火災保険には、すべての人に共通する正解はありません。

住んでいる地域や建物、家族構成、家計の状況によって、必要な補償は変わります。

次の3つのステップで考えましょう。

ステップ1 ハザードマップで自宅周辺のリスクを確認する

最初に、国や自治体が公表しているハザードマップを確認します。

主に確認したいのは、次のリスクです。

  • 洪水
  • 内水氾濫
  • 土砂災害
  • 高潮
  • 津波

保険会社や代理店が提供するリスク診断も参考になりますが、国や自治体が公表している最新のハザードマップも確認しましょう。

ステップ2 基本的に押さえる補償と、個別に検討する補償を分ける

火災保険の補償は、大きく次の2つに分けて考えると分かりやすくなります。

基本的に押さえておきたい補償

  • 火災・落雷・破裂・爆発
  • 風災・雹災・雪災

住まいや家計の状況によって検討する補償

  • 水災
  • 水濡れ
  • 盗難
  • 破損等

火災や風災は、起こる確率が高いとは限りませんが、発生すると建物や家財に大きな損害が生じる可能性があります。

水災は、自宅周辺の災害リスクによって必要性が大きく変わります。

また、水濡れ、盗難、破損等は、火災や大規模な風災と比べると、
「発生する確率は低いが、起きたときの損害が非常に大きい」
というリスクに必ずしも当てはまりません。

そのため、保険で備える必要があるかを個別に検討することが大切です。

なお、火災保険は、補償を一つずつ選べる商品もあれば、火災や風災、盗難、水濡れなどが一つのプランにまとめられ、個別には外せない商品もあります。

ステップ3 迷う補償は「あり・なし」の見積もりを比較する

水災や破損等を付けるか迷う場合は、同じ条件で、

  • 補償を付けた見積もり
  • 補償を付けない見積もり

の両方を出してもらいましょう。

そのうえで、

  • 保険料がいくら変わるか
  • どのような損害が補償されるか
  • その損害を貯蓄で負担できるか

を比較して判断します。

火災保険で補償されない代表例

火災保険は幅広い事故に備えられますが、すべての損害が補償されるわけではありません。

主な対象外は、次のとおりです。

原則として補償されないもの 具体例
地震・噴火・津波による損害 地震による火災、建物の倒壊、津波による浸水
経年劣化や自然な消耗 老朽化、摩耗、腐食、さび
単なる故障 家電の故障
故意や重大な過失などによる損害 わざと建物や家財を壊した場合など

※補償されない範囲は、保険会社や商品、事故の状況によって異なります。

地震・噴火・津波による損害

地震による火災や建物の倒壊、津波による損害などは、通常の火災保険では補償されません。

たとえば、地震が原因で火災が発生した場合も、通常の火災保険では原則として補償の対象外です。

地震・噴火・これらによる津波の損害に備えるには、火災保険とあわせて地震保険を検討する必要があります。

経年劣化や自然な消耗

火災保険は、火事や台風など、急に起きた偶然な事故による損害に備える保険です。

そのため、

  • 長年の使用による老朽化
  • 自然な摩耗
  • 徐々に進んだ腐食
  • さび

など、時間の経過とともに生じた損害は、原則として補償されません。

たとえば、屋根や外壁が古くなり、徐々に雨漏りするようになった場合は、経年劣化と判断される可能性があります。

一方、台風で屋根が壊れ、その部分から雨が入り込んだ場合などは、事故の原因や契約内容によって補償される可能性があります。

単なる故障

火災や落雷、水濡れなどの事故がなく、家電が自然に故障した場合は、通常の火災保険では補償されません。

たとえば、

  • テレビやパソコンが自然に故障した
  • 冷蔵庫が寿命によって動かなくなった

といったケースです。

火災保険は、家電の寿命や自然故障に備えるものではなく、火災や落雷などの偶然な事故による損害に備える保険です。

なお、落雷など、火災保険で補償される事故が原因で家電が壊れた場合は、契約内容によって補償される可能性があります。

故意や重大な過失などによる損害

契約者や補償を受ける人が、わざと建物や家財を壊した場合は補償されません。

また、著しく注意を欠いた行為による損害なども、重大な過失として補償されない場合があります。

ただし、重大な過失に当たるかどうかは、事故の状況によって個別に判断されます。

火災保険は、基本的に偶然に発生した事故による損害に備える保険です。

火災保険で補償される主なリスク

火災保険で補償できる主な事故は、次のとおりです。

補償 主な事故 具体例
火災・落雷・破裂・爆発 火事、落雷、ガス爆発など コンセントから出火した、落雷で家電が壊れた
風災・雹災・雪災 台風、竜巻、雹、大雪など 台風で屋根が壊れた、雪でカーポートが倒れた
水災 洪水、内水氾濫、高潮、土砂崩れなど 床上浸水した、土砂が建物へ流れ込んだ
盗難 泥棒による盗難や侵入時の破損 窓を割られ、家財を盗まれた
水濡れ 給排水設備の事故や上階からの漏水 水道管の破裂で床や壁が水浸しになった
破損等 日常生活中の偶然な事故 家具を移動中に壁へ穴を開けた

基本的に押さえておきたい補償

ここからは、発生する確率は低くても、事故が起きたときの損害が大きくなる可能性がある、基本的に押さえておきたい補償を確認します。

主な補償は、次の2つです。

  • 火災・落雷・破裂・爆発
  • 風災・雹災・雪災

火災・落雷・破裂・爆発

火災保険の基本となる補償です。

たとえば、次のような事故が対象になります。

  • コンセントから出火した
  • 調理中の火が建物や家財へ燃え移った
  • 隣家から火が燃え移った
  • 落雷で家電が故障した
  • ガス爆発で窓や壁が壊れた

火災による損害は、建物の修理や建て替え、家財の買い直しなど、非常に大きな金額になる可能性があります。

そのため、火災・落雷・破裂・爆発は、基本的に押さえておきたい補償です。

風災・雹災・雪災

風災・雹災・雪災は、台風や竜巻、雹、大雪などによる損害に備える補償です。

風災

強風や台風、竜巻などによる損害が対象です。

  • 台風で屋根瓦が飛んだ
  • 強風で飛ばされた物がぶつかり、窓ガラスが割れた
  • 強風で雨どいが壊れた

雹災

雹による損害が対象です。

  • 雹で窓ガラスが割れた
  • 雹で屋根や外壁が傷ついた

雪災

大雪や雪崩、雪の重みなどによる損害が対象です。

  • 雪の重みでカーポートが倒れた
  • 大雪で屋根が壊れた
  • 雪崩で建物が損傷した

屋根や外壁など広い範囲が壊れると、修理費が高額になる可能性があります。

そのため、風災・雹災・雪災も、基本的に押さえておきたい補償です。

住まいや家計の状況によって検討する補償

次に、住んでいる地域や建物の種類、家族構成、家計の状況によって、付けるかどうかを検討する補償を確認します。

主な補償は、次のとおりです。

  • 水災
  • 水濡れ
  • 盗難
  • 破損等

これらは、火災や風災などとセットになっていて外せない商品もあれば、一つずつ補償を選べる商品もあります。

水災は、住んでいる地域の災害リスクを確認して判断します。

一方、水濡れ、盗難、破損等は、火災や大規模な風災と比べると、「発生する確率は低いが、起きたときの損害が非常に大きい」というリスクには必ずしも当てはまりません。

そのため、保険料や貯蓄の状況も踏まえて、保険で備える必要があるかを検討しましょう。

水災補償

水災補償は、次のような事故に備える補償です。

補償対象となる災害 事故例
洪水 河川が氾濫し、住宅や家財が浸水した
内水氾濫 大雨で下水や側溝の排水が追いつかず、住宅が浸水した
高潮 台風などによる高潮で、建物や家財が水に浸かった
土砂崩れ 大雨による土砂崩れで、建物や家財が損傷した

川から離れていても、下水道や排水設備で雨水を処理しきれず、道路や住宅が浸水する「内水氾濫」が起こることがあります。

また、山や崖の近くでは、土砂災害にも注意が必要です。

水災補償の支払い例

ソニー損保では、台風による洪水で床上浸水し、床板の交換や片づけが必要になった事例が紹介されています。

内容 金額
床板の交換・片づけ費用などの損害額 354,519円
支払われた保険金 389,971円(損害保険金354,519円と臨時費用保険金35,452円)

出典:ソニー損保

水災補償を付けるか判断するポイント

水災補償を付けるかどうかは、まずハザードマップで自宅周辺の水災リスクを確認して判断します。

主に確認したいのは、次のリスクです。

  • 洪水
  • 内水氾濫
  • 土砂災害
  • 高潮

水災リスクが高い地域では、水災補償の必要性も高くなります。

一方で、

  • 洪水や内水氾濫の想定区域に入っていない
  • 土砂災害警戒区域に入っていない
  • マンションの高層階に住んでいる

などの場合は、水災補償を付けない考え方もあります。

ただし、ハザードマップは一定の想定に基づいて作られているため、
ハザードマップに載っていないから絶対に安全とは限りません。

補償あり・なしの見積もりを取り、保険料差も確認して判断しましょう。

水災保険金には支払条件がある

水災補償を付けていても、少し浸水しただけで必ず保険金が支払われるわけではありません。

保険会社や商品によって、

  • 床上浸水
  • 一定の高さを超える浸水
  • 一定以上の損害割合

などの支払条件が設けられている場合があります。

契約前に、水災保険金が支払われる条件を確認しておきましょう。

水濡れ補償

水濡れ補償は、給排水設備の事故や、他の部屋からの漏水によって、建物や家財が濡れた場合に備える補償です。

たとえば、

  • 給水管が破裂して床や壁が水浸しになった
  • 上階から水が漏れ、家具や家電が濡れた
  • 排水管の事故で室内が水濡れした

といった事故があります。

なお、一般的に、水漏れによって傷んだ床・壁・家財は補償対象になりますが、漏水の原因となった給排水管そのものの修理費は対象外となります。

水濡れ補償の支払い例

ソニー損保では、戸建て住宅の2階にある給水管から水漏れが発生し、1階の天井にシミができた事例が紹介されています。

内容 金額
天井の復旧費用などの損害額 95,216円
免責金額 50,000円
支払われた保険金 49,738円(損害保険金45,216円と臨時費用保険金4,522円)

出典:ソニー損保

この事例では、修理費は10万円弱でした。

水濡れは比較的小さな修理で済む場合もありますが、漏水が広い範囲に及び、床や壁、家具、家電などが損害を受けると、修理・買い替え費用が高額になることもあります。

保険で備えるか、貯蓄で対応するかを検討しましょう。

盗難補償

盗難補償は、泥棒による盗難や、侵入の際に建物を壊された損害に備える補償です。

たとえば、

  • 泥棒に窓ガラスを割られた
  • 玄関の鍵を壊された
  • 家具や家電を盗まれた

といった事故があります。

盗難補償の支払い例

ソニー損保では、空き巣が住宅へ侵入した際に、窓ガラスと網戸を壊された事例が紹介されています。

内容 金額
窓ガラスと網戸の修理費用などの損害額 43,450円
支払われた保険金 47,795円(損害保険金43,450円と臨時費用保険金4,345円)

出典:ソニー損保

この事例では、免責金額は0円に設定されていました。

盗難は窓ガラスや鍵の修理だけで済む場合もありますが、高額な家財が複数盗まれた場合は、損害が大きくなることもあります。

所有している家財や支払限度額も確認して判断しましょう。

破損等補償

破損等補償は、日常生活中の偶然な事故によって、建物や家財が壊れた場合に備える補償です。

たとえば、

  • 家具を移動中に壁へ穴を開けた
  • 照明器具を落として壊した
  • 子どもが室内で窓ガラスを割った

などが対象になる場合があります。

破損等補償の支払い例

ソニー損保では、重いミシンを運んでいる途中に壁へぶつけ、穴を開けてしまった事例が紹介されています。

内容 金額
壁の修理費用などの損害額 77,550円
免責金額 50,000円
支払われた保険金 27,550円

出典:ソニー損保「運んでいたミシンが壁にぶつかり穴が開いた」

破損等を付けても、何でも補償されるわけではない

破損等補償を付けても、家の中にあるすべての物が補償されるわけではありません。

一般的に、次のようなものは対象外となる場合が多くあります。

  • スマートフォン
  • 眼鏡

一方で、次の家財は、保険会社や商品によって補償されるかどうかが異なります。

  • テレビ
  • パソコン

たとえば、テレビを誤って倒した場合や、パソコンに飲み物をこぼした場合を補償する商品もあれば、対象外としている商品もあります。

破損等は比較的小さな事故で済むこともありますが、高価な設備や建材、家具などを壊した場合は、修理費が高額になる可能性があります。

破損等補償を検討するときは、次の点を確認しましょう。

  • 補償したい物が対象になっているか
  • 支払限度額が設けられているか

最後に確認したい2つの注意点

火災保険を選ぶときは、補償の範囲だけでなく、次の2点も確認しておきましょう。

  • 高額な家財の支払限度額や申告の必要性
  • 事故が起きたときに自己負担する免責金額

高額な家財は支払限度額や申告を確認しよう

貴金属、宝石、美術品、骨董品なども、家財として補償される商品があります。

ただし、一般的な家具や家電とは取扱いが異なり、1個・1組ごとや、1事故あたりの支払限度額が設けられている場合があります。

高額な家財を持っている場合は、契約前に次の点を確認しましょう。

  • 家財の補償対象に含まれているか
  • 支払限度額はいくらか
  • 契約時の申告が必要か
  • 特約の追加や限度額の増額が必要か

高額な家財が補償対象に含まれていても、申告していなかったり、支払限度額が低かったりすると、実際の価値に見合う保険金を受け取れない可能性があります。

免責金額にも注意しよう

火災保険には、事故が起きたときに契約者が自己負担する「免責金額」が設定される場合があります。

免責金額とは、損害額のうち、自分で負担する金額のことです。

商品によっては、たとえば、

  • 5,000円
  • 3万円
  • 5万円
  • 10万円
  • 20万円

などから選べる場合があります。

一般的に、免責金額を高くすると保険料は安くなりますが、事故が起きたときの自己負担は大きくなります。

たとえば、損害額が20万円、免責金額が5万円の場合、基本的な保険金は次のとおりです。

20万円-5万円=15万円

損害額 免責金額 基本的な保険金
3万円 5万円 0円
7万円 5万円 2万円
20万円 5万円 15万円

免責金額が5万円の場合、修理費が5万円以下であれば、基本的に保険金は支払われません。

契約前には、次の点を確認しましょう。

  • どの補償に免責金額が設定されているか
  • 免責金額はいくらか
  • 免責金額を変えると保険料がどのくらい変わるか

まとめ|自宅のリスクと家計に合った補償を選ぼう

火災保険は、火事だけでなく、台風、水災、水濡れ、盗難、破損等など、幅広い事故に備えられます。

補償を選ぶときは、まずハザードマップで自宅周辺の災害リスクを確認しましょう。

そのうえで、

  • 火災や風災など、大きな損害につながりやすい補償
  • 水災など、地域のリスクを確認して判断する補償
  • 水濡れ、盗難、破損等など、保険料や貯蓄も踏まえて判断する補償

に分けて考えると分かりやすくなります。

また、補償の有無だけでなく、

  • どのような事故や物が補償されるのか
  • 免責金額はいくらか
  • 高額な家財の支払限度額や申告が必要か
  • 補償を付けた場合の保険料はいくらか

まで確認することが大切です。

保険会社から提示されたプランをそのまま選ぶのではなく、自宅で起こり得るリスクと、家計で負担できる金額を考えて、自分に合った補償を選びましょう。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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