保険の相談を受けていると、
「働けなくなったときの保険は必要ですか?」
「どれくらい備えればいいですか?」
という質問をよくいただきます。
しかし、就業不能保険が必要かどうか、
全員に共通する正解はありません。
なぜなら、
・家族構成
・収入
・貯蓄
・働き方
によって、必要な保障額が変わるからです。
・必要な保障額 = 必要なお金 − すでにある保障 − 貯蓄 + 気持ち
・保険は、確率が低く、起こったとき大きなコストがかかるリスクに使う
・保険より、予防・早期発見のほうが大切
・複雑な保険ではなく、シンプルな保険
保険の選び方「考え方編」をまだ見ていない人は、そちらを見てからのほうが理解しやすいと思います。
目次
働けなくなる確率とコスト
65歳未満の人口:約9000万人
障害年金受給者:約200万人
→ 約2%(50人に1人)
ただし、
・軽度の障害も含まれる
・完全に働けない状態はさらに低い
ため、確率は高くありません。
働けなくなると
・収入は減る、またはなくなる
・生活費はそのままかかる
・場合によっては介護費用がかかる
・住宅ローンの支払いが続く可能性がある

亡くなったときは支出が減る部分もありますが、
働けない場合は、収入が減るのに支出はあまり減らない
という状態になります。
そのため、場合によっては
死亡時よりも家計への影響が大きくなるケースもあります。
確率は高くないが、影響は大きいリスク
なので、保険の活用が選択肢です。

就業不能保険の判断の考え方
基本となる考え方はこちらです。
必要な保障額
= 必要なお金 − すでにある保障 − 貯蓄 + 気持ち

この式で考えると、不足している分だけ
保険で備えればよいということになります。
すでにある保障
まずは、日本の公的制度から整理してみましょう。
働けなくなったときの主な公的制度は次の通りです。
・傷病手当金
・障害年金
傷病手当金
病気やケガで働けなくなった場合、
最大1年6ヶ月
収入の約3分の2が支給されます。

例えば、
月収30万円の場合 → 約20万円が支給
ただし、
・フリーランス・個人事業主など国民健康保険に加入している方は対象外
・期間が限られている
という点に注意が必要です。
障害年金
長期間働けない状態になった場合、
障害の程度に応じて年金が支給されます。
・障害基礎年金(全員対象)
・障害厚生年金(会社員・公務員)

支給条件
障害年金は、所定の障害状態に該当したときに、障害の程度に応じた年金が支給される制度です。
次の条件を満たす必要があります。
①初診日に年金制度に加入、かつ、その日を証明できる
②保険料を一定以上滞納していない
③障害が一定以上
国民年金、厚生年金をしっかり支払っておくことが大切です。
【障害等級】
・1級:常時介護が必要
・2級:日常生活に大きな制限
・3級:就労に制限あり(障害厚生年金のみ)
・障害手当金(障害厚生年金のみ)

ちなみに、障害者手帳の等級とは別物です。

いくらもらえるか
障害年金の支給額は、
障害の等級や働き方によって異なります。
障害が重いほどたくさん支給されます。
障害基礎年金
1級 年間約103万円
2級 年間83万円
+ 子どもの人数に応じた加算
(子ども2人までは1人あたり約24万円、3人目以降は1人あたり約8万円)
障害厚生年金
これまでの収入に応じて支給額が決まります。
+ 生計を維持されている65歳未満の配偶者がいれば年約24万円加算
【ざっくりの目安】
これまので平均月収 × 0.005481 × 加入月数(最低300月)
×1.25→ 1級の年金額
×1 → 2級・3級の年金額
×2 → 障害手当金(一時金)
例)これまでの平均月収が約25万円の場合
これまでの平均月収 × 0.005481 × 加入月数(最低300月)=約41万円
×1.25 →1級の年金額:約51万円
×1 → 2級・3級の年金額:約41万円
×2 → 障害手当金(一時金):約82万円
※あくまで目安の計算です。
障害等級2級になった場合

出典:オリックス生命保険HP
※あくまで目安の金額です
実際の受給額は「ねんきん定期便」で確認する必要があります。
保険の検討をする際は、
年金定期便をもとに具体的な金額を確認しておきましょう。
働き方ごとの違い
働けなくなったときの保障は、
働けなくなった方の働き方によって内容が大きく変わります。
・会社員・公務員
→ 傷病手当金+障害厚生年金あり

・自営業
→ 傷病手当金なし、障害基礎年金のみ

働き方によって、
受け取れる金額は大きく変わります。
見落としがちなポイント
住宅ローン
「団信があるから安心」と思われがちですが、
団信は基本、死亡または高度障害が対象です。

出典:住宅金融支援機構HP
働けなくなった場合の保障もありますが、選択していないケースが多く
その場合、住宅ローンはそのまま残る可能性があります。
いくら備えればいいのか?
就業不能保険は
不足する生活費から考えるのが基本です。
とはいえ難しく感じる方は、
死亡保障をベースに考えると分かりやすいです。
具体例(磯山家の場合)
死亡保障:65歳まで毎月10万円
この金額をベースに、
就業不能になった場合の差を調整していきます。
短期の収入減については、
私は健康保険に加入しているため、
傷病手当金などの公的保障により
一定程度カバーされる前提で考えます。
そのため今回は
長期的に働き方に制限が出るケースを前提に設計します。
死亡と就業不能の違い
①年金の違い
遺族年金と障害年金の違いを確認しましょう。
私自身の場合、
遺族年金より障害年金(2級)の方が数万円多いですが、
計算が複雑になるため
ほぼ同程度で考えています。
②住宅ローン
・死亡 → 団信で完済
・就業不能 → 残る
▲5万円/月(住宅ローン)
③収入減と生活費
死亡保障は
「収入0・生活費0」で設計します。
一方、就業不能は
収入と生活費の“差”をどう想定するかがポイントです。
収入10万円・生活費10万円 → 上乗せなし
収入0円・生活費10万円 → 10万円上乗せ
私自身の場合、
・FP相談業務のため、
働き方に制限があっても
完全に収入ゼロになる可能性は低い
・どうしてもの場合は、家族の協力も想定
・働けなくなった後ではなく
そうならないための予防にお金を使いたい
こうした前提から
収入減と生活費については、
大きくズレない想定として、今回は考慮しない設計にしています。
これは、ご自身の職業や働き方によって変わります。
例えば、
・収入が完全に止まる可能性が高い方
・家族のサポートが難しい方
は、収入減も含めてしっかり見込む必要があります。
私の設計
私の場合、
死亡保障10万円+住宅ローン分5万円
合計15万円/月(65歳まで)
死亡保障をベースに、支出が増える部分だけ上乗せする
細かく計算しすぎるより
「大きくズレない設計」にすることが大切です。
まとめ
就業不能保険が必要かどうかは、
必要な保障額
= 必要なお金 − すでにある保障 − 貯蓄 + 気持ち
この考え方で整理できます。
まずは、
・公的制度(傷病手当金・障害年金)
・住宅ローンの団信
など、すでにある保障を確認することが大切です。
そのうえで、不足する分だけ
保険で備える。
これが、
無駄なく保険を活用する考え方です。
増やすより、整える。
就業不能保険も、
家計を整えるための一つの手段です。
正解を探すのではなく、
あなたの家庭に合った形を、一緒に整理していきましょう。


1級FP 磯山裕樹