介護保険は入るべき?FPが考える“本当に必要な備え”

「介護に備えるなら、介護保険に入ったほうがいいですか?」

このご相談はとても多く、
実際に介護や認知症への不安を感じている方は少なくありません。

たしかに介護は、
年齢とともに誰にでも起こりうる身近なリスクです。

さらに、
介護が長期化すると、
数百万円〜1,000万円以上かかるケースもあり、
経済的な負担も小さくありません。

だからこそ、
「保険で備えるべきなのか?」
と悩む方が多いのだと思います。

ただ、私はFPとして、
介護については
「保険で備える」より、
「資産で備える」ことが大切だと考えています。

もちろん、
介護保険そのものを否定しているわけではありません。

大切なのは、
・介護にどれくらいお金がかかるのか
・公的介護保険でどこまでカバーされるのか
・民間の介護保険のメリット・デメリット
を知ったうえで、
自分や家族に合った方法を選ぶことです。

今回は、介護費用の実態や、
私自身の考え方も含めて、
「本当に必要な備え」について整理していきます。

介護は「確率が高いリスク」

まず、介護についての状況を整理してみたいと思います。
要介護・要支援になる確率は、年齢とともに上がり、

75〜79歳:約8人に1人
80〜84歳:約4人に1人
85歳以上:約2人に1人

高齢になると誰にでも起こりうる確率が高いリスクです。

介護にかかる費用

まず押さえておきたいのが、日本の公的介護保険制度です。

要介護認定を受けると、介護サービスを
原則1割(所得により2割・3割)負担で利用できます

ただし注意点があります。
・利用できるのは「支給限度額の範囲内」
・限度額を超えた分は全額自己負担

【支給限度額(目安:月額)】

この範囲内であれば、1割負担でサービスが使えます。

【公的制度ではカバーできない費用】
・生活費
・施設の居住費・食費
・住宅改修
・介護ベッドなどの購入
・配食サービス・家事代行

これらは基本的に全額自己負担です。

介護費用の平均

・月々の出費の平均:8.3万円(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)
・一時的な費用:平均74万円(住宅改造や介護用ベッドの購入費など)
・介護の期間の平均:5年1カ月



出典:<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度>

これを計算すると、毎月8.3万円×5年1カ月+一時金74万円=約580万円となります。

ただし、ここで注意が必要です。
“平均”はあまり参考になりません。

なぜなら、介護費用は人によって大きく変わるからです。

・在宅介護か施設介護か
(在宅:約4.8万円/月、施設:約12.2万円/月)

・家族が介護できるか

・介護期間がどれくらい続くか
(10年、20年と長期化するケースもあります)

などによって、必要なお金は大きく変わります。


出典:<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度>

例えば、

・10年 → 約1,000万円
・20年 → 約2,000万円

になるケースもあります。

「平均額」だけで考えると、実際とのズレが大きくなる可能性があります。

私の考え

介護費用の備えは、保険ではなく資産で備える

理由は次の3つです。

①保険料が高くなりやすい

介護は高齢になると誰にでも起こりうる確率が高いリスクです。
つまり「多くの人に起こる=保険として成り立ちにくい」
そのため、保険料が高くなりやすい構造です。

リスクに備えるために保険に入るのではなく、
そもそも介護状態にならないようにするためにお金を使うことが重要だと考えています。

例えば
・健康維持(運動・食事)
・人とのつながり
こうした「予防」にお金を使う方が、結果的に介護リスクを下げ、
将来かかるお金を抑えられる可能性があります。

②将来の制度や現実とズレる可能性

・要介護2で給付
・認知症と診断されたら給付
など、民間の介護保険は契約時の条件が固定されます。

しかし、

・介護認定の基準が変わる
・医療や介護の形が変わる
・インフレで想定していた介護費用より足りない

医療技術の進歩、社会状況の変化、介護制度の見直しがあっても保険の条件は変わりません。

③元気な老後には使えない

保険は
条件に当てはまらないと使えません

つまり、
・介護にならなかった
・軽度で済んだ
→お金は使えません

一方で資産なら、例えば
1,000万円を年利5%で運用できれば、年間約50万円の収入になります。

このお金は
・介護にも使える
・旅行にも使える
・生活費にも使える
状況に応じて自由に使えるのが大きなメリットです。

介護のためにやらないといけない対策

ただし、何もしなくていいわけではない

私は、
「介護は保険より資産で備える」
と考えていますが、

何も対策しなくていい
とは思っていません。

特に大切だと思うのは、
次の2つです。

①元気なうちに家族で話し合う

介護を経験したご家族から、
「親の想いをもっと聞いておけばよかった」
という話をよく聞きます。

例えば、
・どこで介護を受けたいか
・延命治療を希望するか
・施設か在宅か
・誰に頼りたいか
・お金をどう使いたいか
などです。

もちろんお金の話も大切ですが、
それ以上に、 “本人の想い”を家族が知らない
ことへの後悔が多いと感じます。

一番大切なのは、
元気なうちに家族で話し合っておくことだと思います。

②「介護費用」より「認知症による資産凍結」への対策

認知症になると、
本人の判断能力がないと判断され、
銀行口座や証券口座が凍結される
ことがあります。

その場合、
家族でも自由にお金を引き出せず、
成年後見制度などが必要になり、
手続きや管理の負担が大きくなるケースがあります。

認知症による資産凍結への対策として、
・任意後見
・家族信託
などがあります。

一方で、
「まずは手軽に備えたい」という場合には、
指定代理請求ができる貯蓄保険
を活用する方法もあります。

一部の保険商品では、
契約者本人が認知症などで手続きできなくなった場合でも、
家族などの指定代理人が
解約手続きを行える仕組みがあります。

商品によっては、
指定代理人の口座で受け取り手続きできるものもあります。

そのため、
・介護費用
・施設費用
・生活費
などに使いやすいというメリットがあります。

まとめ

・介護は「確率が高く、コスト大のリスク」
・介護費用は平均約580万円だが、状況によって大きくブレる
・長期化すると1,000万円以上かかるケースもある

介護保険は
①保険料が高くなりやすい
②将来の制度や現実とズレる可能性がある
③元気な老後には使えない

もちろん、介護になればお金がでるので助かる人もいると思います。
保険で備えることのメリット・デメリットを考えて判断しましょう。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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