車の修理で保険を使う?使わない?自動車保険の等級制度をわかりやすく解説

自動車保険に入っていると、車をこすったり、ぶつけたりしたときに、
「せっかく保険に入っているから、保険を使えばいい」
と思う方もいるかもしれません。

たとえば、次のようなケースです。

  • 車を少しこすった
  • 駐車場で軽くぶつけた
  • 小さなキズを直した

そのたびに、
「保険料を払っているのだから、使わないともったいない」
と考えて、何度も保険を使っていたとします。

しかし、自動車保険は、使えば必ず得になるものではありません。

なぜそのようなことが起きるのか。

この記事では、次の内容をわかりやすく解説します。

  • 自動車保険の等級制度とは何か
  • 保険を使うと翌年以降の保険料がどう変わるのか
  • 修理費が少額の場合に、保険を使うべきか判断するポイント

小さな修理でも、保険を使うと保険料が高くなることがある

生命保険では、一度保険金を受け取ったからといって、翌年から保険料が上がることは基本的にありません。

しかし、自動車保険は違います。

自動車保険は、保険を使うことで等級が下がり、翌年以降の保険料に影響することがあります。
等級による保険料の差は、思っている以上に大きくなります。

たとえば、同じ補償内容で、割引・割増前の保険料が年間10万円だったとします。

20等級であれば、保険料は約3万7,000円まで下がる一方、1等級になると約20万8,000円まで上がるイメージです。

つまり、同じ補償内容でも、等級が違うだけで年間17万円以上の差が出ることがあります。

※上記は、等級による割引・割増の影響を分かりやすくするための一例です。実際の保険料は、車種、年齢、使用目的、補償内容、保険会社などによって異なります。

保険を使うこと自体が悪いわけではありません。

ただ、保険を使うと翌年以降の保険料が上がることがある、という仕組みを知らずに使ってしまうと、結果的に家計の負担が大きくなることがあります。

このように、自動車保険は「使ったら終わり」ではありません。

だからこそ、車の修理で保険を使うかどうかは、今回の修理費だけでなく、今後の保険料まで含めて考えることが大切です。

等級とは、保険料の割引ランクのこと

自動車保険には、「等級」という仕組みがあります。

等級とは、簡単にいうと、自動車保険の保険料を決める割引ランクのようなものです。


※東京海上日動火災保険 自動車保険パンフレットより

自動車保険には、もともとの保険料があります。
そこから、等級によって割引されたり、反対に割増になったりして、実際に支払う保険料が決まります。

項目 内容
基本となる保険料 車種、年齢、使用目的、補償内容などで決まる
等級 保険料の割引・割増を決めるランク
実際の保険料 基本となる保険料に、等級による割引・割増が反映される

等級は、1等級から20等級まであります。

一般的に、初めて自動車保険に加入する場合は6等級から始まります。

その後、1年間事故がなく、保険を使わなければ、翌年に1等級上がります。

状況 翌年の等級
初めて加入 6等級
1年間保険を使わなかった 7等級
さらに1年間保険を使わなかった 8等級
無事故が続く 9等級、10等級…と上がっていく

基本的には、等級が上がるほど保険料は安くなりやすくなります。

一方で、事故で保険を使うと、翌年以降の等級が下がり、保険料が高くなります。

保険を使うと、翌年以降の保険料が上がる

自動車保険は、使えばその場で終わりではありません。

事故で保険を使うと、その年の修理費は保険で支払われるかもしれません。

しかし、その後の保険料に影響します。
代表的なのが、3等級ダウン事故です。

たとえば、自分の不注意で車をぶつけて、車両保険を使って修理した場合は、翌年の等級が3等級下がります。

さらに、等級が下がるだけではありません。
一定期間は「事故があった人」として扱われるため、同じ等級でも、事故がなかった人より保険料が高くなることがあります。

専門的には「事故有係数適用期間」といいますが、まずは難しく考えなくて大丈夫です。

ここで大切なのは、
保険を使うと、今回の修理費だけでなく、翌年以降の保険料にも影響するということです。

修理費5万円の例

たとえば、車をこすってしまい、修理費が5万円かかったとします。

5万円の出費は、家計にとって決して小さくありません。

そのため、
「せっかく車両保険に入っているから、保険を使いたい」と思う方もいると思います。

しかし、修理費だけを見て判断するのは注意が必要です。

たとえば、15等級で、定価が10万円の保険料の場合、保険を使った場合と使わなかった場合の3年間の保険料の差をみてみましょう。

【保険を使わなかった場合の3年間の保険料】
1年目:事故無の16等級 割引率54% 保険料4万6000円
2年目:事故無の17等級 割引率55% 保険料4万5000円
3年目:事故無の18等級 割引率56% 保険料4万4000円
3年間の保険料の合計:13万5000円

【保険をつかった場合の3年間の保険料】
1年目:事故有の12等級 割引率22% 保険料7万8000円
2年目:事故有の13等級 割引率24% 保険料7万6000円
3年目:事故有の14等級 割引率25% 保険料7万5000円
3年間の保険料の合計:22万9000円

※東京海上日動火災保険 自動車保険パンフレットより

この場合、保険を使えば、今回の修理費5万円は保険でまかなえるかもしれません。

しかし、今後3年間で保険料が約9.4万円増えるのであれば、家計全体では負担が大きくなる可能性があります。

比較するもの 金額
今回の修理費 5万円
保険を使った場合に増える保険料の目安 約9.4万円
判断 保険を使わない方が負担が少ない可能性

※15等級・年間保険料87,460円のケースで試算。実際の保険料差は、等級・契約内容・事故内容・保険会社によって異なります。

つまり、
今の5万円だけを見るのではなく、今後数年間の保険料まで含めて考える必要があるということです。

5万円の出費は痛いです。

ただ、保険を使うことで、それ以上に将来の保険料負担が増える可能性があるなら、冷静に判断することが大切です。

事故の内容によって、等級への影響は変わる

ただし、自動車保険を使ったからといって、すべての事故で同じように等級が下がるわけではありません。

事故の内容によって、大きく次の3つに分かれます。

種類 ざっくりいうと
3等級ダウン事故 保険料への影響が大きい事故 相手や相手の物を壊した事故など
1等級ダウン事故 自分では避けにくい車の損害 飛び石、盗難、台風、洪水など
ノーカウント事故 保険を使っても等級に影響しない事故 弁護士費用特約、人身傷害、ロードサービスなど

細かい分類をすべて覚える必要はありません。

まずは、
事故の内容によって、等級への影響が変わる
と知っておけば大丈夫です。

保険を使う前に、必ず確認したい5つのこと

事故が起きたとき、すぐに「使う・使わない」を決めなくても大丈夫です。

まずは、保険会社や保険代理店に確認しましょう。

確認したいのは、次のような点です。

確認すること 見るポイント
修理費 今回いくらかかるか
免責金額 自己負担はいくらか
等級への影響 3等級ダウン、1等級ダウン、ノーカウントのどれか
保険料アップ 今後数年間で保険料がどれくらい上がるか
家計への影響 自分で払えるか、保険を使うべきか

特に見落としやすいのが、免責金額です。

免責金額とは、簡単にいうと、保険を使うときの自己負担額です。

たとえば、修理費が10万円で、免責金額が5万円の場合、保険から支払われるのは差し引き後の5万円になります。

項目 金額
修理費 10万円
免責金額 5万円
保険から支払われる金額 5万円

まとめ

ここまで読むと、
「結局、保険は使わない方がいいの?」
と思う方もいるかもしれません。

そうではありません。

自動車保険は、必要なときに使うためのものです。
修理費が大きい場合や、貯蓄では対応できない場合には、保険を使う意味があります。

大切なのは、保険を使うことが悪いのではなく、何も確認せずに使うことが問題だということです。

自動車保険の等級制度で、最低限知っておきたいのは次の点です。

  • 等級とは、自動車保険の保険料を決める割引ランクのようなもの
  • 保険を使わなければ、基本的に翌年の等級は上がる
  • 事故で保険を使うと、翌年以降の保険料が上がることがある
  • 事故の内容によって、3等級ダウン、1等級ダウン、ノーカウントに分かれる
  • 修理費が少額の場合、保険を使わない方が負担が少ない場合がある
  • 保険を使う前に、保険会社や代理店に確認することが大切

自動車保険は、入っているから必ず使うものではありません。

修理費だけを見るのではなく、保険を使うことで受け取れる金額と、今後増える保険料を比べて判断することが大切です。

特に小さな事故や少額の修理ほど、保険を使うことで本当に家計にとって得なのかを確認しましょう。

迷ったときは、修理費、免責金額、等級への影響、今後の保険料アップを保険会社や代理店に確認したうえで判断することをおすすめします。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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