自動車保険で外してはいけない4つの補償|対人・対物・弁護士費用・個人賠償を解説

自動車保険を見直すとき、

「どの補償をつければいいのか」
「どの補償は外してもいいのか」

で迷う方は多いと思います。

自動車保険には、さまざまな補償や特約があります。
ただし、すべての補償をつければよいわけではありません。

大切なのは、
貯蓄で対応できる損害なのか。
貯蓄では対応しにくい大きな損害なので、保険に頼るべき損害なのか。
この線引きです。

今回は、貯蓄では対応しにくい大きな損害に備えるため、基本的に外さない方がよい補償についてお伝えします。

結論として、基本的に外さない方がよい補償は次の4つです。

補償 備えるもの 考え方
対人賠償 相手のケガ・死亡への賠償 最優先。無制限で備える
対物賠償 相手の車・物への賠償 最優先。無制限で備える
弁護士費用特約 もらい事故などの相談・交渉費用 基本的に付ける
個人賠償責任保険 日常生活の高額賠償 自動車保険・火災保険など、どこかで1つ確保する

それぞれ、順番に見ていきましょう。

1. 対人賠償|相手のケガや死亡に備える補償

対人賠償とは、簡単にいうと、
事故で相手にケガをさせたり、死亡させたりした場合に備える補償です。

たとえば、次のような場合に備える補償です。

  • 歩行者にケガをさせてしまった
  • 自転車に乗っている人と接触した
  • 相手の車の運転者や同乗者にケガをさせた
  • 相手が亡くなった
  • 重い後遺障害が残った

ここで大切なのは、補償金額です。

対人賠償は、基本的に無制限で備えましょう。

理由は、自動車事故で相手が亡くなったり、重い後遺障害が残ったりした場合、損害賠償額が数千万円から数億円になることがあるからです。
実際に、過去の交通事故では、次のような高額な損害額が認定された事例があります。

認定損害額 内容 事故の概要
約5億2,853万円 死亡事故 41歳男性の死亡事故。高額所得者であったことなどから高額になった事例
約4億5,381万円 後遺障害 30歳男性に重い後遺障害が残り、将来の医療費や介護費用などが高額になった事例
約4億5,375万円 後遺障害 50歳男性に重い後遺障害が残り、休業損害や逸失利益などが高額になった事例

※上記は、損害保険料率算出機構などで紹介されている人身事故の高額賠償事例を参考にしています。実際の賠償額は、事故状況、過失割合、被害者の年齢・収入・後遺障害の程度などによって異なります。

このような金額は、一般的な家庭が貯蓄で対応できる金額ではありません。

つまり、対人賠償は、
貯蓄では対応しきれない大きな損害に備える補償です。

必ず確認し、無制限で入っておきましょう。

2. 対物賠償|相手の車や物を壊したときに備える補償

対物賠償とは、簡単にいうと、
事故で相手の車や物を壊してしまった場合に備える補償です。

「物」と聞くと、相手の車の修理費をイメージするかもしれません。
しかし、実際にはそれだけではありません。

たとえば、次のようなものが対象になることがあります。

  • 相手の車
  • 店舗
  • ガードレール
  • 信号機
  • 電柱
  • トラックの積荷
  • お店の休業損害

「お店の休業損害も対物賠償に含まれるの?」
と思う方もいるかもしれません。

たとえば、店舗に車が突っ込んで営業できなくなった場合、建物の修理費だけでなく、お店が営業できなかった間の損害が発生することがあります。

また、貨物車に損害を与えた場合、車両の損害だけでなく、その車両を修理・代替する間の営業補償や、積荷の損害が問題になることもあります。

実際に、物損事故でも次のように高額になった事例があります。

損害額 被害物 事故の概要
約2億6,000万円 積荷 トラックが追突し、積荷の洋服・毛皮などが焼失した事例
約1億3,450万円 パチンコ店 事故のはずみで車両がパチンコ店に飛び込んだ事例
約1億1,000万円 電車 踏切内で列車と接触し、車両修理費や復旧費用などが発生した事例

※物損事故でも、積荷、店舗、電車、道路設備などが関係すると、損害額が高額になることがあります。

つまり、対物賠償も、
貯蓄では対応しきれない大きな損害に備える補償です。

対物賠償も、基本的に無制限で入っておきましょう。

3. 弁護士費用特約|もらい事故や、相手との交渉が難しい事故に備える

弁護士費用特約とは、事故の相手に損害賠償を請求するとき、弁護士に相談・依頼する費用に備える特約です。

弁護士費用特約が役立つ場面は、主に次のようなケースです。

自分が悪くない事故で、保険会社が交渉できない場合

まず知っておきたいのは、
自分が悪くない事故ほど、自分の保険会社が相手と交渉できないことがあるという点です。

たとえば、次のような場合です。

  • 信号待ちで後ろから追突された
  • 駐車中にぶつけられた
  • 相手の保険会社の提示額に納得できない

こちらに過失がない、いわゆる「もらい事故」では、自分の保険会社が相手と示談交渉できないことがあります。

そのようなときに、弁護士に相談したり、交渉を依頼したりする費用に備えられるのが、弁護士費用特約です。

相手が支払わない・支払えない場合

次に、相手が任意保険に入っていない事故でも、弁護士費用特約が役立つことがあります。

こちらにも過失がある事故であれば、まずは自分の保険会社が相手本人と交渉する流れになることがあります。

問題は、その後です。

たとえば、次のような場合です。

  • 相手が支払いに応じない
  • 相手に支払うお金がない
  • 分割払いの約束をしたのに支払いが止まった
  • 訴訟を検討する必要がある
  • 判決後に給与差押えなどの回収手続きを検討する必要がある

このような場合、自分だけで対応するのは簡単ではありません。

そのようなときに、弁護士に相談・依頼する費用に備えられるのが、弁護士費用特約です。

日常生活の事故まで対象になるタイプもある

弁護士費用特約は、保険会社や契約内容によって補償範囲が異なります。

大きく分けると、次のような違いがあります。

  • 自動車事故のみ対象
  • 日常生活の事故も対象

たとえば、日常生活の事故も対象になるタイプであれば、自転車事故や歩行中の事故などで、相手に損害賠償請求をする場合にも使える可能性があります。

保険料は、保険会社や契約内容によって異なります。

一例として、ある保険会社では、次のようになっています。

タイプ 年間保険料の例
自動車事故のみ対象 約4,000円
日常生活の事故も対象 約6,000円

この例では、差額は年間2,000円ほどです。
保険料差が大きくなければ、日常生活の事故も対象になるタイプを優先して確認するとよいでしょう。

なお、弁護士費用特約は、一般的に次のような内容で補償されることが多いです。

  • 弁護士費用:1事故1名あたり300万円まで
  • 法律相談費用:10万円まで

弁護士費用特約は、
高額になりかねない弁護士への相談・依頼費用に備える特約です。

4. 個人賠償責任保険|車以外の日常生活の賠償に備える

個人賠償責任保険とは、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊してしまった場合に備える補償です。

自動車保険に特約として付けられることがありますが、注意点があります。

個人賠償責任保険は、自動車事故そのものに使う補償ではありません。

たとえば、次のような場合です。

  • 車を運転していて相手にケガをさせた
  • 車を運転していて相手の車を壊した
  • 車で店舗やガードレールを壊した

このような場合は、個人賠償責任保険ではなく、自動車保険の対人賠償・対物賠償で考えます。

個人賠償責任保険が役立つのは、車以外の日常生活の賠償です。

たとえば、次のような場合に役立ちます。

  • 自転車で歩行者にぶつかってケガをさせた
  • 子どもが友達にケガをさせた
  • 子どもがお店の商品を壊した
  • 飼い犬が他人を噛んだ
  • マンションで水漏れを起こして下の階に損害を与えた
  • ベランダから物を落として人にケガをさせた

実際に、個人賠償責任保険が関係する事故では、次のような高額な事例があります。

金額 内容 事故の概要
約9,521万円 自転車事故 男子小学生が歩行中の女性と正面衝突し、女性が意識の戻らない状態になった事例
約679万円 水漏れ事故 給水管の凍結破損により、複数階の居室や家財が水濡れした事例
約2,150万円 ペット事故 犬にかまれてケガをした事故で、飼い主に高額な損害賠償が命じられた事例

※自転車事故、水漏れ事故、ペット事故など、日常生活の事故でも高額な賠償につながることがあります。

そのため、個人賠償責任保険は必要性が高い補償です。

個人賠償責任保険は、保険料に対して補償が大きい保険です。

保険会社や契約内容によって異なりますが、年間2,000円〜3,000円程度で付けられる例もあります。

なお、個人賠償責任保険は、保険会社によって補償限度額などが異なります。

たとえば、代表的な自動車保険では、次のような違いがあります。

保険会社 タイプ 国内補償 海外補償
東京海上日動 代理店型 無制限 1億円
三井住友海上 代理店型 無制限 3億円
損保ジャパン 代理店型 無制限 1億円
ソニー損保 ダイレクト型 1回の事故につき3億円まで 補償なし

※上記は、代表的な自動車保険の個人賠償責任保険・個人賠償責任特約などについて整理したものです。実際の補償内容、補償限度額、海外事故の取扱いは、保険会社・商品・契約内容・改定時期によって異なる場合があります。加入前には、必ず最新のパンフレットや約款、保険会社・代理店への確認を行ってください。

大手損保では国内事故が無制限になっている商品もありますが、保険会社によっては1億円、3億円など上限が決まっている場合もあります。

自転車事故では9,000万円を超える賠償事例もあります。
選べるのであれば、国内無制限の補償を確保しておくと安心です。

必要な補償でも、重複には注意

ここまで、外さない方がよい4つの補償を見てきました。

その中でも、特に注意したいのが次の2つです。

  • 弁護士費用特約
  • 個人賠償責任保険

これらの補償は、自動車保険、火災保険、傷害保険、クレジットカードなどで重複していることがあります。
ただし、重複して入っているからといって、受け取れる保険金が単純に2倍になるわけではありません。

たとえば、700万円の損害賠償責任が発生した場合に、個人賠償責任保険に2つ入っていたとしても、それぞれから700万円ずつ、合計1,400万円を受け取れるわけではありません。

基本的には、実際に発生した損害額を上限に支払われます。
一方で、補償限度額がある契約の場合、損害額が1つの契約の限度額を超えると、複数の契約が関係することもあります。

ただし、国内無制限の個人賠償責任保険が1つ確保できていれば、同じ補償に何重にも入る必要性は低いと考えられます。
必要な補償は確保しつつ、重複している補償は整理しておきましょう。

まとめ 外してはいけない補償は、貯蓄では対応しにくい損害に備えるもの

自動車保険でまず確認したい補償は、次の4つです。

補償 備えるもの 考え方
対人賠償 相手のケガ・死亡への賠償 最優先。無制限で備える
対物賠償 相手の車・物への賠償 最優先。無制限で備える
弁護士費用特約 もらい事故などの相談・交渉費用 基本的に付ける
個人賠償責任保険 日常生活の高額賠償 自動車保険・火災保険など、どこかで1つ確保する

この4つに共通しているのは、
貯蓄では対応しにくい大きな損害につながる可能性があるということです。

保険料を下げることも大切ですが、家計では背負いきれない損害まで削ってしまわないように、まずは「外してはいけない補償」から確認していきましょう。

この記事が、
家計を整えるきっかけになれば嬉しいです。

 

1級FP 磯山裕樹

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