iDeCoは簡単に活用できるのですが、受け取り方を間違えると数百万レベルで税金が多くかかる可能性があることを知っていますか?
今回は、「iDeCoの受け取り方」を具体例を用いてお伝えします。
YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約10分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。
iDeCoの3つの受け取り方
iDeCoの受け取りは、60歳から75歳の間のお好きなときに受け取りを開始することができ、受け取り方は3つの選択肢があります。
①一時金(退職所得控除が利用できる)
②年金(公的年金等控除が利用できる)
③一時金と年金の併用(退職所得控除と公的年金等控除が利用できる)
ポイントは、受け取り時の税負担を0にする制度ではないことです。ここまでの受け取りであれば税金かかりませんよ、ここからは税金かかりますよというラインが設けられています。
出典:iDeCoパンフレット(厚生労働省)
一時金受け取り
一時金受け取りの場合の税金は、次の計算をして、出てきた所得に1/2をして税率をかけます。
退職所得ー【40万円×20年以内の掛金の積立年数(勤続年数)+70万円×20年を超える掛金の積立年数(勤続年数)】
具体例
たとえば、次の例で見てみましょう。
●退職所得:3060万円
●積立年数(勤続年数):38年
(40万円×20年以内の掛金の積立年数+70万円×20年を超える掛金の積立年数)を計算すると、40万円×20年+70万円×18年=2060万円となります。つまり、退職所得が2060万円以下であれば税金がかかりません。
退職所得が3060万円の場合、3060万円-2060万円=1000万円、これを×1/2して500万円になります。退職所得500万円に対して税金を計算します。
退職所得の所得税や住民税の金額は以下の区分によって算出されます。
所得税
所得税:5,000,000円×20%-427,500円=572,500円
復興特別所得税:572,500円×2.1%=12,022円
※国税庁のHPより
住民税
住民税は、一律10%です。
住民税:5,000,000円×10%=500,000円
合計
合計すると約108万円になります。つまり、3060万円の退職所得に対して税金が約108万円しかかからないので、手取りは2952万円になります。かなり有利な優遇税制です。
一時金受け取りの3つのポイント
一時金受け取りする場合のポイントは次の3点です。
①退職所得は退職に起因して受け取るお金を合算
退職所得はiDeCoだけでなく、退職金、小規模共済、中退共などの一時金も含まれます。つまり、iDeCo以外に退職に起因して受け取るお金が多い人は注意が必要です。
②退職控除の年数は掛金を拠出した年数と勤続年数の多い年数で計算
iDeCoに積み立てした年数と企業の勤続年数を別々で計算するのではなく、どちらか多いほうで計算します。
③基本、退職控除は一回だけ
退職控除は一回のみ利用しか利用できません。基本は1回ですが、iDeCoと退職金それぞれについて退職所得控除が使える例外が2つあります。
①企業から退職金受取後、20年以上経ってiDeCoの受け取り
(例)55歳で企業の退職金→75歳でiDeCo受け取り
※2022年4月から15年から20年に変更
②iDeCo受取後、5年以上経って企業から退職金の受け取り
(例)60歳でiDeCo→65歳以降で企業の退職金受け取り
※2026年1月から5年から10年に変更予定
退職金もiDeCoも多い人は、退職金の受け取り時期も考えてiDeCoを受け取ると、数百万手取りが変わってくる可能性があります。
分割受け取り
iDeCoを分割で受け取る場合は、公的年金等控除が利用できます。公的年金等控除とは、老後に受け取る年金に対してかかる税金を軽減するものです。「え!?老後の年金って税金取られるの?」と思った人、ある一定ラインを超えると税金がかかります。その一定ラインが公的年金控除です。
公的年金等とは、公的年金や分割受け取りにしたiDeCo、小規模共済、中退共などを合算した金額です。生命保険の年金などは公的年金等には含まれません。
公的年金等から公的年金等控除を引いて、その後、給料や事業などの他の所得と合算して、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除などの所得控除を引いて税金を計算していきます。一時金で受け取る退職所得との違いは、その他の所得と合算して計算がされることです。
公的年金等控除の額
公的年金等控除の額は、65歳未満か以上かで変わります。
65歳未満:年額60万円までの年金が非課税
65歳以上:年額110万円までの年金が非課税
※国税庁HPより
65歳以上から受給できる国民年金は満額で約80万円なので、iDeCoの受け取り額が年額30万円未満にすれば、非課税の範囲の110万円におさまります。自営業、フリーランス、専業主婦(夫)の人は使えるかもしれません。
しかし、厚生年金に加入している会社員や公務員の人は、年金の平均が約170万円なので、iDeCoを分割で受け取ると課税される人が多いと思います。
具体例
年齢:65歳以上
公的年金のみの収入
公的年金等の収入金額の合計額:350万円
65歳以上、公的年金等の金額は330万円~410万円の間ですので、公的年金等に係る雑所得の金額は次のようになります。
3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円
公的年金等に係る雑所得の金額は2,350,000円になり、他の所得もないため、ここから所得控除(基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除など)を引いた金額に対して税金を計算します。
分割受け取りの3つのポイント
分割受け取りする場合のポイントは次の3点です。
①公的年金や他の所得、所得控除によって納める税額が変わる
iDeCoを分割で受け取る場合の雑所得は、他の所得と合計して税額を計算します。そのため、公的年金や他の所得がどのくらいあるか、所得控除がどのくらいあるかによって納める税額が変わります。
②手数料がかかる
iDeCoの受け取りには、手数料がかかります。
●給付手数料:1回440円
●口座管理手数料:毎月66円
たとえば、20年間で毎月受け取りした場合、506円×12か月×20年=約12万になります。
一時金で受け取る場合は、口座管理手数料は不要、給付手数料も1回だけしかかかりません。
③給付中も非課税で運用を継続してくれる
税金や給付手数料のことを考えると必ずも有利とは言えない分割受け取りですが、給付中も運用を継続してくれるので、非課税口座で運用しながら取り崩しができることはメリットです。
まとめ
iDeCoの受け取り方は3つの選択肢があります。
①一時金(退職所得控除が利用できる)
②年金(公的年金等控除が利用できる)
③一時金と年金の併用(退職所得控除と公的年金等控除が利用できる)
退職所得控除の範囲内であれば、一時金で受け取る。超えた場合は、残りを一時金または分割で受け取るかを、勤務先の退職金や公的年金、その他の収入状況、いつそのお金を使うかなど、さまざまな要素を総合的に考えて決めていきましょう。
次回は、これまでお伝えしてきた「iDeCoのメリットとデメリット」を踏まえたうえで「iDeCoをやらないほうがいい人、やったほうがいい人」についてお伝えします↓↓↓
コメント
COMMENT