「火災保険に入っていれば、火事で家が焼けたときは保険金が支払われる」
多くの方は、このように考えているのではないでしょうか。
では、ここで質問です。
大きな地震が発生し、その揺れが原因で自宅から火災が起きました。
自宅の建物と家財は火災保険に入っていますが、地震保険には入っていません。
この場合、火災保険から保険金は支払われるでしょうか?
A.建物も家財も支払われる
B.火事なので、建物だけ支払われる
C.建物も家財も原則として支払われない

正解は、Cの「建物も家財も原則として支払われない」です。
火事によって家が焼けたとしても、その原因が地震であれば、通常の火災保険では原則として補償されません。
同じように、
- 地震による建物の倒壊
- 地震が原因で起きた火災
- 津波による建物や家財の流失
- 液状化による建物の傾き
- 噴火による建物や家財の損害
なども、通常の火災保険では原則として補償されません。
地震・噴火・津波による損害に備えるための保険が、地震保険です。
この記事では、
- 地震保険で補償されるもの
- 地震保険の保険金はいくら支払われるのか
- 「半分しか出ないから意味がない」は本当なのか
- 地震保険が必要か判断する3つのポイント
について、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
国の支援だけでは、住宅再建に十分とは限らない
大規模な地震で自宅が全壊した場合、国の「被災者生活再建支援制度」などから支援金を受け取れることがあります。
ただし、住宅を新たに建築・購入する場合でも、被災者生活再建支援金は原則として最大300万円です。
また、ソニー損保のウェブサイトでは、東日本大震災で住宅が全壊した世帯について、住宅の再建にかかった費用は平均約2,500万円だった一方、公的支援や義援金などは平均約400万円だったと紹介されています。
このように、国などから支援を受けられたとしても、住宅の建て直しや修理、仮住まいなどに必要なお金をすべて賄えるとは限りません。
地震保険で補償されるもの
地震保険では、次の3つを原因とする建物や家財の損害が補償されます。
- 地震
- 噴火
- 地震・噴火による津波
具体的には、次のような事故です。
| 原因 | 主な事故例 |
|---|---|
| 地震 | 建物の倒壊、建物の傾き、壁や柱の損傷 |
| 地震による火災 | 地震で発生した火災、地震によって延焼・拡大した火災 |
| 津波 | 建物や家財の流失、浸水による損害 |
| 液状化 | 建物の傾きや沈下 |
| 噴火 | 噴石や火山灰などによる損害 |
地震による火災であっても、火災保険ではなく、原則として地震保険の補償範囲になります。
地震保険の対象にならない家財もある
家財の地震保険に加入していても、家の中にあるすべてのものが補償されるわけではありません。
代表的な対象外は、次のとおりです。
-
- 自動車
- 現金
- 小切手や株券、商品券などの有価証券
- 預貯金証書
- 印紙や切手
- 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石、骨とう品
特に注意したいのが、自動車です。
地震や津波で自動車が壊れたり流されたりしても、家財の地震保険では補償されません。
また、自動車保険の一般的な車両保険でも、地震・噴火・津波による損害は通常の補償対象外です。
地震保険だけでは加入できない
地震保険は、地震保険だけで単独加入することはできません。
火災保険にセットして加入します。
たとえば、
- 建物の火災保険に、建物の地震保険を付ける
- 家財の火災保険に、家財の地震保険を付ける
という形です。

火災保険の契約内容に応じて、
- 建物と家財の両方に付ける
- 建物だけに付ける
- 家財だけに付ける
という選択もできます。
地震保険の保険金額は火災保険の30~50%
地震保険で設定できる保険金額は、火災保険金額の30~50%です。
たとえば、火災保険の保険金額が次の場合を考えてみましょう。
| 対象 | 火災保険金額 | 設定できる地震保険金額 |
|---|---|---|
| 建物 | 3,000万円 | 900万~1,500万円 |
| 家財 | 1,000万円 | 300万~500万円 |
地震保険金額には上限もあります。
| 対象 | 地震保険金額の上限 |
|---|---|
| 建物 | 5,000万円 |
| 家財 | 1,000万円 |
つまり、建物の火災保険金額を3,000万円にしていても、地震保険から3,000万円が支払われるわけではありません。
最大で設定しても、地震保険金額は1,500万円です。
地震保険は「家を建て直す保険」ではない
「地震保険は最大でも火災保険の50%しか出ないなら、意味がないのでは?」
このように感じる方もいると思います。
たしかに、地震保険だけで元の家と同じ住宅を建て直すことは難しいでしょう。
しかし、地震保険は、
家を完全に元通りにするための保険ではなく、
被災後の生活再建を支えるための保険として設計されています。

受け取った保険金の使い道は、原則として自由です。
たとえば、
- 仮住まいの家賃
- 引っ越し費用
- 当面の生活費
- 住宅ローンの返済
- 建物の修理費
- 家具や家電の買い替え
- 新しい住まいを確保するための資金
など、被災後の生活を立て直すために使えます。
地震保険は「家を完全に建て直せるか」だけでなく、地震後の生活を立て直すために必要な資金を確保できるかという視点で考えることが大切です。
上乗せ補償
地震保険の保険金額は、火災保険金額の最大50%です。保険会社や商品によっては、地震保険と上乗せ補償を合わせて、火災保険金額の100%程度まで備えられる場合があります。
地震上乗せ特約を付けると、地震に関する補償を手厚くできますが、保険料は上がります。
上昇幅は、保険会社、建物の所在地・構造、地震保険金額、上乗せ方法などによって異なるため、上乗せあり・なしの見積もりを比較して判断しましょう。
実際に支払われる保険金は4段階で決まる
地震保険では、修理にかかった費用がそのまま支払われるわけではありません。
保険会社が損害状況を確認し、次の4段階のどれに該当するかを判定します。
| 損害区分 | 地震保険金額に対する支払割合 |
|---|---|
| 全損 | 100% |
| 大半損 | 60% |
| 小半損 | 30% |
| 一部損 | 5% |
たとえば、地震保険金額が1,000万円の場合、支払われる金額は次のようになります。
| 損害区分 | 支払われる保険金 |
|---|---|
| 全損 | 1,000万円 |
| 大半損 | 600万円 |
| 小半損 | 300万円 |
| 一部損 | 50万円 |
大切なのは、修理費ではなく、損害区分によって保険金が決まるという点です。
たとえば、修理に300万円かかったとしても、損害区分が一部損であれば、地震保険金額の5%が支払われます。
建物の損害はどのように判定される?
建物は、主に、
- 基礎
- 柱
- 壁
- 屋根
などの主要構造部の損害割合によって判定されます。
| 損害区分 | 主要構造部の損害割合 |
|---|---|
| 全損 | 50%以上 |
| 大半損 | 40%以上50%未満 |
| 小半損 | 20%以上40%未満 |
| 一部損 | 3%以上20%未満 |
壁にひびが入ったり、配管や屋根が損傷したりして、実際の修理費が高額になったとしても、主要構造部の損害割合によっては、一部損や小半損にとどまる場合があります。
家財の損害も、家財全体で判定される
家財についても、壊れた家財の購入価格がそのまま支払われるわけではありません。
家財全体の時価額に対する損害割合によって判定されます。
| 損害区分 | 家財全体に対する損害割合 |
|---|---|
| 全損 | 80%以上 |
| 大半損 | 60%以上80%未満 |
| 小半損 | 30%以上60%未満 |
| 一部損 | 10%以上30%未満 |
たとえば、テレビ1台だけが壊れた場合、そのテレビの価格だけで損害区分が決まるわけではありません。
家の中にある家具、家電、衣類、食器など、家財全体に対してどの程度の損害が生じたかで判断されます。

東日本大震災では約7割が一部損だった
東日本大震災における地震保険金の支払件数を見ると、損害区分の割合は次のとおりでした。
| 損害区分 | 支払件数 | 支払件数の割合 |
|---|---|---|
| 全損 | 4万2,222件 | 4.9% |
| 半損 | 20万6,333件 | 24.2% |
| 一部損 | 60万4,643件 | 70.9% |
出典:財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」第2回資料、日本損害保険協会・日本地震再保険株式会社「安定的な地震保険制度の運営に向けて」(2012年5月25日)
※東日本大震災当時は、「全損・半損・一部損」の3区分でした。現在は「全損・大半損・小半損・一部損」の4区分です。
東日本大震災では、地震保険金が支払われた件数のうち、約7割が一部損でした。
これは、地震で被害を受けても、必ずしも全損や半損になるわけではないことを示しています。
地震保険料はどこで入っても同じ?
地震保険は、国と民間の保険会社が共同で運営する制度です。
そのため、
- 建物の所在地
- 建物の構造
- 地震保険金額
- 適用される割引
- 保険期間
などの条件が同じであれば、地震保険部分の保険料は、どの保険会社で加入しても同じです。
地震保険料は建物の構造と所在地で異なる
地震保険の基本保険料は、主に次の2つによって決まります。
- 建物の構造
- 建物がある都道府県
建物の構造は、次の2つに区分されます。
| 構造区分 | 主な建物 |
|---|---|
| イ構造 | 主に鉄骨造・コンクリート造の建物、耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火建物など |
| ロ構造 | イ構造に該当しない建物で、主に一般的な木造建物など |
一般的に、ロ構造はイ構造より地震保険料が高く設定されています。

また、地震保険料は都道府県によって異なります。
次の図は、財務省が公表している「地震保険の基本料率(2022年10月1日以降に始まる契約)」です。

※出典:財務省「地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)」
地震保険金額1,000万円、保険期間1年の場合、たとえば東京都では、イ構造が27,500円、ロ構造が41,100円です。一方、岡山県では、イ構造が7,300円、ロ構造が11,200円となっています。
地域ごとの地震リスクをもとに保険料が設定されているため、首都直下地震や南海トラフ地震などの影響が想定される地域では、保険料が高い傾向があります。
耐震性能などに応じた割引がある
地震保険には、建物の耐震性能や建築時期などに応じた割引があります。
| 割引 | 主な条件 | 割引率 |
|---|---|---|
| 免震建築物割引 | 免震建築物に該当 | 50% |
| 耐震等級割引 | 耐震等級1 | 10% |
| 耐震等級2 | 30% | |
| 耐震等級3 | 50% | |
| 耐震診断割引 | 耐震診断等で現行の耐震基準を満たす | 10% |
| 建築年割引 | 1981年6月1日以降に新築 | 10% |
割引は重複して使うものではなく、条件を満たすもののうち、いずれか1つが適用されます。

たとえば、東京都にあるイ構造の建物で、地震保険金額を1,000万円、保険期間を1年とした場合、割引適用前の基本保険料は27,500円です。
この建物が耐震等級3に該当する場合は、50%の耐震等級割引が適用されます。
27,500円×50%=13,750円
したがって、割引適用後の年間保険料は13,750円となります。
このように、同じ地域・構造・保険金額でも、建物の耐震性能によって実際の保険料は変わります。
地震保険が必要か考える3つのポイント
地震保険は、全員が絶対に加入しなければならない保険ではありません。
ただし、
地震保険は最大でも50%しか出ないから、加入しても意味がない
と判断するのも早いと思います。
地震保険が必要か迷ったときは、次の3点から考えましょう。
1.住宅ローンがどのくらい残っているか
地震で自宅が全壊して住めなくなっても、住宅ローンは原則として残ります。
たとえば、次のケースを考えてみましょう。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 建物の火災保険金額 | 3,000万円 |
| 建物の地震保険金額 | 1,500万円 |
| 住宅ローン残高 | 2,500万円 |
全損と認定された場合でも、地震保険から支払われるのは最大1,500万円です。
しかし、住宅ローンは2,500万円残っています。
大半損なら支払額は900万円、小半損なら450万円、一部損なら75万円です。
| 損害区分 | 地震保険金額1,500万円の場合 |
|---|---|
| 全損 | 1,500万円 |
| 大半損 | 900万円 |
| 小半損 | 450万円 |
| 一部損 | 75万円 |
そのため、
- 家には住めない
- 住宅ローンは残る
- 地震保険だけでは新しい家を建てられない
- 仮住まいの家賃も必要になる
という厳しい状態になる可能性があります。
2.家に住めなくなったら、どこに住むか
地震で自宅に住めなくなった場合、主な選択肢は次のとおりです。
- 家を修理して戻る
- 同じ場所に建て直す
- 賃貸住宅へ移る
- 中古住宅などを購入する
- 実家や親族宅に住む
実家や親族宅を頼る予定の場合も、
- 家族全員が住めるか
- 長期間住むことができるか
- 学校や仕事を続けられるか
- 自宅と同じ地域で、一緒に被災しないか
を確認しておく必要があります。
近くに実家があっても、同じ地震で実家も被災する可能性があります。
地震保険の必要性を考えるときは、
自宅に住めなくなった場合、家族はどこで生活するのか
を具体的に考えてみましょう。
3.地震後の費用を負担できる貯蓄があるか
地震後に必要になるのは、家の建て直し費用だけではありません。
たとえば、
- 仮住まいの家賃
- 引っ越し費用
- 家具や家電の買い替え
- 住宅ローンの返済
- 当面の生活費
などが必要になる可能性があります。
そのため、地震後の住居費や生活費を貯蓄で負担できるかを確認する必要があります。
住宅ローンが少なく、地震後に住める場所もあり、必要な費用を貯蓄で負担できる場合は、地震保険の必要性は低くなるかもしれません。
一方で、
- 住宅ローンの返済と新たな住居費が重なり、その二重負担に耐えられない
- 地震後に住める場所がない
- 修理費や家財の買い替え費用を貯蓄で負担できない
場合は、地震保険を検討してもよいかと思います。
FPとしての考え
私は、地震保険に加入するか迷う場合は、加入を検討した方がよいと考えています。
たしかに、地震保険だけで家を完全に建て直すことは難しく、損害区分によっては、受け取れる保険金が想定より少なくなる場合もあります。
しかし、地震後に必要になるのは、家の建築費だけではありません。
- 住宅ローンを返済する
- 仮住まいを確保する
- 家具や家電を買い直す
- 引っ越しをする
- 日常生活を再開する
ためには、まとまったお金が必要です。
地震保険は、家を完全に元通りにするための保険ではなく、
地震後の選択肢を残し、生活を立て直すための資金
として考えると、必要性を判断しやすくなります。
一方で、地震保険料は地域や建物構造によって高くなることがあります。
十分な貯蓄があり、被災後の住居も確保できる場合には、保険料を払わず自己資金で備える考え方もあります。
そのうえで、貯蓄だけでは生活再建が難しい場合には、私は地震保険への加入を優先して検討した方がよいと考えます。
まとめ
地震・噴火・津波による火災や倒壊などは、通常の火災保険では原則として補償されません。
これらの損害に備えるための保険が地震保険です。
ただし、地震保険は、家を完全に建て直す費用を補償する保険ではありません。
地震保険金額は火災保険金額の30~50%で、実際に支払われる金額は、全損・大半損・小半損・一部損の区分によって決まります。
地震保険が必要か迷ったときは、次の3点を確認しましょう。
- 住宅ローンがどのくらい残っているか
- 家に住めなくなったら、どこに住むか
- 地震後の住居費や生活費を負担できる貯蓄があるか
住宅ローンが多く残り、地震後に住める場所もなく、必要な費用を貯蓄で負担することが難しい場合は、地震保険を検討してよいかと思います。
「半分しか出ないから意味がない」と考えるのではなく、地震後の生活を立て直すために、保険でどこまで備えるのかを考えることが大切です。

1級FP 磯山裕樹