【1級FPが解説】住宅ローン破産しないための4つの対策

「年収の35%以下であれば大丈夫」
「家賃なみだから大丈夫」
「退職金やボーナスがあるから大丈夫」
「お金があるだけ頭金を多く入れたほうがいい」

このように考えて住宅ローンを組んでいる人は失敗する可能性が高いです。住宅ローンは一度契約してしまうと、引き返せません。最初に、自分にあった金額と返済期間を設定して住宅ローンを組むことがとても重要です。

今回は「住宅ローンをいくら借りるか、返済期間はどうするか」についてお伝えします。

YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約10分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。

住宅にかかるお金

住宅にかかるお金は大きく2つあります。

①住宅を買うときにかかるお金
②住宅を維持するのにかかるお金

①住宅を買うときにかかるお金

住宅を買うときにかかるお金は、土地、建物、諸費用があります。
土地と建物はイメージがつくと思いますが、諸費用が意外とかかることに注意が必要です。

諸費用は、設計料、水道・電気・ガスの引き込み費用、外溝費用、検査費用、融資事務手数料、つなぎ融資費用、火災保険、引越し費用、家電家具購入費用などです。マンションの場合は総額の約5%、戸建ての場合は総額の約10%程度かかるので、住宅を買うときの見積もりは諸費用込みで出してもらいましょう。

②住宅を維持するのにかかるお金

今の家賃と住宅ローンの返済が同じだから、支払いは大丈夫そうと思っていませんか?
家賃並みで見てはダメです。

住宅は購入した後も継続費用がかかります。

●一戸建て:固定資産税、都市計画税、修繕費、火災保険など
●マンション:管理費、修繕積立金、固定資産税、駐車代、共益費、火災保険など

家の性能により光熱費など長期でかかる費用は変わりますが、いずれの場合も月2~5万円程度必要です。継続費用も考えて家の購入を考えましょう。

余裕をもって返済するための4つのポイント

「いくら借りても大丈夫なのでしょうか?」

結論、銀行が貸してくれる金額で借りてはダメです。
余裕を持って返済できる金額で借りましょう。

年収の35%以下(返済負担率35%以下)であれば大丈夫と言われることがありますが、人生のどこにお金をかけるかの優先順位と家計により変わります。

年収1000万円と高くても、支出が900万円であれば、年収の35%の350万円まで住宅ローンを借りると返済できません。人生においての家より車や教育など、そのほかの優先順位が高いのであれば、家にお金をかけると優先順位が高いものにお金をかけることができません。

では、どのように借りると余裕をもって返済できるのでしょうか?

①ボーナスを利用しない

コロナで急にボーナスが出ない、または少なくなり、住宅ローンを支払うのが厳しくなった夫婦がいました。


ボーナスは会社の業績によって決まるので、必ずでるものではありません。ボーナスありきで住宅ローンを組んでしまうと返済ができなる可能性あります。ボーナスがでなくても返済できる金額にしましょう!

②退職金を当てにしない

60歳で退職金が2000万円出る予定なので、それもシミュレーションに入れれば、家にかけられる予算も上がります。しかし、数十年後の退職金は予定通りでるのでしょうか? 今勤めている企業は、存続しているのでしょうか?

会社が破綻している可能性や自身が転職している可能性もあります。退職金を当てにしすぎないようにしましょう。

③頭金をいれすぎない

できるだけ頭金を入れたほうが利息が少なくなるので有利になるのでしょうか?

頭金をたくさん入れると確かに利息の総額は低くなります。しかし、見るべきは金利の総額ではなく、キャッシュフローの安定と家計全体の最適化です。

キャッシュフローの安定

頭金をたくさん入れたが、教育費が足りなくなり、教育ローンを組まないといけなくなると本末転倒です。一般的には、住宅ローンの金利は、教育や自動車などのほかのローンの金利より優遇されているので、ほかのローンを組まないでいいようにキャッシュフローを確認して頭金の額は決めましょう。

実際、頭金はいつでも入れれます。返済途中で繰り上げ返済をすれば、利息の総額はいつでも減らすことができます。

家計全体の最適化

お金がある人でもあえて住宅ローンを低金利で借りて、余った手元資金で投資することは理論的に正解です。1%でローンを借りて、5%で運用できれば利益がでます。

ただし、手元にお金がないのにローンを活用するのはおすすめしません。なぜなら、家を買ってしばらくの間は「家の売却金額<住宅ローンの残債」になるからです。引き渡しを受けた後は中古物件になり、不動産の売却市場では2.3割下がります。家を売却した金額で住宅ローンを完済できない状態なので、何らかの理由で売却しなければいけなくなった場合困ります。

手元資金がない状況でローンを検討されている人は、身の丈以上の家になっている可能性があるので、余裕をもって返済できる金額を再度検討しましょう。

④返済期間は、定年時期にこだわらない

「だいたい35年で組んでいるからそれがいいのか?」
「定年までの期間で組んだほうがいいのか?」

返済期間についてのよくある質問です。

返済期間は、定年時期にこだわらず、毎月の返済額がむりのない金額になるように設定することをおすすめします。借金を早期に返済することも大切かもしれませんが、キャッシュフローと物価上昇から考えて、いつまでに返済するか検討しましょう。

借金がないことが安心?

皆さん、60歳のときにどちらの状態がいいですか?

Aさん:借金0、預金0
Bさん:借金1000万円、預金1000万円

Aさんは借金はないですが、預金もありません。預金がなければ、現金が急に必要になったときに新たな借金をしないといけません。

返済期間についても、キャッシュフローを見て検討しましょう。

物価上昇が続くなら長く借りたほうが得

【日本人の平均年収】
1970年:約100万円
2020年:約400万円

たとえば、1970年に1000万円の借金をすると、年収の10年分です。2020年の1000万円の借金は、年収の2.5年分です。
同じ1000万円の借金ですが、1970年は10年間働いて返済できる金額、一方、2020年では、2.5年働いて返済できる金額です。どちらのほうが借金を返すのが楽でしょうか?

2020年の1000万円ですよね。つまり、物価上昇が続くのであれば、借金の実質的な負担も軽減していきます。そのため、できるだけ長い期間借りておくことも選択肢の1つになります。

いくら、いつまで借りるかの決め方

ここまで話をした内容を踏まえて、いくら、いつまでの住宅ローンを借りるのかを考えていきましょう。
そのためには、将来のお金の流れを見える化する「キャッシュフロー表」の作成が便利です。

「キャッシュフロー表」は、ネットで無料のソフトを使うこともできるので、ご自身でできる人は作りましょう。ご自身で作れない人は、専門家に依頼して作ってもらいましょう。一般的な費用は、無料~10万円程度です。

無料でキャッシュフロー表を作ってくれる専門家もいますが、無料ということはほかの何かから収益を得ているということです。

【無料の専門家の収益例】
●提携している金融機関からの住宅ローンの紹介手数料
●住宅メーカーや工務店に家の見込み客を紹介して得る紹介手数料
●住宅ローンの相談と合わせて保険の見直しによる保険の手数料

お金の専門家の利益になる、手数料が高い選択肢に誘導される可能性があるので、何千万と言う大きな借金の相談をするときは、無料の相談はあまりおすすめできません。

きちんとした有料の専門家を見つけて、うまく活用する方法については、僕の著書のP70~79の『うまくいかない夫婦は無料に「つられる」、うまくいく夫婦は無料を「警戒する」』『うまくいかない夫婦は専門家の「いいなりになる」、うまくいく夫婦は専門家を「使いこなす」』に具体的に書いているので、よければみてみてください。

まとめ

今回は「住宅ローンをいくら借りるか、返済期間はどうするか」についてお伝えしました。

住宅にかかるお金は大きく2つあります。

①住宅を買うときにかかるお金
②住宅を維持するのにかかるお金

「家賃なみだから大丈夫」と考えて家を購入するのは危険です。余裕をもって返済するためのポイントは次の4つです。

①ボーナスを利用しない
②退職金を当てにしない
③頭金をいれすぎない
④返済期間は、定年時期にこだわらない

住宅ローンは一度契約してしまうと、引き返せません。最初に、自分にあった金額と返済期間を設定して住宅ローンを組みましょう。

次回は「元利均等支払いと元金均等支払い」についてお伝えします。

【1級FPが解説】「元利均等支払い」と「元金均等支払い」どっちがいい?

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1級FP技能士
磯山裕樹

立命館大学を卒業後、旅行会社に就職。連日の出張や残業による仕事中心の生活から家族の時間を作るため、自分で自由に時間を決められる働き方を求め外資系保険会社に転職。総額200万円を投資して徹底的にお金に関する学びを追求。その結果、富裕層ではなく、かつての私と同じ悩みを持つ子育て世代にこそ自身が体感したサービスが必要だと考え、磯山FP事務所を開業。“お金が理由で子供の選択肢を狭めない未来”を実現できる子育て世代を増やすべく日々奔走中。

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