「300万円の繰上げ返済に充てれるお金があります。繰上げ返済した方がよいでしょうか?本やYouTubeでは繰り上げ返済してはダメとよくありますが本当でしょうか?」とご質問いただきましたので、繰り上げ返済の考え方について解説していきます。
「繰り上げ返済をすると利息を払わなくてよくなるので、繰り上げ返済した方が絶対得だよね!」と思っている方もいるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。
繰り上げ返済をするかどうかは、単なる損得だけでなく、理論、気持ち、税金、お金の流れ、生命保険の5つのポイントを押さえて総合的に考えると、我が家は繰り上げ返済をすべきかどうか判断できると思います。
YOUTUBEで全てを語っておりますので、是非ご覧ください。
動画は約15分の長さがありますが、非常に濃い内容ですのであっという間に見ることができます。
動画の内容は文章でもここから下にまとめておりますので、こちらもご覧ください。
目次
繰上げ返済のシミュレーション
ご相談者は現在35歳で次の内容で住宅ローンを組まれています。
●期間:30歳のときに35年→現在35歳で残り30年
●変動金利0.5%
●35歳時点で残高が3000万円
このまま変動金利が0.5%続いた場合、月々の支払いは89,756円、これから30年で支払う利息の合計は231万円になります。
300万円繰り上げ返済をすると、残高が3000万円ではなく、2700万円に対して利息になるので、繰り上げ返済した300万円の利息が消え、総返済額を減らすことができます。
次に、どのくらい利息が減るメリットがあるのか、計算をしてみます。
繰り上げ返済の2つのタイプ
繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の2つのタイプがあります。
期間短縮型
毎月の返済額:そのまま
返済する期間:短くなる
期間短縮型で300万円繰り上げ返済をすると、3年2か月支払期間が短縮されます。
利息は、231万円から185万円になり、46万円利息の削減できます。
同じ金額を繰り上げ返済した場合、支払利息がより軽減されるのは、返済額軽減型より毎月の返済金額が変わらない期間短縮型になります。
支払い利息を軽減したい、完済時期を前倒ししたいという人は期間短縮型が向いています。
↑返済期間が2053年から2050年に変わっています。
返済額軽減型
毎月の返済額:少なくなる
返済する期間:そのまま
返済額軽減型で300万円繰り上げ返済をすると、毎月の支払いが89,756円から80,783円になり、8,973円軽減されます。
利息は、231万円から208万円になり、23万円利息の削減できます。
毎月の収支が赤字、今後教育費が多くかかり支出が多くなる予定、転職で少なくなる予定で返済額を下げておきたいなど、毎月の支払いを少ないしたい人は返済額軽減型が向いています。
繰り上げ返済の手数料
次に、繰り上げ返済する場合の手数料についてみてきましょう。
借りている金融機関やローンの種類により、1回の最低返済額や手数料が異なります。
1回の最低返済額は、1円からできる金融機関もありますが、100万円からとまとまったお金からしかできない金融機関もあります。
手数料は、無料の金融機関もあれば、数万円必要な金融機関もあります。
繰り上げ返済を検討される場合は、借りている金融機関に確認しましょう。
繰り上げ返済を検討するときの5つのポイント
「期間短縮型で繰り上げ返済をすると、総額46万円得するので、絶対得だよね!」と思っている方もいるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。
繰り上げ返済をするかどうかは、この利息削減の損得だけで判断すると失敗する可能性があります。
理論的、気持ちの面、税金、お金の流れ、生命保険の5つのポイントを押さえて総合的に考えることが大切です。
総合的に考えて、僕は繰り上げ返済をしないほうがいいと考えていますが、「こんな人は繰り上げ返済してもいいのでは」ということについても、5つのポイントごとに解説をしていますので、参考にしてみてください。
理論的に判断
まず、理論的な正解を見てきましょう。
今後0.5%の金利が住宅ローン完済まで続く場合、300万円を繰り上げ返済をした場合のメリットは、30年で約46万円の金利を削減でしたね。
300万円を繰り上げ返済せず、資産運用した場合、30年後の利益は、年利回り1%で104万円、4%で673万円、7%で1983万円になります。
ちなみに、年利回り7%は過去50年の全世界株式のインデックスの平均リターンくらいです。300万円を繰り上げ返済すると確実に46万円利息が削減できますが、年7%で運用できた場合は1983万円の利益になり、その差は1937万円になります。
理論的には、低金利で住宅ローンを借りて、余った現金を使って株式などでより多くのリターンを出すことが正解です。低い金利でお金を借りたままにしておき、繰り上げ返済をせず、そのお金を資産運用した方が合理的です。
もちろん、きちんと資産運用を勉強して、実践できる方のお話です。
理論的に判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:住宅ローンの金利以上で資産運用ができる人
繰り上げ返済してもいい人:お金を資産運用せず現金で保管している人
気持ちの面で判断
気持ちの面で考えていきましょう。
「サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット」という本では次のように書かれています。
金融学では、計算上で最適な投資戦略を数理的に追及する。だが、人が現実世界で求めているのは、そうでない。人々が求めているのは、夜に安心してぐっすり眠れる、合理的な投資戦略だ。
※出典:「サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット」より
この本の著者のモーガンさんは住宅を現金で購入しています。
モーガンさんは、ローンを組まずに家を所有する、著者にとって安心して毎日を過ごすことを優先して決断しました。その結果、毎月のローンの返済がないことが、長期で資産を最大化することよりも、経済的に自立していることを感じられたと書かれています。
住宅ローンを繰り上げ返済するか、繰り上げ返済をせず資産運用するのかどちらがよいか?
数学的な正解と自分の家庭の正解は一致しないかもしれません。
気持ちの面で判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:借金があっても毎日安心して過ごせる人
繰り上げ返済してもいい人:資産運用は性格的に受けつけない人、借金が減ることが毎日の安心につながる人
税金面から判断
税金面からみていきましょう。
10年または13年の住宅ローン控除の期間は繰り上げ返済をしない方がよいでしょう。
住宅ローン控除を活用すると、住宅ローンの残高の0.7%の税金が返ってきます。
例えば、金利0.5%で借りていて、住宅ローン控除が0.7%の場合、お金を借りている方が、0.2%得します。
金利1%で借りている場合では、トータル0.3%の金利を払っている計算になりますが、こんな低金利で借りられるローンは奨学金以外にはありません。
住宅ローン控除は年末の残高×0.7%なので、繰り上げ返済をすると、年末の残高も減るので、住宅ローン控除のメリットも少なくなります。
また、繰り上げ返済をして住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまった場合、住宅ローン控除が適用されなくなってしまいますので、注意が必要です。
10年または13年の住宅ローン控除の期間は繰り上げ返済はせず、住宅ローン控除がある期間にしっかり貯蓄するのがベストだと考えます。
ただし、住宅ローン控除の恩恵は、税金を納めていないと受けれません。
僕は会社員のときに家を買い、住宅ローンを組みましたが、その後、住宅ローン控除の期間中に独立をしました。独立した当初は、すぐに売り上げがたたず、そもそも税金を支払っていなかったので、住宅ローン控除は受けることができませんでした。
当初共働きを想定してペアローンで組んだが、子供の習い事の関係で、正社員からパートに変更になったなど、人生は変化して収入が減る場合もあると思います。
税金面から判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:住宅ローン控除を受けれる人
繰り上げ返済してもいい人:住宅ローン控除を受けれない人
住宅ローン控除について、詳しく知りたい方は下記にてお伝えしていますので、よければ参考にしてみてください↓↓↓
【1級FPが解説】住宅ローン控除(減税)の3つの注意点 ①将来シミュレーション次第ではメリットなし ②確定申告・年末調整が必須 ③繰り上げ返済はしない
お金の流れから判断
お金の流れから見ていきます。
住宅ローンの金利は他のローンの金利より優遇されているので、繰り上げ返済をしてお金が足りなくなり、他のローンを借りることになると本末転倒です。
よくあるのが、住宅ローンを頑張って繰り上げ返済した後に、金利約3%の自動車ローンを組んでいたり、教育資金でお金が足りなくなり、金利が約2%の教育ローンを借りていることがあります。
この場合、住宅ローンを繰り上げ返済せず、自動車ローンや教育ローンを組まないようにする方がよいのは一目瞭然です。
今後のお金の流れから判断しないと、繰り上げ返済をして返って損をする可能性があるので注意しましょう。
お金の流れから判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:他のローンを組む可能性がある人
繰り上げ返済してもいい人:他のローンを組まなくてもいい人
生命保険から判断
生命保険の観点から見ていきましょう。
住宅ローンは、団体信用生命保険がついており、万が一亡くなった場合など一定の条件になると住宅ローンがチャラになります。
繰り上げ返済した後すぐに、住宅ローンの団体信用生命保険の条件に該当した場合は、繰り上げ返済しなければよかったとなる可能性があります。
持病をもっていて新たな生命保険に入れない場合、生命保険として団体信用生命保険を考えることもできます。
ただ、民間の生命保険は、健康な人は安く加入することができるので、繰り上げ返済をして、保障が足りなくなるのであれば、民間保険で備えることができます。病気などで新たな生命保険に入ることができない、または割高な保険料になる人は、団体信用生命保険の方が有利になる可能性が高いですが、健康な人は、生命保険だけを理由に、繰り上げ返済を判断しなくてもいいと思います。
生命保険から判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:病気などで新たな生命保険に入ることができない、または割高な保険料になる人
繰り上げ返済してもいい人:健康で民間保険を安く加入できる人
団体信用生命保険について、詳しく知りたい方は下記にてお伝えしていますので、よければ参考にしてみてください↓↓↓
まとめ
繰り上げ返済をするかどうかの5つの判断ポイントと「繰り上げ返済しない方がいい人・してもいい人」についてお伝えしました。
理論的に判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:住宅ローンの金利以上で資産運用ができる人
繰り上げ返済してもいい人:お金を資産運用せず現金で保管している人
気持ちの面で判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:借金があっても毎日安心して過ごせる人
繰り上げ返済してもいい人:資産運用は性格的に受けつけない人、借金が減ることが毎日の安心につながる人
税金面から判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:住宅ローン控除を受けれる人
繰り上げ返済してもいい人:住宅ローン控除を受けれない人
お金の流れから判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:他のローンを組む可能性がある人
繰り上げ返済してもいい人:他のローンを組まなくてもいい人
生命保険から判断すると、
繰り上げ返済しない方がいい人:病気などで新たな生命保険に入ることができない、または割高な保険料になる人
繰り上げ返済してもいい人:健康で民間保険を安く加入できる人
繰り上げ返済をするかどうかは、単なる損得だけでなく、理論的、気持ちの面、税金、お金の流れ、生命保険の5つのポイントを押さえて総合的に考えると我が家は繰り上げ返済をすべきかどうか判断できると思います。
是非実践してみてください。
住宅ローンの記事はシリーズ化しています。順番に読み進んでいただくと、「住宅ローンをどうくんだらいいのか?どう見直したらいいか?」と悩んでいる方が、ご自身にとって最適な住宅ローンを判断できるようになります↓↓↓
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